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2005年12月 アーカイブ

2005年12月22日

 精 進 料 理 。 この4つの漢字を見て皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? 肉や魚を使わない料理のことだろ。 そんなことぐらい知っとるわい。 と思ったそこのあなた!!
 正解です。 が…しかし、不十分です。 肉や魚を使わないだけでしたら、 「 野菜料理 」 と呼べば良いはずです。 では何故、わざわざ野菜料理に 「 精進 」 という言葉が使われているのでしょうか? 

 精進には 「 ①仏道修行に励むこと  ②心身を浄め、行いを慎むこと  ③肉食せず、菜食すること  ④一所懸命に努力すること ( 『 広辞苑 』より ) 」 という意味があります。 そう言えば 『 ミスター味っ子 』 という料理漫画には 「 精進せいよ!」 と決まり文句を言う登場人物 ・ 味皇がいましたが、これは明らかに ④ の意味で使われています。 ① の意味で言っていたら仏教漫画になってしまいますね。
 まぁ、それはそれで面白そうですが…。

 さて、話を戻しましょう。 もともと 「 精進 」 は仏教用語で、① の意味でしたが、転化して②、③、④ の意味でも使われるようになりました。 ②、③、④ は ① の内容説明みたいなものですから、矛盾は生じません。 となれば、もう皆さんもお察しの通り、精進料理とは仏道修行に励む為の料理ということになります。 野菜料理と明確に異なる点はズバリここなのです。

 では、仏道修行とは何か? 私にとっては 「 飽くなき自己の根拠を問う旅 」 としての仏道ですから、精進料理とはその旅をする心身の為の食事と位置付けられます。 さらに言えば、何を食べるかではなく、どのように頂くかということの方が私には重要なのです。 同じ野菜を頂くにしても、どのような腹づもりで食べるのか? また、そのように食べてもらうには、どのように作れば良いのか? そもそも私と食べ物との関係とは何か?

 このような視点に基づく食に関しての行動が、精進料理を作ることであり、食べるということなのです。

 とりあえず今回はこの辺で。

 それでは、また。

2005年12月 8日

 先日、精進料理について話をしていましたら、 「 肉がダメなのは知ってたけど、魚もダメなんですか ! ! 」 と驚かれたので、私も違う意味で驚きました。 肉よりも魚の方がヘルシーな感じがするからそう思ったのかも知れませんが、魚介類を使うことは一切出来ません。 ということは、普段の食事に利用するカツオだしの使用もタブーです。 ですから、精進料理で使うだしは、使い慣れたカツオではなく乾燥昆布や干し椎茸、大豆などの植物性の食材のみから取ります。
 ここでさらに、皆さんにとって厄介なお知らせがあります。 このように野菜を中心とした精進料理であっても、野菜によっては使ってはならない食材がいくつかあるのです。

sample03.jpg 禅宗のお寺の入り口には、 「 不許葷酒入山門 ( 葷酒山門より入るを許さず ) 」や、 「 禁葷酒 ( 葷酒を禁ず ) 」 といった文字が彫られた石柱が立っていることがあります。 葷 ( くん ) や酒は寺の中には入れてはいかん! ! ということなのですが、この 「 葷 」 こそ、精進料理で使っても食べてもいけない野菜のことなのです。
 五葷とも、五辛 ( ごしん ) とも呼ばれる5種類の食べてはならない野菜。 実は、この5種類の組み合わせは 国 ・ 時代 ・ 宗教 ・ 思想 によって異なりますが、大まかに言うと 「 にんにく 」 「 ねぎ 」 「 玉ねぎ 」 「 にら 」 「 らっきょう 」 の5つです。

 その他に 「 山椒 」 や 「 生姜 」 が含まれる場合もありますが、この2つは現在の永平寺でも使用されていますので、私も使用することにします。

 それでは何故、これらの5種類の野菜は食してはいけないのでしょうか?

 その最も大きな理由とは、性欲を刺激するせいだと言われています。 欲望を捨て去るのが仏道の根本なので、好んで性欲を刺激する必要がないため、わざわざ食しません。 また、これら五葷は極めて臭気が強く、修行の妨げになるからというのも一因のようです。

 そして、先程御紹介しました禅風をよく表現している 「 不許葷酒入山門 」 の語。 実を言うとこれには、もう1つの読み方があるのです。

 「 許されざる葷酒、山門より入る。」

 本当はダメだけど、葷や酒がお寺の中に入っていくよ。 という詭弁ですが、笑い話で使われます。 つまり、こんな解釈が出るほど五葷や酒は魅力的なモノなのでしょう。 でも安心してください。 五葷や肉、魚を使わなくても丁寧な仕込みや工夫次第で十分に美味しい料理を作ることは可能です。
 ただ、料理酒は現代の精進料理で使用されます。 まぁ、直接呑むわけではないですからね。

生活そのものが修行であるとする曹洞宗の大本山永平寺では、修行僧が料理を作ります。料理を作ることも、食べることも、坐禅をすることと同様に仏道修行そのものなのです。 その永平寺で本場の精進料理と出会った吉村昇洋が、分かりやすく且ついい感じに、精進料理とその背景を紹介していきます。 見やすく分かりやすいレシピ付き!
吉村昇洋
広島の曹洞宗寺院副住職。 1977年生まれ。駒沢大学大学院仏教学専攻修士課程修了後、学問の世界から飛び出して実践の場を求め、曹洞宗大本山永平寺にて2年2ヶ月間の修行生活を送り、現在に至る。