日本のお寺の課題を解決し、新たな歴史をつくるお坊さんコミュニティ「未来の住職塾サンガ」とは?

日本のお寺の課題を解決し、新たな歴史をつくるお坊さんコミュニティ「未来の住職塾サンガ」とは?


「お寺の百年を開く、確かな計画書と実行力を養う」。

2012年に「お寺の未来」が立ち上げた「未来の住職塾」は今年で4期目。すでに「お寺の百年」を開く可能性が現実味を帯びてきました。お寺の課題を解決し、新しい未来をつくる力を蓄えたお坊さんたちのコミュニティが育ちはじめているからです。


「未来の住職塾」は、今のお寺が抱えている課題に向き合い、新しいお寺づくりをするための「寺業計画書」をつくるプログラム。東京、名古屋、大阪、京都、広島、札幌など全国の会場で開講し、3年間で250名以上の僧侶(坊守含む)が卒業しました。

一年間、みっちりと「自分たちのお寺の価値はなんだろう?」「お寺が社会にできることはなんだろう?」と考え抜いた経験を持つ、全国のお坊さん・坊守さんが250人...! このコミュニティが持っているインパクトは、日本どころか世界においても唯一無二のものです。

「未来の住職塾」の考えるお寺づくりは、「お寺の課題解決」と言い換えられます。

たとえば、「お寺に若い人が来ない」という課題があるとします。この課題を解決するには「どうすれば、お寺の価値を若い人に伝えることができるのか」「そもそも、お寺の価値とは何なのか?」と、掘り下げていく必要があります。このプロセスを学ぶのが「未来の住職塾」のプログラムです。

しかし、計画とは立てるよりも実行することのほうがはるかに難しいもの。この「実行力」をしっかりとサポートするのが、「未来の住職塾サンガ護持会(以下、未来の住職塾サンガ)」です。


日本のお寺の課題を解決するのは「お坊さんコミュニティ」

2014年10月に開催された「未来の住職塾サンガの集い」に集まった全国のお坊さんたち! 2014年10月に開催された「未来の住職塾サンガの集い」に集まった全国のお坊さんたち!



「未来の住職塾サンガ」は未来の住職塾の卒業生コミュニティ。そして、「未来の住職塾」は「「未来の住職塾サンガ」の存在によって「卒業後こそが真骨頂」とまで言われています。なぜ、「未来の住職塾サンガ」は、それほどに高い評価を受けているのでしょうか?


「未来の住職塾の講義は厳しい。だからこそ、お寺を変えるプランを作れる」。


卒業生たちは口々にこう言います。ところが、自分のお寺でいざ「寺業計画書」の実現に向かって動き始めると予想以上の困難に立ち尽くすことも少なくありません。なぜなら、「変わらなければ」と考えていたとしても、歴史と伝統を持つお寺が「変わる」のは容易ではないからです。


「未来の住職塾」で学ぶ一年間は、定期的に仲間たちに会って共に学び、交流することができます。しかし、卒業してしまうとお寺づくりに取り組むのは自分ひとり。予想外のトラブルや障壁に出会って、思うように計画が進まずにモチベーションを保つのが難しいこともあるでしょう。


そんなとき、志をともにする仲間とのつながりが大きな支えになります。同じ宗派教区の仲間同士ではちょっと言いづらい悩みも、「未来の住職塾サンガ」の仲間であれば話すことができるという卒業生も少なくありません。お坊さんの世界のなかでは、自分の考えていることややりたいことを思い切り自由に言い合える場があることは、本当に貴重なことなのです。



「未来の住職塾サンガ」の取り組み


「未来の住職塾 全国サンガマップ」メンバーの寺院は全国にこんなにもあります! 「未来の住職塾 全国サンガマップ」メンバーの寺院は全国にこんなにもあります!


「未来の住職塾サンガ」を構成するメンバーは、「未来の住職塾」卒業生・修了生、そして「お寺の未来」のメンバー(講師、事務局スタッフなど)。現在は、3名の卒業生と2名の講師が役員を務め、「未来の住職塾」事務局がその運営にあたっています。


「未来の住職塾サンガ」の活動は、メディア発行と場づくり、そして「未来の住職塾サンガ」の会費を活用する「サンガ助成金」の三つに集約されます。(「未来の住職塾サンガ」の活動詳細はこちら!


「僧侶のためのグリーフケア連続講座 in 名古屋」のようす 「僧侶のためのグリーフケア連続講座 in 名古屋」のようす

メディア発行では、会員限定のメールマガジンや「全国サンガマップ」などによる情報共有を定期的に行っています。「サンガ助成金」は、「未来の住職塾 本科」受講を希望しながらも経済的支援が必要な受講生への奨学金、会員による活動支援に当てられています。2014年、助成金第一号として、一般社団法人リヴオン代表の尾角光美さんを講師に招き「僧侶のためのグリーフケア連続講座 in 名古屋」が実現しました。

また、「未来の住職塾サンガ」の集まりを年1〜2回開催。全国の「未来の住職塾」クラス代表者による「寺業計画書」発表、住職塾講師による特別講義、国内外で活躍するゲストスピーカーの講演などのほか、参加者によるグループワークを行うこともあります。

昨年10月には、大阪・應典院で「未来の住職塾サンガの集い」が行われました。そのようすをかんたんなレポートでお伝えしましょう。



お坊さんの議論はアツかった!「未来の住職塾サンガの集い」


「未来の住職塾サンガの集い」でお話するサンガ護持会会長の浦上哲也さん。 「未来の住職塾サンガの集い」でお話するサンガ護持会会長の浦上哲也さん。


2014年10月29日、大阪・應典院にて「未来の住職塾サンガの集い」が開かれました。

まず、應典院・秋田光彦代表、「未来の住職塾」松本紹圭塾長からのあいさつの後、全国から住職塾一期生、二期生の卒業生・修了生30名が参加。住職塾サンガの役員による報告(「住職塾サンガの機構としくみ」「会計と助成金の現状」)を共有した後、6グループに分かれてワークショップを行いました。

ワークショップのテーマはズバリ「未来の住職塾サンガのこれからを考える」。グループごとに「1. 卒業後の悩み、困っていることの共有」「2. 今後のあり方や期待」「3. 護持会に行ってほしい具体的な取り組み・サポート」で60分間の議論を行います。

「お坊さんがグループワーク?」と驚く方もおられるかもしれません。しかし、「未来の住職塾」では毎回のようにグループワークが行われているので、「未来の住職塾サンガ」のお坊さんたちは慣れたようす。坊主頭(失礼!)をつきあわせて、積極的に意見を出し合う姿が見られました。

各グループから提出された共通の課題は、「未来の住職塾を卒業した後のモチベーション維持の難しさ」「近隣寺院から新しい寺業に理解を得ることが難しい」など。やはり「寺業計画書」を実現するプロセスに悩みがあるようです。

しかし、悩みを言い合ってばかりでは何も解決できません。続いては、各グループから「解決のアイデア」を発表。「顔を合わせて語り合う機会を増やそう」「寺業計画書のコンテストを実施する」「サンガ会員内で寺業計画書のデータベースを共有する」など前向きな意見が飛び交いました。来年度の「未来の住職塾サンガの集い」までには、これらのアイデアのいくつかは実現しているはずです。

「住職塾サンガの集い」の最後には、なんと宗教学者であり浄土真宗本願寺派僧侶(如来寺住職)の釈徹宗先生が登壇。「お寺とお坊さんについて考える--場と関係性--」と題した講演が行われました。

「お寺づくり」には、現場の課題を共有するだけではなく、日本仏教という大きな枠組みで課題と未来を捉えるマクロな視点も必要です。その機会が得られることも、「未来の住職塾サンガの集い」に参加する大きなメリットのひとつです。



住職は「一国一城の主」、だからこそ同志がほしい


未来の住職塾サンガ護持会副会長 井上広法さんが副住職をつとめる光琳寺サンガ護持会副会長 井上広法さんが副住職をつとめる光琳寺


地域、宗派、歴史的背景によって、お寺の事情は一ヵ寺ごとに異なっています。ご住職は、自分のお寺の課題や悩みを他の人に共有すること自体が難しい。かといって、事情がわかっている寺族・法類とばかり話していては、新しい視点でものごとを観ることができなくなってしまいがちです。

お檀家さんや宗派内のおつきあいなど、いつもたくさんの人に囲まれているにも関わらず、お坊さんは自分自身の思いを口にすることはなかなかできません。住職だからこそ泣き言も言えない。お寺の長として、しっかりしていなければいけない。そんな思いで、法務に向かっておられるお坊さんたちの背中を見ていると本当に頭が下がる思いがします。

だからこそ「未来の住職塾サンガ」のように、お互いに心置きなく悩みを語り合うことができ、同じ志で持って未来を見つめることができる仲間がいることは、お坊さんたちにとってかけがえのないことなのです。



刹那的な現代に「百年の未来」をつくる意味


未来の住職塾運営スタッフ(左から、塾長の松本紹圭、講師の井出悦郎、事務局の遠藤卓也と唯一の女性スタッフであるMさん) 未来の住職塾運営スタッフ(左から、塾長の松本紹圭、講師の井出悦郎、事務局の遠藤卓也と唯一の女性スタッフであるMさん)


一年先はおろか、数ヶ月先のことさえ見えない現代において、「未来の住職塾」の「お寺の百年を開く、確かな計画書と実行力を養う」というキャッチコピーは、非常に挑戦的なものです。

「未来の住職塾」は、このキャッチコピーを単なる「うたい文句」だとは考えていません。だからこそ、卒業・終了後の年月において、お寺の現状を分析して計画を策定し、それを実行に移していくプロセスを重要視して「未来の住職塾サンガ」のネットワークづくりにも力を入れているのです。

先日、「未来の住職塾」松本紹圭塾長は、Facebookのタイムラインにこんなことを書いていました。

「明るい話題の少ない日本で、
特に明るい話題の少ない伝統仏教界で、
「お坊さんやっててよかったな」
「お寺って無限の可能性があるじゃないか」 と
心から信じて行動する仲間にあふれたコミュニティの存在は、
私にとっても数少ない希望の兆しです。

未来の住職塾に関わる人は、日本伝統仏教の歴史の目撃者であり、
未来の住職塾サンガは、日本伝統仏教の歴史を作る人の集いです。
一ヶ寺一ヶ寺に目を向ければ、すでに歴史は新たに生まれ始めています。
今後、より難易度の高い複数寺院での共同プロジェクトも増えるでしょう。
次の時代のお寺の世界、お寺のある世界のかたちが、
きっとここから生まれるのでしょう。
この感覚は、ここに集っている人なら多かれ少なかれ
共有しているものだと思います」


「お寺の百年をひらく」のが「未来の住職塾」であるなら、百年後の未来において「未来の住職塾」は必ずやその名を歴史に刻んでいることでしょう。

「生きている実感」は、何の問題もない、幸福な日常のなかにいるときよりも、大きな目標に向かって挑戦を重ねているときに得られるものだと思います。今、この時代にしかないお寺の課題に取り組むお坊さんたちは、「お寺をやっている」「お坊さんである」ことの面白さを思い切り感じておられるのではないでしょうか。

「あ、このお寺は『未来の住職塾サンガ』のお寺なんだね」
「面白そうだから行ってみようか」


近い将来、こんな会話がごくふつうに聴かれるようになるかもしれないと思うとワクワクしてきます。現在、「未来の住職塾」では4期生を募集しています。今年は、どんなお寺のお坊さんや坊守さんが受講されるのか? もはや無関心ではいられません。


■未来の住職塾本科 第四期生受付は2015年2月28日まで!
http://www.oteranomirai.or.jp/juku/regular_course/


杉本恭子 (すぎもと きょうこ)
>>プロフィールを読む 大阪生まれ東京経由京都在住のライター。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒業。お寺取材を経験するうちに「お坊さん」に興味を持ちインタビューを始める。