【レポート】朝は3時起き! 本格的に坐禅修行を体験『禅の旅プレミアム』

【レポート】朝は3時起き! 本格的に坐禅修行を体験『禅の旅プレミアム』
2012年8月4日から6日まで、二泊三日で『禅の旅』に参加しました。『禅の旅プレミアム』(以下、『禅の旅』)は、星覚さんとライフスタイルプロデュースの荻野淳也さんが企画・開催する、永平寺と天龍寺で坐禅を体験する少人数のプログラム。

20回目は、男性5名、女性2名の合計7名が参加、"同安居"として旅路をともにすることになりました。

『禅の旅』で何をするの?


愛宕山山頂から眺める永平寺全景
『禅の旅』では、永平寺から車で約15分の天龍寺に宿泊(参籠)して坐禅や作務をする禅修行を体験します。朝は4時半から始まる永平寺の朝課(朝のおつとめ)に参加。天龍寺、永平寺内では、禅の基本作法である三進退(合掌、叉手、法界定印)に基づいて行動し、食事も沈黙のうちに作法にのっとって行うなど、本格的な"禅修行"で身心を調えていきます。

"修行"の合間には、おいしい越前そばのランチや、ちょっとした山登り、永平寺堂内を見学する自由時間などレクリエーション要素も盛り込まれており、ほどよく息抜きしながら坐禅を楽しめるようにプログラムされています。また、"禅ワゴン"と名づけられたワゴン(※レンタカーです)で往復するドライブも大切な時間。車中ではそれぞれが坐禅の感想や旅で感じたことをシェアするワークショップも行われます。

永平寺門前「やのや」さんの越前そばランチ
故スティーブ・ジョブズが坐禅をしていたことはよく知られていますが、近年ではGoogleやFacebook本社にZENセンターで修行したアメリカ人が研修するなど、禅は世界のトップ企業でも求められています。永平寺は道元禅師の時代から760年以上変わらぬ修行生活が営まれる曹洞宗の大本山。760年も続く組織作り、人づくりのあり方・しくみを間近に見ながら、「これから必要とされるサステナブルなマネジメントのあり方」を考えるのも、『禅の旅』の要です。


朝3時起床! 天龍寺での坐禅生活


zentabi_001.jpg一日目は、到着してすぐに永平寺へ。まず、永平寺を空から一望できる愛宕山に登りました。登る前に、星覚さんが「15分くらいで登れますよ」とにっこり笑って送り出してくれたのですが、実際にはもうちょっと長く登っていた気がします。都会より涼しいとはいえ、真夏の登山。あっという間にみんな汗だくです。

山から下りると天龍寺へ。薬石(やくせき、夕食のこと)をいただき、いよいよ最初の坐禅(夜坐)です。天龍寺には正式な坐禅堂があり、「単」という畳一畳分のスペースに一人ずつ坐ります。坐禅の時間は約40分×2回。朝早く起きて旅してきたので、意識が飛んでしまうこともしばしば......。

夜坐の後は、天龍寺住職 笹川浩仙老師による『正法眼蔵随聞記』の講義タイム。参禅者が一堂に会して、感想を話しあいます。おいしい和菓子をいただきながらの茶礼(されい)でちょっとなごんだ後は、開枕(かいちん、眠ること)。まだ21時でしたが、お布団を敷くとあっさり眠りに落ちました。

翌朝は、3時に星覚さんが大きな鈴を片手に「振鈴(しんれい)」をして、みんなを起こします。20分で洗願、着替えを済ませて坐禅堂へ。まだ外は真っ暗ですが、暁天坐禅をはじめます。終わるとすぐに車に乗り込んで永平寺へ。星がまたたく道を走って「朝課」に出かけました。


永平寺の朝課は息をのむ荘厳さ


永平寺山内にて
朝課に参加する人は、雲水さんから「三進退」、お焼香のタイミングと作法の説明を受けた後、法堂へ移動します。夜明けとともに明るくなる堂内では、お腹の底に響く巨大な木魚に合わせて100人はいる雲水さんたちの読経の声が満ちていき、外からはハーモニーをかなでるようにカワセミの声が聴こえて、この世ならぬ不思議な世界に誘われるような心地がしました。

リズムに合わせて研ぎ澄まされた動きで経本を配っていく雲水さん、腕を大きく回して鈴を鳴らす雲水さん。こういう表現は適切ではないかもしれませんが、すべてがミュージカルや舞台芸術のように洗練されていました。しかも外の世界(自然)とも一体化しているように感じられて、本当に素晴らしかったです。

朝課の後は、雲水さんが堂内を案内してくれます。驚いたのは、私たち参拝客が歩く回廊の途中に、雲水さんが寝起きする雲堂(坐禅堂)があり、いわば、雲水さんたちが暮らす生活空間でもあるお寺のなかを、見せていただいているという事実です。そして、雲水さんたちは修行の一環として私たちの案内をしてくれているのです。

永平寺山内にて 雲水さんに案内してもらう
「私たちの案内などに、大切な修行の時間をいただいていいものでしょうか」。
星覚さんに尋ねてみると「僕もそう考えた時期はあったのですが、禅を知っていただくのも大切な修行のうちだと思うようになりました」とのこと。堂内見学の途中「いま、法要中です。ここは声が響くので静粛に!」と声をかけている雲水さん。参拝客が入ってはいけないエリアに立って誘導する雲水さん。これは、もしかすると坐禅よりも難しい修行かもしれない、という思いが胸をかすめました。

個人的には、永平寺への参拝はとても感慨深いものがありました。星覚さんや吉村昇洋さんをはじめとした永平寺で修行したお坊さんたちの顔が心に浮かびましたし、彼らが永平寺を語るときに声ににじむ愛着と誇りが育まれた場所にいるのだ、ということにはしみじみ感じ入るところがありました。尊敬するお坊さんたちが誇りに思うお寺はこのようなところであったのか、というような。


坐禅をする、禅の作法で暮らす


永平寺の坐禅堂「雲堂」
今回、『禅の旅』に参加すると決めてから約2週間、準備のためになるべく毎日ヨガをしていました。憧れの結跏趺坐にチャレンジするためです。でも、最初の夜坐では自信がなくて半跏趺坐にしていたところ、時間が経つにつれて腰に負担がかかってしまう......。翌朝の暁天坐禅から思いきって結跏趺坐にしたところ、驚くほど上半身がラクになるのを感じました。なるほど「長く坐禅するなら結跏趺坐」という星覚さんの言葉に納得です。

また、お寺のなかではおしゃべりをせず、叉手をして姿勢を正して歩き、黙々と作務を。とりわけ食事は必死で食べないと追いつかないし、気を抜くと「必ず器は両手で持つ」という基本的な作法すら忘れてしまうのです。作法を守ろうとしていると、まったく余計なことを考えるヒマもありません。

一瞬一瞬に集中して生きる、それが禅の生活なのかなと思います。


旅を終えてからのこと


仏性寺にて笹川老師と一緒に
わたしは今回京都からの参加だったため、特別にお願いして現地集合・解散にしてもらったため、みんなと一緒に禅ワゴンに乗ることができませんでした。ところが、行きも帰りもワゴン内の会話が「すっごく盛り上がった」とのこと。行きは、参加者のひとりと星覚さんに意外すぎる共通の知人がいることが発覚したり、帰りには「旅のハイライト」を語り合ううちにアツい議論に発展したり......。ゲリラ豪雨の後、みごとな虹を見ることもできたそうです。

また、帰路の途中には仏性寺に笹川老師をおたずねし、おいしいお抹茶と和菓子、さらにはおむすびランチをご一緒させていただいたとか。最後の最後まで、みっちりと濃ゆい時間に満たされた旅だったようです(私は永平寺のバス停にぽつんと取り残されてさびしかったのですが!)。

旅から帰ってもうすぐ一か月。今もほぼ毎日坐禅を続けています。いま、坐禅をするとふっと天龍寺での暁天坐禅の時間に接続し、また一緒に旅をした仲間の存在につながるような感じもしています。『禅の旅』の時間は、自分の生活を支える軸としてはたらいているいるようです。

次回は2012年11月中旬に開催予定。興味のある方は「雲水喫茶」から星覚さんにメールで問い合わせてみてください。

禅の旅(雲水喫茶)
http://unsui.net/tour/cat65/




杉本恭子 (すぎもと きょうこ)
>>プロフィールを読む 大阪生まれ東京経由京都在住のライター。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒業。お寺取材を経験するうちに「お坊さん」に興味を持ちインタビューを始める。