お寺で日常のスイッチをOFF! 『エコトリップ京都』お寺取材日記

お寺で日常のスイッチをOFF! 『エコトリップ京都』お寺取材日記


最近は、Webに掲載する長めのインタビュー記事のお仕事が多くなり、めっきり雑誌のお仕事から離れているのですが、年に何度か「お寺の取材といえば...あの人がいた!」という感じでお声がけをいただきます。


今年は京阪神エルマガジン社さんの「エコトリップ京都」(9月10日発売)の『知る・学ぶ』の特集にてお寺のページを担当。「(お金よりも)智恵を使って京都を楽しんでほしい」という編集者さんに深く共感しつつ、「こんな風にお寺と出会ってほしい」という思いをこめてお仕事をさせていただきました。


そういえば、お袈裟コレクション

ecotrip6.jpg そういえば、昨夏も同じく京阪神エルマガジン社さんで「関西のお寺2」のお仕事をしました。いただいたお題はなんと「お袈裟コレクション」。「八宗派のお坊さんのお袈裟姿を撮影する」というミッションは想像以上に難しく、友人・知人のお坊さんと「お寺の未来」に助けていただいて何とかコンプリート。(その節は、みなさま本当にありがとうございました!)

お坊さんがつけておられるお袈裟は、シンプルなものから豪華絢爛なものまでさまざまですが、いずれも非常に清らかで美しいもの。でも、じろじろ見るのは失礼ですし、「ちゃんと見る」機会はなかなかありません。


そこで、お袈裟を好きなだけ眺められるグラビア特集と相成ったわけですが、これは一般の方のみならず、お坊さんたちからもご好評をいただきました。「他宗のお袈裟をはじめてじっくり見ました」と言うお坊さんの声も興味深かったです。


ちなみに、紅一点のお坊さんは真宗大谷派のお寺の方。モデルとしても活躍されているそうですよ。


取材時には、お坊さんたちにお袈裟についてたくさん教えていただきました。お袈裟の由来はお釈迦さまにまでさかのぼること。浄土真宗のお袈裟が豪華なのは「お坊さんは極楽浄土の一部となっておつとめする」という考え方で...などなど...。


かつて、フランスの五月革命で学生たちは「敷石をめくれば砂浜がある」というスローガンを掲げたそうです。この取材のとき、私の頭の中にも似たようなスローガンが回っておりました。


「お袈裟をめくればお浄土がある」。



お寺という非日常を体験してほしい

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さて、ようやく本題です。


今回の「エコトリップ京都」では、「非日観光的お寺めぐりのすすめ」と題した4ページを担当。森のなかにある法然院さんと、にぎやかな町なかにある誓願寺さんという、対極的なふたつのお寺にフィーチャーしました。


共通して設定したのは「日常のスイッチをOFF」というキーワード。


法然院さんは、哲学の道から山側へ少しあがったところにある静かなお寺。境内に一歩入るだけで、すーっと気持ちがよくなります。こちらは、お訪ねするだけで「日常のスイッチがOFF」されるお寺と言ってもよいでしょう。


ご住職の梶田真章さんは、時間のゆるす限り毎日でも法話をしていらっしゃいます。お寺の本質は、やはり仏教を伝える空間。その仏教を紐解いてくれるお坊さんに出会っていただきたいという思いからご紹介しました。


誓願寺さんは、京都でいちばんの繁華街・新京極のお寺。というか、新京極という繁華街は、寺町のお寺の境内を京都府が接収して作られた町なのでした。三条通の新京極は、かつての誓願寺の黒門。「ここからぜーんぶお寺のなか!」と思うと、街の見え方がガラリと転換します。


ecotrip5.jpg中川学さんのイラストで作られた顔ハメ看板からも阿弥陀さまのお姿が拝めます。

現在の、誓願寺さんの山門は新京極通のどまんなか。門前から本堂を仰ぐと、大きな阿弥陀さんとバッチリ目が合います。本堂にあがって阿弥陀さんに手を合わせると、さっきまでセカセカしていた自分が嘘のよう。ゆったりとした気持ちに包まれるのです。


ためしに、境内からまちの風景を見てください。不思議なことに、お寺の門越しのまちはまるでスローモーション。じたばたしたところで、さほどのスピードは出せていなかったのかも...という気さえしてきます。


日常のスイッチを切ることができれば、いつもは見過ごしてしまっている大切なことに気づくかもしれない。お地蔵さんや阿弥陀さんに手を合わせて、すっと背筋を伸ばしているだけで、心が静かになるかもしれない。お寺って、そういうご縁をつくる装置としてもはたらいているのではないでしょうか。


一時的であれ、ちょっとだけであれ、その気持ちの変化が仏縁になるかも?ぜひ、気軽にいろんなお寺にお参りしてください。


ちなみに「エコトリップ京都」は、お寺のほかに「神社」「建築さんぽ」「天文ツアー」「民藝の精神」、そして「暁天講座」などなど、さまざまな『知る・学ぶ』が紹介されています。もちろん、おいしいもの、かわいいものを買えるお店ガイドなどもたっぷり。秋の京都散策のおともににどうぞ!



こぼれ話:お盆明けの「お供物入れ」

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記事では、まちなかで気軽にお参りさせていただけるお寺もいくつか紹介。中川学さんの瑞泉寺さんにも取材に伺いました。


瑞泉寺は、謀反の汚名を着せられて亡くなった豊臣秀次公とその御一族39人の菩提を弔うお寺。瑞泉寺の名誉住職さん(前住職)は「亡くなった姫君や奥方さまのために」と、四季を通じて何かのお花が咲くようにと心配りをされています。


400年も前に起きた悲しい事件を記憶しつづけ、今も誰かが死者を慰めようとしている。いつも、境内に咲くお花を見るたびに、時を越えて受け継がれてゆく人の心の営みに畏敬の念を感じてしまいます。


取材に伺ったのはちょうどお盆明けの朝だったのですが、門前にちょっと見かけないダンボール箱が...。


「お供物入れ」?


「お供物以外は入れないでください。線香、ろうそく等火種になるものは入れないでください」
「このダンボールは、お供物の回収とは別に回収。リサイクルします。なお、8月17日中には回収しますが、回収が遅くなる場合があります。京都市」


などと書かれています。


「これは、なんですか?」と聞くと、中川さんが「あー、これねえ」と説明してくれました。


なんでも、かつてお供物はお盆明けには川に流す習わしだったのだけど、時代が変わって「河川汚染になる」とお供物は行政が回収するようになったそう。しかも、近年はその回収箱もリサイクル式に進化しているとのことでした。


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まったく取材の本筋とは関係のないことを質問しても気さくに応えてくれる中川さん。実は、有名なイラストレーターさんでもあります。


今は毎日新聞夕刊に連載中の小説「津軽双花」(葉室鱗さん)の挿絵も手がけておられるのでぜひご覧下さい。ちなみに、京都のまちでは中川さんの作品をあちこちで見ることができます。新京極商店街のアーケード看板、リニューアルした京都BALの広告イラストも中川さんのイラストですよ。


京都の街をあるくときは、ぜひ中川さんの作品も探してください。



中川学さんオフィシャルサイト「kobouzu.net」(泉鏡花関連の作品など)
http://www.kobouzu.net/

慈舟山 瑞泉寺 ホームページ(ホームページの絵はもちろん中川さんの作品)
http://zuisenji-temple.net

坊主めくり「仏を描かずして仏を描く人/瑞泉寺 副住職 中川龍学さん」
※「龍学」さんはお坊さんネーム。当時は副住職だった中川さん、今はご住職になられました。
http://www.higan.net/bouzu/2009/06/nakagawa-1.html
http://www.higan.net/bouzu/2009/07/nakagawa-2.html



杉本恭子 (すぎもと きょうこ)
>>プロフィールを読む 大阪生まれ東京経由京都在住のライター。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒業。お寺取材を経験するうちに「お坊さん」に興味を持ちインタビューを始める。