コラム(18) 調菜人としての活動 (その4)
2011年06月15日
今回も、調菜人(ちょうさいにん)、つまり精進料理を作る僧侶としての活動を通して、私が感じたことを綴っていこうと思います。
2011年6月9日(木)に発売の『栄養と料理』7月号に、私のインタビュー記事が掲載されました。 彼岸寺上でも告知をして頂いたので、すでに目を通された方もおられると思います。
ここで、同じ内容を記述してもあまり面白くないと思いますので、インタビューの舞台裏を少し紹介していくことにします。
『栄養と料理』編集部からインタビュー依頼のお話を頂いたのは、4月中旬のこと。 依頼内容は、「精進料理というと、中高年以下のお寺と縁のない方には "物足りない" "ストイックすぎる" というイメージが強い。そこで、若くしてインターネットを通じ "精進料理" に関して情報発信している私に、"精進料理を作る・食べるということの現代的な意味" についてお話をして欲しい」 とのことでした。
「さて、困ったぞ・・・」と。
要は、精進料理の一般的な固いイメージを払拭し、しかも現代に通用する食行動にまつわる仏教思想を語ってくれってな内容なわけです。 さらに当日、調理風景の写真も撮らせて欲しいとのことでしたので、編集者さんとカメラマンさんに実際に精進料理を食べて頂きながら、普段から考えていることを含め、その場で感じたことを中心に語っていくことにしました。
そこで、まず私が取りかかったのが、その日の献立決め。 「思い出の一品を加えてください」という要望があったので、当ブログでもご紹介した永平寺の人気メニュー「高野豆腐の揚げ煮」を中心に、個人的に衝撃を受けた椎茸の煮物など、オーソドックスな精進料理をはじめ、旬の野菜を使うこと、また東京から遙々広島までお越し頂くことなどを加味して、以下の通り一汁二菜で献立を作成しました。
<当日昼の献立>
【香飯】新生姜ご飯
【香汁】じゅんさいと生紅葉麩のお清まし
【香菜】薄切りたくあん
【別菜】炊き合わせ(高野豆腐の揚げ煮、花人参、椎茸二種、人参菜の炒め蒸し、アスパラガス炒め)
【別菜】豆乳プリン
"予定は未定であり決定ではない" なんて言葉がありますが、当初1〜2時間程度のインタビューだと聞いていたところ、終わってみれば4時間が経過。 かなり盛りだくさんで話はしたものの、紙幅の関係上、使われるのはごく一部のはずで、まとめるのは大変だろうなと気を揉んでおりました。 と言うのも、私の僧侶として歩み出した人生についてといった、当初の依頼内容からは関係が全くないとは言わないまでも、傍論に近いことにかなりの時間を割いてしまっていたからです。
それがどのようにまとまったかは、実際に本誌をお手にとって確認して頂くとして、私個人としての依頼内容に対する "答え" を述べておきたいと思います。 まず、"現代に通用する食行動にまつわる仏教思想" については、永平寺での食事作法を簡易的に体験して頂くことで、食べ物、ひいてはあらゆる対象と、どのように向き合っていけば良いかということについて述べました。 これは、誌面にも盛り込まれていますし、これまで『別の誌面』でも述べてきておりますので、ここでは詳しく取り上げないこととします。
次に、"精進料理の一般的な固いイメージを払拭する" ことに関しては、実は献立の中にメッセージを込めておりました。 精進料理というと、日本仏教の歴史と重なって、一般的に "和食" をイメージすると思います。 確かに、あながち間違いとも言えませんが、洋食文化が入ってくる以前ならいざ知らず、現代では食の多様化が見られ、日本仏教自体の国際化も進んでいることを考えれば、「精進料理 = 和食」に固執することは、逆に仏教的ではないとも言えます。
そういう思いから、私は【禅僧の台所】で、オーソドックスな和食に限らず、洋食の手法も取り入れて、レシピを制作してきました。 その象徴として、今回の献立にあえて "豆乳プリン" を入れ、この記事で初めて精進料理に触れる読者の方や、ストイックで固いというイメージを持たれている方に「これって、精進料理と言って良いの?」と、驚いて欲しかったわけです。 誌面で「あえて献立に入れた豆乳プリン」と、脈絡なく記述されているのは、そういった背景があったのです。
私が大切にしているのは、何事も既成概念にとらわれることなく、基本は押さえた上で、どれだけ自由な発想をして生きていけるかということです。 これは無論、仏教にも通ずる考え方なのですが、今回のインタビューをきっかけに、再確認する良い機会となりました。
まだ、読まれていない方は、是非ご一読頂きますよう、お誘い申し上げます。

吉村昇洋 (よしむら しょうよう) >>プロフィールを読む 1977年3月生まれ。広島市内の曹洞宗寺院副住職。
駒沢大学大学院にて仏教学修士を取得後、仏教を学問する世界から飛び出して実践の場を求め、曹洞宗大本山永平寺にて2年2ヶ月間の修行生活を送る。その後、広島国際大学大学院にて臨床心理修士を取得し、現在臨床心理士としても活動している。 彼岸寺では、【禅僧の台所 〜オトナの精進料理〜】を展開する。 現在、『栄養と料理』『禅の友』各誌にてエッセイやレシピを連載中。









