ティク・ナット・ハン師のメッセージ「東日本大震災から100日を経て」

ティク・ナット・ハン師のメッセージ「東日本大震災から100日を経て」

3月11日に発生した東日本大震災より、6月18日で100日が経過しました。仏教では人が亡くなってから100日目のことを、泣くことを辞める日として、卒哭忌(そっこくき)という法要を営む習慣があります。


このひとつの区切りの時に、フランスのプラムヴィレッジよりティク・ナット・ハン師のメッセージが届きました。100ヵ日にあたり、プラムヴィレッジでもお菓子などお供えして供養が執り行なわれたそうです。以下に掲載させていただきますので読みいただき、どうぞ周りの方にお伝えください。


*****


日本の東北地方が津波に襲われてからちょうど3ヶ月経ちました。呼吸に精神を集中して、自分に立ち返り、あの大震災の直接の被害を受けた方々と心をひとつにしましょう。


震災を生き延びた被災者の方々に対し、「私たちは皆さんを応援しています。苦しみを共にしています。私たち自身が希望を失わないためにも、皆さんの勇気と忍耐が必要なのです」と伝えましょう。ベトナム戦争の時、私も絶望ぎりぎりの状況を何度もくぐらざるを得ませんでした。南北ベトナムを分けていた非武装地帯(DMZ)にほど近いチャー・ロック村は、戦争の相手方に一時占領されていたというだけの理由で、米軍の爆撃を受け破壊されましたが、我々の仲間である若い出家と在家の仏教ソーシャルワーカーたちにより再建されました。


ところが、再建されたそばから、村は二度目の爆撃を受け、再び破壊されてしまいました。「また村を建て直すべきなのでしょうか?」と、若者たちは私に尋ねました。「その通り。また建て直さなければ」と私は答えました。チャー・ロック村は結局五回破壊されそのつど我々は建て直しました。絶望に打ちのめされてしまわないためには、そうすることが必要でした。若者たちは私にこう尋ねました。


「タイ(先生)、戦争はいつか終わると思いますか?」


戦争が終わるきざしは、全くありませんでした。トンネルの先に明かりは見えませんでした。でも我々自身を絶望から守るため、私はこう答えました。


「皆さん、永遠に変わらないものは何もない(無常)、とお釈迦様はおっしゃいました。戦争も同様(無常)です。永遠に続くことはあり得ません。いつの日か終わります。お釈迦様を信じましょう」


被災者の皆さん、希望を失わないで下さい。皆さんが精一杯生きていることを私たちは知っています。自分自身のためだけでなく、皆さんの子供たちのため、国民のため、そして私たちのためにも。希望を必要としているのは、私たちも同様です。皆さんの勇気と思いやりが、人間性と希望を我々が保ち続ける助けになるのです。皆さんは、とてもつらい状況におられると思います。しかし世界中が皆さんのそばにいます。私たちも皆さんのそばにいます。津波は我々みなを襲いました。


皆さんは、ろうそくの炎です。熱い炎です。そしてその熱は、母なる地球が我々に助けを求めていることを気づかせてくれます。その光は、我々すべてのために、皆さんが輝かせてくれているのです。我々は、暗闇と迷いの境地に引きずり込まれないため、その光を必要としています。皆さんは仏の子です。神の子です。皆さんの慈悲と勇気で皆さん自身を導いてください。我々は皆さんを必要としています。そして我々もあらゆるやり方で皆さんのために在るよう努力します。


世界中のみなさん、自分の呼吸に立ち返りましょう。呼吸に精神を集中して、今何が起きているのかに気づきましょう。そして人間らしく生きていくことに最善を尽くしましょう。


ティク・ナット・ハン(釈一行)


松下弓月 (まつした ゆづき)
>>プロフィールを読む 1980年神奈川県生まれ。真言宗僧侶。福生山宝善院で副住職をしながら虚空山彼岸寺では編集長を務める。国際基督教大学卒、青山学院大学大学院文学研究科英米文学専攻博士前期課程修了(文学修士)。好きなものは、映画、温泉、怪談、自転車。