【大自然の中の博物館】大和路の十一面観音菩薩に会いに行こう!<後編・奈良東部>

【大自然の中の博物館】大和路の十一面観音菩薩に会いに行こう!<後編・奈良東部>


無事に5月21日に成満した高野山開創1200年の記念大法会。せっかく盛り上がった法悦をそれっきりにしてしまうのは勿体ない、という思いからスタートした観音菩薩めぐり。子どもとの散歩にも最適!と意気込んで出かけましたが、今回の宇陀・桜井のお寺は大自然の中......必然と山道や階段が多く、散歩というより登山となる場面も。


しかしそれでも、会いに行きたい仏さまがいます。都会の博物館での拝観も良いものですが、本来その仏さまがいるべき場所で、国宝であろうがなかろうが何も遮るものがないところで、仏像としてではなくまさしく仏さまとして対面する。そんなステキな体験を皆さんにもオススメします。


きっと子どもも感じるものが多かったであろう観音さまの優しい微笑み。そもそもインドでは男性であったとも言われる観音さまですが、中国に伝わって女性的な優しさが重ね合わされるようになり、日本ではすっかり女性としてイメージされるようになりました。仏さまや菩薩さまには基本的に性別がありませんが、私たちはどうしても雰囲気や表情から無意識に性別を感じ取ります。やわらかな表情、細身でしなやかなお身体から、観音さまは女性と信じて疑わないほどではないでしょうか。


一般的に観音菩薩と親しまれていますが、「観自在菩薩」「観世音菩薩」「聖観音菩薩」とも呼ばれ、その一つに「十一面観音菩薩」があります。頭上に十一の仏さまのお顔を持ち(頭上には十面だけで、本体の大きなお顔を合わせて十一面の場合も)、それぞれのお顔で私たちを見守ってくださっています。優しいお顔、厳しいお顔、笑ったお顔、どれも慈悲に満ちた眼差しを向けておられる。日本人の琴線に触れる麗しさがあり、観音菩薩だからこそ生まれる信仰があると感じられます。


さあ、そんなわけで後編の旅。国宝や重要文化財が当たり前のように溢れる奈良東部のお寺をレポートします。大和路の魅力の一端をどうぞ感じてくださいね。


■ 室生寺(真言宗室生寺派大本山/宇陀市)http://www.murouji.or.jp


奈良にあっても一際奥深い宇陀の山中にあり、その昔、高野山が女人禁制だったのに対して、室生寺は女人にも開かれた「女人高野」として広く親しまれていました。この地で弘法大師が修行されたとも伝えられ、後年高野山を開くことになりましたが、「わが身をば高野の山にとどむとも 心は室生に有明の月」と詠まれたことからも、大師の室生への愛着が感じられます。


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さほど広くない金堂に国宝や重要文化財がひしめき合っているのがスゴイところで、その中心が本尊である釈迦如来立像(国宝)。横一列に5体並ぶ仏さまの左端に、十一面観音菩薩立像(国宝)がそっと立っておられます。本体の美しさはもちろん、後世の補修ながら板光背も美しく目が離せません。


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■ 大野寺(真言宗室生寺派/宇陀市)大野寺/巡る奈良


修験道の開祖とされる役小角(えんのおづの/おづぬ)が開創し、室生寺の西の大門とされ、室生寺と合わせて必ずお参りしたいお寺。近年は境内のしだれ桜(樹齢300年)が有名で、多くのカメラマンと観光客が訪れます。


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本堂内の地蔵菩薩立像(重要文化財)もさることながら、大野寺と宇陀川を挟んだ対岸の大岩壁に刻まれた弥勒磨崖仏(史跡)に驚かされます。10mを超える弥勒菩薩さまが線刻されているという珍しいものです。


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■ 長谷寺(真言宗豊山派総本山/桜井市)http://www.hasedera.or.jp


聖武天皇の勅願で創建された長谷寺は、観音霊場の根本霊場とされ、長谷詣・長谷信仰は全国に広がりました。現在は「花の御寺」として四季折々の花が美しく、多くの人々の参拝があります。


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本尊の十一面観世音菩薩立像(重要文化財)は、高さ10mを超す圧倒的な存在感。右手に大きな錫杖(しゃくじょう)を持っておられるのも特徴的です。特別拝観で菩薩さまの足元に入ることができ、撫でられてツルツルになった大きな両足に触れさせていただきました。


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■ 聖林寺(真言宗室生寺派/桜井市)http://www.shorinji-temple.jp


仏像ファンにはあまりにも有名な十一面観音菩薩立像(国宝)は、大御輪寺(大神神社の神宮寺)から廃仏毀釈の頃に移され、フェノロサや岡倉天心らによってその美しさが絶賛されました。本堂横の階段を登ったお堂に安置されていて、厳かな空気の張り詰めるお堂の中で、観音菩薩さまと差し向かいでお会いできます。息を呑む唯一無二の美しさをご堪能ください。


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以上、僅かですが4カ寺をご紹介いたしました。有名なお寺もマニアックなお寺も訪ねてみたくなったのではないでしょうか。ビビっと来たら、それは仏さまがあなたを呼んでる証拠。できるだけ早くお参りしてご挨拶くださいね。 合掌


── 参考 ──


■ 前編はこちら
【高野山だけが真言宗じゃない】大和路の十一面観音菩薩に会いに行こう!<前編・奈良北部>


■ 大和路 秀麗 八十八面観音巡礼
http://www.kairyuouji.jp/kannon.html


桂 浄薫 (かつら じょうくん)
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