『ほんとう』に触れて"自由"を生きよう Temple vol.2レポート

『ほんとう』に触れて 去る3月2日月曜日の夜、東京・神谷町光明寺の本堂にて、Temple vol.2が開催されました。「『ほんとう』に触れて"自由"を生きよう」をテーマに掲げたこのワークショップ、今回も30名近くの方にお集まりいただきました。2回目のTempleはどのような場となったのか、主宰の小出がレポートいたします! 少し長いですが、最後までお読みいただけましたらうれしいです!







☆リフレクション1・2☆

前回同様、受付開始からワークショップ開始までの30分間を、「リフレクション1」として、照明を落とし、控え目に音楽を流したお寺の本堂という非日常の空間で、それぞれが自分のこころの中にある「ほんとうのいのり」「ほんとうのねがい」に向き合う時間としました。前身イベントもカウントに入れると、Templeは今回で3回目。リピーターさんも多くいらっしゃって、場の雰囲気もどんどん柔らかなものになっていっているような感じを受けました。近くに座った参加者さん同士、初対面でも和やかに談笑されている姿も見られました。

19時にワークショップ開始。小出のごあいさつ(変わりゆく世の中にあっての唯一絶対の変わらないもの=「ほんとう」。それを探っていきましょう、というお話をさせていただきました)ののち、「リフレクション2」というプログラムからスタートです。光明寺の松本紹圭さんに導師をおつとめいただき、「讃仏偈(さんぶつげ)」というお経を、参加者のみなさんで声を合わせてお読みしました。阿弥陀如来の前身である法蔵菩薩の「すべての人を救うことができなければ、自分は決して仏になるまい」という固い決意が表されているというこのお経。松本さんの丁寧なご解説をお聞きしたあとでの読経だったので、みなさん、さらに深く感じ入るものがあったようです。声を出してお経に集中することで「いま」にいることができた、いろんなしがらみから解放されるような感じがした、という感想もいただきました。

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☆ウィズダム☆

続いて「ウィズダム」というプログラムです。事前に参加者の方々よりお送りいただいていた、ご自身の大切にしている「ほんとうのことば」から、代表して3名の方に、みなさんへのシェアをお願いいたしました。


一番目は男性会社員のSさん。江戸時代後期の禅僧・良寛の「なにごとも移りのみ行く世の中に花は昔の春に変わらず」という歌をご紹介くださいました。

Sさんは、ある時、よく行く公園の池の鴨をぼんやりと眺めていて、ふと、「いま自分が見ている鴨は、いつか見た鴨と"同じ"鴨なんじゃないか?」と思ったそうです。もちろん、数年前に見た鴨は、きっとすでに死んでしまっているだろう。だからあの鴨とこの鴨は違う個体だ。でも、それぞれの鴨を生かしている「いのち」そのものは、まったく同一のものなのではないだろうか? と。そのときに、良寛さんの歌は、まさにこのことを言っているんじゃないか、と感じたとのこと。

花は毎年咲いては散っていく、その繰り返しの中に、ひとつとして同じ花はない。でも、花を咲かせる「いのち」そのものは決して変わらない。いつかの花も、いま見ている花も、同じ「いのち」が咲かせている。変わりゆくものの背後にあって、決して変わることのないもの。それが「いのち」というものなのではないか。「いのち」というものはひとつらなりのものであって、決して個別のものではない。鴨を生かしているいのちも、花を生かしているいのちも、自分を生かしているいのちも、ぜんぶ同じ「いのち」なのだと。自分がいのちを生きているのではなく、「いのち」が自分を通して生きているのだと。そんな風に強く感じたというお話でした。

まさしく、すべての存在の本質に迫る「ほんとう」のお話だなあ、としみじみと聞き入ってしまいました。「ひとつらなりのいのち」ということばがとても印象的でした。Sさんも、私も、参加者の方々ひとりひとりも、世界中の人々ひとりひとりも、まったく同じ、たったひとつの「いのち」を生きている―― 究極の気づきをシェアしてくださったSさん、ありがとうございました。


続いては、前回に引き続きご参加くださったKさんという女性にお願いしました。Kさんがシェアしてくださったのは、ガリレオ・ガリレイの「それでも地球は回っている」ということば。Kさんは、このことばに象徴されるガリレオの生きざまに、自分というものを貫く強さを感じたのだそうです。

普段の生活の中で、自分が大切に思っていることを他人に伝えても、こころの底から共感してもらえることはほとんどない。それはある意味当たり前のお話なのかもしれない。ガリレオのとなえた科学的な真実ですら、その時代の人々には受けいれてもらえなかったのだから。でも、だからと言って、自分の考えや信念を曲げる必要はないのだ、と。そして、誰かに受けいれられなかったからと言って、自分が間違っているなんて思わなくたっていいんじゃないか。自分を見失わずに、自分自身の「ほんとう」をこころに抱いて、強く生きていければそれでいいんじゃないか、と。Kさんは、ガリレオのことばとその生きざまから、そんなことをお感じになったということでした。

他人に評価されることがゴールというわけじゃない。自分自身が、自分の思う"真実"を掴んだということ、それ自体がすでに到達と呼べるんじゃないか。そう力強くお話しされるKさんのお姿に、私自身、とても励まされる思いがしました。Templeはみんなで「ほんとう」を探る場です。でも、究極の「ほんとう」は、最後は自分で見出していくしかないのですよね。原点に立ち返れるようなお話でした。Kさん、ありがとうございました。

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最後は、光明寺の松本さんが、「南無阿弥陀仏」ということばと、ご自身がお感じになっていることを、「ほんとうの名前」という切り口からシェアしてくださいました。「南無阿弥陀仏」をとなえることを、浄土教では「名前」を「称える」と書いて「称名」と呼びます。「南無阿弥陀仏」こそを、私たちの「ほんとうの名前」としているのだそうです。

「自分からも、隣の人からも、名前というものがはがれてどこかへ行ってしまった......そんな世界を、少しだけ想像してみてください」。松本さんのご指示に従って、しばし沈黙に包まれる会場......。みなさん、それぞれに、「名前のない世界」を想像されているようです。数十秒後、松本さんはこうおっしゃいました。「自分が見ている景色そのものも、自分であるような気がしてきませんか?」

「切り離す」という作用をもった"ことば"によるラベルがはがれたとき、皮膚の内側に閉じ込められていた「自分」というものが解放されていく。そこに自分自身のほんとうの名前=「南無阿弥陀仏」を見出していく―― 「ことばを超えたもの」にアクセスしていく、その手がかり、ゲートウェイとして、称名念仏が機能してきたのではないか、ということでした。

最初に「ことば」をシェアしてくださったSさんの「ひとつらなりのいのち」ともつながっていくような、とても興味深いお話でした。参加者の方からも、「自分の名前がはがれた状態を想像してみたら、すごくひらかれた、広々とした、自分とほかとの区別がないような、解放されるような感覚を味わいました。名前がないって、こんなに自由なんだ、と感じました」とのご感想をいただきました。松本さん、ありがとうございました。

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今回も、「ほんとう」への道しるべとなるような「ことば」がたくさんありました。参加者のみなさんも、メモをとったり、時折、大きくうなずいたりしながら、真剣に耳を傾けていらっしゃいました。Sさん、Kさん、松本さん、本当にありがとうございました。



☆ダイアローグ☆

最後は、それぞれの思う「ほんとうのこと」をテーマとした座談会の時間です。今回は、事前に参加者の方より挙げていただいていた「ほんとう」につながるテーマにしたがって、約4名ずつのグループに分かれて座っていただきました。今回挙がったテーマは、「慈悲について」「常識について」「善悪について」「お金について」「空(くう)について」の5つ。そこにテーマ設定のない数グループを加えて、1時間の座談会、スタートです。安心して皆さまにお話ししていただけるよう、2名のお坊さんと私、小出が、それぞれのグループを少しずつ回らせていただきました。

各グループ、はじめこそ、テーマに従ったお話をされていましたが、徐々にそれだけにとらわれない「ほんとう」のお話を、次々に展開されているようでした。印象的なお話を以下に挙げていきます。

・揺れている自分との付き合い方
・ほんとうの自信とは?
・ほんとうのしあわせとは?
・自分を受けいれるということ
・欲求の正体について
・なにものにもとらわれない生き方について
・自分というものを規定する枠について
・自然とはなにか?
・人生の時間について
・感謝のことばについて
・自分自身を「慈悲」の源として生きること
・「ほんとうのこと」の所在について
・各宗教、各宗派の「ほんとうのことば」について
・自分の中に軸を持つということ

などなど......。そのほかにも興味深いお話が盛りだくさんでした。

今回も「初対面同士なのに、こんなに深い話ができるとは思わなかった」との声がいろんなところから聞かれました。私たちの本質としてそもそも備わっている、年齢や性別、職業、住んでいるところ、宗派、宗教などの、ありとあらゆる違いを超えたところに共通して"ある"「ほんとうのこと」をテーマにした座談会だからこそ、こういったことが成り立つのかもしれませんね。とても熱のこもった、力強い時間、空間になりました。

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Temple vol.2はこれで終了です。リフレクション、ウィズダム、ダイアローグの3つのプログラムが、それぞれ、「ほんとう」に触れる、確かめる、思い出す......そんなきっかけになったとしたら、こんなにうれしいことはありません。参加者のみなさん、本当にありがとうございました。

なお、お賽銭箱に入れていただいたみなさんのお気持ちは、全額「お寺おやつクラブ」に寄付させていただきました。こちらもありがとうございました。



前身イベントと、2回のTempleを経て、私自身、見えてきたものもたくさんありました。次回以降も、工夫や改良を重ね、さらにみなさんが安心して、もっともっと深い部分で「ほんとう」に触れるきっかけとなるようなワークショップを作っていけたらいいな、と考えています。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。



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以下、vol.2にご参加くださった方々の感想です。

・とても楽しく過ごすことができました。ダイアローグでは、自分からは出てこないような発想や知恵などが聞けて、すごく頭が整理されました。(30代 女性 東京)

・初対面の方とこんなに話ができると思わなかった。仕事中心の日々を送る中で貴重な体験でした。(50代 男性 大坂)

・ほんとうのことについて、とくになにか用意してきたわけではなく、むしろ「ほんとうのことわかりません!」という思いで来ましたが、それすらも受け止めてあげようという気持ちになれました。いまの自分をそのまま受けいれるってこういうことなのかな? という感じです。(40代 女性 東京)

・今回、ダイアローグでお会いした皆さまとのご縁に感謝しています。とても楽しい時間を過ごせました。ありがとうございます。(30代 女性 千葉)

・今回2回目でしたが、1回目とはまた違う雰囲気で楽しかったです。私は自分のことを聞き上手だと思っていたのですが、むしろ話したい方だったんだなあ、と気がつきました。(30代 女性 千葉)

・共感する、してもらうたび、ひとつの「いのち」の一部なのだということを再確認します。(30代 男性 東京)

・こういう話をゆっくりとする機会はなかなかないので有難いです。(30代 女性 東京)

・各々の価値観、宗派性はあれども、こういった場は、仏教の良さを共有できる数少ない場だと思います。(20代 男性 千葉)

・今回、お経に集中したら、「いま」に生きることができ、過去や未来のしがらみから解放された感じがしました。「いま」を生きるってこういうことかと思いました。どんなに忙しいときも、とりあえず「いま」に集中してみる。そうしたら忙しいことさえも幻想になるのかもしれないと思いました。今回のグループセッション(ダイアローグ)も楽しかった。毎回、巡り合う人が、いまの自分に必要な話題を持っていてびっくり! ありがとうございました。(20代 女性 東京)

・面白いイベントでした。お疲れさまでした。(30代 女性 東京)

・今回も、とても楽しく参加させていただくことができました。回を重ねるごとに、場の居心地がどんどん良くなっているように感じました。ダイアローグでは、テーマを設けてもらったことで、自分の気になることへのヒントをいただけたような気がします。また、タイミングが合えば、ぜひ参加したいです。(30代 女性 東京)

・今日はどうもありがとうございました。愉しく、考える、考えさせられる時間になりました。(40代 女性 東京)

・「慈悲」という難しいテーマでのダイアローグでしたが、皆さんと、心からわき出る言葉を交わすことで、自分自身がその源なのだと実感することができました。素晴らしい空間でした。ほんとうのことや自分を見つめる良い機会となりました。ありがとうございました。(50代 女性 埼玉)

・素敵な環境でのイベント、とても楽しかったです。お経を読むのもワクワクしました。またおじゃましたいと思います。(30代 女性 東京)

・深い話や貴重な話が聞けて良かった。宗派の違いがもっと超えられれば、と思った。(20代 男性 東京)

・自分の「ほんとうのこと」を見つけるヒントとなる言葉・お話が、ひとつふたつ......。今回もステキな出会いでした。また参加させていただきます。ありがとうございました。(30代 女性 東京)

・ウィズダムがあることでダイアローグにはずみがつくようです。ダイアローグはいい機会ですね。こういう、こころが開かれた状態で語り合うことができる=Temple! 「日本が世界における"Temple"になれば」というのが、このダイアローグを体験していると、夢想ではなく、ありえることだと思えます。ぜひ続けてください。(40代 男性 東京)

・今回もありがとうございます。前回に引き続き、パワーがみなぎっていていい空間だな、と力をいただきました。そんな会を開催してくださり感謝です。また参加します。(30代 女性 東京)

・また来ます! 続けていきたいですね! この素晴らしい"空間"が在り、そこで時間を過ごせることに敬意と感謝を表します。またお逢いしましょう。(30代 男性 東京)

・空という仏教の本質の部分について踏み込んだ話ができ、有意義な時間でした。こういったことは言葉で表しにくいですが、だからこそ共有できる喜びも大きいですね。次回以降も、変わっていくものの背後にあって変わらない「ほんとうのこと」について話せたらと思いました。(30代 男性 埼玉)

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小出遥子 (こいで ようこ)
>>プロフィールを読む 1984年生まれ。新潟県出身。早稲田大学第一文学部日本文学専修卒業。編集プロダクション、美術系専門図書館勤務を経て、現在はフリーランスの編集者・文筆家として、仏教系テキストを中心とした編集・執筆活動を行っている。 いのちからはじまる対話の場「Temple」主宰。http://temple-web.net/