禅僧が見たヨーロッパ禅の今、フランス摂心レポート(1/3)

禅僧が見たヨーロッパ禅の今、フランス摂心レポート(1/3)

編集部より:曹洞宗の僧侶で、アーティストでもある風間天心さんに昨夏フランスで参加された摂心(集中して坐禅をするキャンプ)について寄稿していただきました。天心さんは、今週末パリでパフォーマンスと作品の展示する「OPEN STUDIO」を開催されます。修行僧が道場で行う厳格な食事作法を見せるパフォーマンスはUstreamで中継が行われる予定です。現地に行けない方も、ぜひUstreamにてご覧ください。(中継は日本時間の2月4日(土)の深夜2〜3時と2月5日(日)の23時〜24時に行われます。詳しくは天心さんのブログをご確認ください。(構成:松下弓月)


曹洞宗僧侶、北海道東川寺徒弟、風間天心と申します。私は武蔵野美術大学にて美術を学び、それから曹洞宗大本山永平寺で一年間の修行を終えました。武蔵野美術大学のパリ賞をいただいたことで、現在はアーティストとしてフランスの首都パリ市に滞在しております。


今回は、永平寺の先輩であり良き友人でもある星覚さん(現在ベルリンにて禅道場を開催中)のご紹介で参加させていただいた、昨年夏にフランスで行われた摂心(せっしん)についてご報告いたします。もともと大学では「美術と宗教の関係性」を研究テーマにしていたのですが、実際にフランスの禅を目の当たりにしてみると実に多くの発見がありました。これから私が見た日仏禅文化の違いや、それぞれの問題点。そして両者の未来への願いについて、みなさんにお伝えできればと思います。


流浪するサンガ「サン・デムール」について


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(写真:サン・デムールのメンバー)


私が参加した摂心はフランス北西部のRadinghem(ラディンヘム)という田舎町で7月30日(土)から8月13日(土)にかけて開催され、私は最初の一週間に参加しました。摂心とは食事と僅かな睡眠以外は一日中坐禅をする禅宗の行持[※行事のこと]です。日本でも永平寺では2月と12月に、総持寺では6月と12月に一週間程かけて大きな摂心が行われています(曹洞宗両本山の場合)。一方、フランスでは各地にサンガがあり、それぞれが月に何度も数日間の短い摂心を行っています。

 

今回の摂心を主催したのは「sans demeure(サン・デムール)」というサンガで、「特定の拠点を持たない」という意味です。 サン・デムールでは主にフランス人とドイツ人のメンバーが普段は別の仕事に就きながらサンガの運営を行っており、毎年夏にはフランスとドイツで交互に摂心を行っています。Reiryu Philippe Coupey(霊龍フィリップ・クーペイ)老師が指導者を務められたこの摂心には、サンガのメンバーとネットの告知を見た一般参加者で合わせて200名ほどが参加していました。


摂心ではフランス語とドイツ語が主に使われており、フィリップ老師がフランス語で行う口宣(くせん)[※坐禅中の法話]もドイツ語の同時通訳が行われていました。私は英語も片言で海外での坐禅経験もなかったのですが、通訳を一人つけていただいたお陰でなんとか彼らの一員として参加することができました。


サンガでははじめての日本人参加者で、しかも僧侶ということで受け入れにも戸惑があったようです。それにも関わらず様々な点でご配慮してくださったフィリップ老師とサンガの皆さん、そして滞在期間中、毎日たった一人を相手に翻訳を続けてくださったGuy(ギ)氏に、この場をお借りして多大な感謝を申し上げたいと思います。そして今後とも親密な交流をさせて頂けたら幸いと存じます。


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(写真:霊龍フィリップ・クーペイ老師)

 

一日の流れ


まず日程の一例を見て摂心のおおまかな流れを把握して頂ければと思います。このサンガは曹洞宗の流れを汲んでいるため、大筋は曹洞宗修行道場での日課に則していますが、細部はフランス流(もしくはこのサンガ流)にアレンジされています。



06:00     振鈴(しんれい)[※起床]
06:30〜07:10 暁天坐禅(きょうてんざぜん)・一炷目
07:10〜07:20 経行(きんひん)[※歩く坐禅]
07:20〜08:00 暁天坐禅・二炷目
08:00〜08:20 朝課(ちょうか)[※朝のお務め]「般若心経・本尊上供、他」
08:30〜09:00 小食(しょうじき)[※朝食、粥と胡麻塩]
09:00〜09:30 歓談[※カフェタイム]
09:30〜10:30 作務(さむ)[※掃除や各種準備]
11:00〜12:00 坐禅


12:30〜13:00 中食(ちゅうじき)[※昼食、玄米や野菜など]
13:00〜13:30 歓談
13:30〜14:30 昼寝[※シエスタ]
14:30     振鈴
15:00〜16:00 作務


16:30〜17:10 坐禅・一炷目
17:10〜17:20 経行
17:20〜18:00 坐禅・二炷目
18:30〜19:00 薬石(やくせき)[※夕食、玄米や野菜など]
19:30〜20:00 歓談
20:30〜21:30 夜坐(やざ)
21:30〜22:00 晩課(ばんか)[※夜のお務め]「大悲心陀蘭尼・四誓願文、他」
22:30     開枕(かいちん)[※消灯]


一読して、食後にカフェタイムやシエスタがあることに、驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、 日本でも一般向けの坐禅会では茶話会が設けられていますし、カフェタイムはお互いが交流し意見交換するとてもいい機会だと思います。わたしは初めての海外での坐禅経験ということもあり、知らない事だらけだったのでとても貴重な時間になりました。


また、昼食後には一時間半ほどのシエスタ(仮眠)をとるのですが、これも坐禅に集中する為には効果的でした。 仏教の教えはそれぞれの土地の慣習を取り入れながら広がってきたものですから、このようにそれぞれの文化に合うようにアレンジするのも悪いことではないと思います。


禅僧が見たヨーロッパ禅の今、フランス摂心レポート(2/3)」へ続く。


虚空山彼岸寺 (こくうざん ひがんじ)
>>プロフィールを読む 超宗派仏教徒によるインターネット寺院虚空山彼岸寺です。