【レポート】地元のお寺が面白い! 朝のお寺で静けさを味わう 新潟・新発田『アサテラの会』

【レポート】地元のお寺が面白い! 朝のお寺で静けさを味わう 新潟・新発田『アサテラの会』

 しーんと静まりかえった境内に満ちる清らかな空気――お寺の一日のなかでも、朝はちょっと特別な時間です。ご住職によるお勤めもありますし、「お寺が最もお寺らしい」表情を見せる時間帯とも言えるかもしれません。

 新潟・新発田市では、この「朝のお寺」を味わう「アサテラの会」という活動が行われています。「アサテラの会」は、新発田市役所に勤める伊藤正仁さんと長徳寺の関根正隆副住職、円福寺の磯部嘉知住職の三人が中心になって立ち上げました。

身近なお寺に「ちょっとお参りさせてください」

アサテラの会 伊藤正仁さん
伊藤さんは、自他共に認める"お寺好き"。機会あるごとに、京都・奈良の有名寺院へ足を延ばすとともに、新発田市内のお寺の門を叩き「ちょっとお参りさせてください」と見せていただくことも多いそうです。

通常非公開の寺院に声をかけるのは、正直言ってちょっと勇気がいるもの。でも、伊藤さんは真摯な興味を持ってお寺へのアプローチを繰り返し、次第にご住職たちとのお付き合いを深めていきました。

「お寺には、すばらしい庭や建物、仏像があります。それはすべて、仏教への信仰心から作られたものですよね。京都に通ってお寺を見るうちに、足元を見直すと、自分の住む街にもたくさんのお寺があることに気がつきました。

訪ねていくと、それぞれに魅力的なお寺で面白いご住職さんがいらっしゃいます。そういうなかで、市内のお寺さんとのおつきあいをさせていただくようになりました。非公開のお寺でも「仏さまにお参りさせていただけませんか?」とお願いすれば、断られることはほとんどありませんよ。」



「仏教はおもしろい!」を温め続けた10年

 アサテラの会 お勤めのようす
お寺への関心を深めるとともに、伊藤さんはふとしたきっかけで仏教書を手に取るようになりました。読み進めるうちに「肩の荷が下りるというか、救われるというか」、そんな気持ちになり、お寺の坐禅会に参加するなどしながら仏教の面白さを"再発見"していきました。

「京都の観光寺院とは違い、地元のお寺というとお葬式や法事をするところというイメージでしたが、実際に飛び込んでみると関根さんのような若いお坊さんがいたりします。10年前は、お寺や仏教のことを話しても反応する人がいなくて、ひとりで盛り上がっていたんですけど(笑)。」

東京へ出かけてひろさちやさんの講演を聴いたり、『がんばれ!仏教』を読んで地元で開かれた上田紀行先生の講演に参加しながら、伊藤さんは「仏教の面白さをもっとわかってほしい」という思いを持ちはじめます。そんな伊藤さんの思いに、関根さんをはじめとしたお坊さんたちが呼応して始まったのが「アサテラの会」です。

「アサテラの会」では、お寺の朝のお勤めにみんなで参加した後、参加者が持ち寄った朝がゆとおかずを並べて、みんなで一緒にいただくというスタイルを採用。「お寺に負担をかけない」ことにも注意を払いました。

「お坊さんたちは「ぜひ今度はうちでどうぞ」と好意的です。いちおう、始める前には、新発田市の仏教会会長さんにお話をしに行って筋道は通しました。「アサテラの会」については、新発田市長も「どんどんやりなさい」と応援してくれています」。



お坊さんも一緒にお寺をぐるぐる

長徳寺副住職 関根正隆さん
 長徳寺 副住職 関根さんにもお話を伺いました。

「アサテラの会」がはじまるとき、関根さんのお寺には同時多発的にいろんな人が集まっていたそうです。お寺が好きな人たち、新発田市のまちおこしに関わる人たち、自然食に関心を持つ女性たち。ちょうど「何かが起きてもおかしくない」くらいに機が熟していたとも言えます。関根さんはこう振り返ります。

「まちおこしの会議は夜に行われることが多いので、お酒が入って盛り上がるけれど次の日には忘れてしまうことも(笑)。じゃあ、お寺の会は、朝集まることにしたらどうだろう? という気持ちもあったんですね。ひとまず一回やってみようと声をかけたら、あっという間に20人くらいのメンバーが集まりました。

 最初は2011年の12月で、「雪も積もるから、次は来年の春かな?」と思っていたのですが、伊藤さんからは「参加者が少なくてもやる」との声。実際にやってみたらすごく良かったのでとんとん拍子に次が決まって。2回目まではうちのお寺で、3回目からは別なお寺にお願いして。まちおこしの会議とは別に、「アサテラの会」がひとつのかたちになっていきました。」


「アサテラの会」は、新発田市のお寺をぐるぐる巡りながら開催されていますので、もちろんお寺の宗派もいろいろ。ふだんお寺に来ない人が来て、ちょっとした非日常を味わってリフレッシュして帰っていくのと同時に、お坊さんたちにとっては「他宗派のお寺でお勤めする」というちょっと貴重な体験にもなっているようです。

アサテラの会のようす
伊藤さんには、「アサテラの会」を通して「みんなにお寺を再認識してほしい」こともありますが、お坊さんたちに「うちのお寺でも何かやってみようかな」という気持ちになってほしいという期待もあります。

「お寺にはもっと元気になってほしいんです。お寺は、人生相談をしたり、坐禅をしたり、いろんなことを通して仏教から精神的なものを得られる場。本当の意味でのお寺の良さを、もっとお寺自身が伝えていく活動を始めてほしいと願っています。私が伝えていくのは限界がありますから(笑)。

同じ坐禅会でも、檀家さん向けにやるお寺があってもいいし、一般向けにやるお寺があってもいい。それぞれのお寺の持ち味を活かすいろんなやり方で、どんどん広がっていけばしめたものだなと思っています。」



お寺やお坊さんと「何かやりたい」人はもっといるはず

アサテラの会 朝がゆと持ち寄りのおかず おいしそう!
最初は20名ほどでスタートした「アサテラの会」は、5月に行われた6回目で53名まで参加者が急増。NHKや地元メディアの取材を受けるなど注目を集めています。また、各お寺のお檀家さんも「こんなに若い人がお寺にたくさんくるなんて」と大喜びされているとのこと。お寺やお坊さんとのコラボ企画として、とてもうまくいっている例だと思います。

今回は、小千谷・極楽寺の『極楽パンチ』の取材中にたまたま『御坊市』のことを知り、『御坊市』を担当している関根さんにつながり、関根さんから『アサテラの会』のことを教えてもらい......とご縁の連鎖で伊藤さんに出会うことができました。おそらく、日本のなかには他にも伊藤さんにように「お寺と一緒になにかやりたい」「お寺の魅力を知ってもらいたい」と思っている人はまだまだいるような気がしてなりません。

お坊さんではないけれど「お寺や仏教をもっと知ってほしい」「お寺には可能性がある!」と思う人たちが、お坊さんたちの活動にリンクしていけば、日本のお寺はもっと面白くなりそう。また、そんな動きを見つけたら『彼岸寺』でもどんどん紹介していきたいと思います。


アサテラの会
http://asatera.blogspot.jp/

長徳寺ブログ

http://blog.goo.ne.jp/choutokug







杉本恭子 (すぎもと きょうこ)
>>プロフィールを読む 大阪生まれ東京経由京都在住のライター。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒業。お寺取材を経験するうちに「お坊さん」に興味を持ちインタビューを始める。