100年の未来に伝えるお寺の芸術 『お寺座LIVE』の善巧寺が天井画を新調

100年の未来に伝えるお寺の芸術 『お寺座LIVE』の善巧寺が天井画を新調


100年、200年の未来までお寺に残る芸術を――『お寺座LIVE』で知られる、富山の善巧寺が130年ぶりに本堂の天井画を新調されました。天井画を描いたのは、富山の日本画家で現代アートも手掛ける清河恵美さん。富山県のシンボルである立山連峰を360度のパノラマで描き、その中心には深く吸い込まれるようなブルーの世界、そして立山連峰の周りには、色鮮やかな28枚の富山の花たちが配置されています。約1年半をかけて制作された天井画について、善巧寺住職・雪山俊隆さんにお話をうかがいました。

――今回、本堂の天井画を新しく作られたのはどうしてですか?
うちの本堂は、約130年前(明治14年)に建て替えたものなので、壁や天井がかなり傷んでいたんです。今年は親鸞聖人の750回忌に当たるので、これを機に修復事業をしようということになって。今回の修復事業では、土台や床、壁など見えない部分の修復が多いんですけど、何かひとつ目で見てわかる後世に残るものが出来ないかと思い、天井画の新調を提案しました。

天井画を依頼した日本画家・清河恵美さんは、実は同じ村にお住まいの方なんですよ。僕自身も恵美さんの作品が好きですし、お参り先のお宅でも恵美さんの絵を見かけることが度々あって、いろんなご縁のある方なのでお願いすることになったんです。

――同じ村にいらっしゃったんですね! 清河さんはどんな作品を描かれる方ですか?
僕たちは「恵美さんブルー」って呼んでいるんですけど、こちらの想像力をかきたてるような深い青色が印象的です。掛け軸に地球を描いた作品など、和と洋、現代と古典が融合されていて、入りやすくて奥深いです。うちにピッタリだと思いませんか?

――天井画のコンセプトはどんなふうに決められたのでしょう。
信頼する作家さんには、その人の魅力を存分に発揮していただきたいので、強い制約は作らずに基本お任せです。でも、恵美さんのほうにはお寺に安置するとなると構える部分もあったようです。ふたりで他のお寺さんの天井画を写真で見たりしながら相談しました。まず中央に描く絵のイメージを聞かせてもらった時に、「これは素晴らしいものが出来る!」と思いました。

――「恵美さんブルー」と呼ばれている世界ですね。

そうそう。全部で248枚あるのですが、中央にブルーの抽象的な世界観が大きく広がっています。その周りを、積雪した白い立山連峰を360°のパノラマが描かれていて、鳳凰と共命鳥が飛んでいます。お寺の内陣の飾り付けには、天女や龍、極楽浄土の鳥たちがモチーフとしてよく使われるのですが、この二羽の鳥を「しっくりくるね」と選んでくださいました。

『お寺座LIVE』の富山・善巧寺 清河恵美氏による天井画を新調
――お花のパネルはすごく色づかいが鮮やかで。画像で見ているだけでもドキっとします。
恵美さんが描く花の絵は、すごく生き生きした印象があって人気が高いんですよ。天井画には、「せっかくなら富山に咲く花を」と選んで描いてくれました。結果的に、富山にとってなじみ深い立山連峰、富山の花を富山の作家さんが描くという、富山のお寺ならではの天井画に仕上がりました。

お寺の本堂は、中央部分の左右に「余間(よま)」という空間があるのですが、余間の天井は以前の天井と同じく寺紋の桔梗を配置しています。

――仕上がりを見て、雪山さんのご感想はいかがでしたか?
最初に完成イメージをいただいているんですけども、やはり実際にできあがってみないとわからないところもあったんです。でも、仕上がったものを見ると、極彩色のインパクトと大きさに圧倒されました。作品の素晴らしさはもちろん、富山の善巧寺ならではの天井画に仕上がったことに大満足です。そして、それが本堂の中で浮いていないことにお寺の懐の広さを再確認しました。

前の天井に比べるとすごく派手なので「わー!」っていう感じもあります(笑)。正直に言うと、僕はお花を注意深く見る男じゃないんだけども、恵美さんの描いた花を見ていると一枚一枚から生き生きした感じが伝わってきて。「仏さまに100年単位でお花をお供えできたんじゃないかな」という思いもありますね。

――100年単位で。大きなお花をお供えした感じですね。
恵美さん依頼したときも、「これからの100年、200年のお寺の財産としてひとつ描いてほしい」と持ちかけて。うちのお寺の役員さん(総代長)は、「お寺は門徒や地域の共有財産だ」と常々いわれています。僕は今回の記念事業のスローガンを「みんなのお寺、わたしのお寺」としたのですが、近しい人たちには「この天井画は自分たちのものなんだ」という意識で見てほしいなと思います。実際、身を削って協力して下さっているのが門徒さんですから。

――門徒さんたちには、もう見ていただいたのでしょうか?
先に、お花の絵を仕上げてもらって、昨年秋の法要のときに見ていただきましたが、すごく喜んでもらえました。恵美さんは、県内でもよく知られているし、地元でもすごく信頼度の高い人なので、多少抽象的な絵が入っても納得してもらいやすい(笑)。地元に親しまれている作家さんなので、思いきった絵でも受け入れられやすいところはあると思います。

メインの青い部分を見ると、いろいろイメージできるじゃないですか? 見る人によって、空にも、海にも、宇宙にも見えるし、あの先に何があるのかと想像が膨らみます。お寺の内陣は仏さまの世界「極楽浄土」をあらわしたものなので、それを踏まえるとさらにいろんな見方が出来ると思います。型も大切ですが、それだけでは恵美さんに依頼する意味がなくて、彼女の芸術性がプラスアルファーされることによって、お寺の魅力も広がったと喜んでいます。

――今回の天井画制作は、けっこう思い切った部分もあったのかな?
どうでしょうか(笑)。インパクトはあると思いますが必然性もあるので、良いバランスだと思っています。節目での工事ってなかなかできないでしょう。そういう意味では、みなさんには「100年、200年の未来にも、子や孫に同じものを見てもらえるんですよ」とお話しています。

たとえば、キリスト教では宗教との相乗効果で芸術的な文化が伸びていったところがありますよね。日本仏教においても、仏像や彫刻、建築にものすごく力を入れていた時代がありました。そういったことは、一地方の寺院では難しいなと思っていたんだけれども、人とのつながりがあり門徒さんのご理解が得られればできるんだという例になればいいなと思いますね。

――この天井画は、一般にも公開されますか?
もちろんです。10月16日から19日までは、お寺の法要があるのでまずはそこで参拝者の方々にお披露目します。それに続いて、10月20日から1週間か10日間くらいは、一般公開期間を設けて地元でPRする予定です。

基本的には、いつでも見ていただいて良いのですが、一般公開期間を設けるとふだん来たことがない方も来やすくなると思いますので。今年の『お寺座LIVE』は11月に予定しているのですが、そのときも近くで天井画を見ていただける時間を作りたいですね。

――天井画をきっかけに、善巧寺を知ってくださる方もいらっしゃるでしょうね。
そうですね。やはり、音楽や絵などの芸術文化は、すごく想像力を膨らませてもらえるし、楽しいものですからお寺の入り口のひとつとして大きな可能性があると思います。お寺や仏教に親しむきっかけにして、枠が広がっていけばいいなと思っています。

――わたしも見せていただくのを楽しみにしています。ありがとうございました!



●善巧寺 天井画データ
制作期間:1年半
内容:
・全248枚(1枚60cm×60?)
・360度パノラマの立山連峰
・極楽浄土の鳥(鳳凰と共命鳥)
・富山に咲く花々28枚

清河恵美氏プロフィール:
1948年生、富山県黒部市在住。1970年、武蔵野美術大日本画家卒業。1986年、日本海美術展大賞受賞。県内外で個展を開催。現在は富山大芸術文化学部非常勤講師、黒部市では絵画教室をひらく

善巧寺Facebookページ https://www.facebook.com/zengyou
お寺座LIVE http://www.zengyou.net/oteraza/

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杉本恭子 (すぎもと きょうこ)
>>プロフィールを読む 大阪生まれ東京経由京都在住のライター。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒業。お寺取材を経験するうちに「お坊さん」に興味を持ちインタビューを始める。