去る年

去る年

2016年もあと僅か。皆さまはどんな年の瀬を過ごされているでしょうか。

さて、毎年恒例のこの一年の世相を表わす「今年の漢字」。すでに発表されているようですが、なんだか今年はあまり話題になっていなかったような......私も調べるまで、知りませんでした。2016年の漢字は、「金」だそうです。うーん、リオ五輪があったことが大きかったようですね。

しかし個人的に今年一年を振り返るなら、「乱」という漢字が、2016年を表わすに相応しいような気がしました。イギリスのEU離脱、ドナルド・トランプがアメリカ大統領に、などなど、世界的に見ても、これまでの時代の流れに逆行するかのような、大きく乱れた一年となってしまいました。

そして国内のニュースに目を向けても、災害が相次いだことは、地球環境の乱れを感じずにはおれませんし、東京オリンピックや築地問題の乱れぶり、某週刊誌のスクープ連発ということからは、倫理観の乱れもよくよく感じられたことでしょう。

また多くの大物ミュージシャンの訃報も相次ぎました。プリンスにデヴィッド・ボウイ、そして12月に入って、L⇔Rの黒沢健一さん、さらにはジョージ・マイケルの死も先日報じられました。大好きなミュージシャンの死というものは、本当に辛く悲しく、寂しいもの。心を大きくかき乱された人も多かったのではないでしょうか。

諸行無常のこの世界、物事は常に変化の中にあり、縁によってはどんなことが起こるかわからない、ということを、まざまざと感じた、そんな一年でした。

でも、諸行無常という事柄は、決してネガティブな意味だけを持つものではありません。

我が家を見れば、生まれて一年を過ぎた次男が言葉らしきものを発するようになり、もうすぐよちよちと歩き出すようになりました。長男は保育園に通い始め、かなり我を張るようになってきましたが、話す言葉や運動能力の成長には驚かされることもしばしば。このような成長もまた、諸行無常の一側面です。

同じように、ニュースの向こう側だけでなく、身の回りのことを振り返ると、どうでしょう。泣いて、笑って、怒って、誰かを好きになったり、嫌いになったり。幸せを感じたり、悲しい思いをしたり、この一年、誰にとってもきっといろんな出来事があって、いろんな感情と共に過ごしてきた一年だったことでしょう。良いも悪いもいろいろあって、場合によってはその「良し悪し」の価値観だったり、過去の出来事の意味合いさえも変わった、ということさえあるかもしれません。それもまた、諸行無常だからこそ。そんなふうに考えてみると、諸行無常という事柄も、突き離すような冷たい教えではなく、どこか身近なものとして感じられるようにも思います。

この一年も、そんな視点から見つめ直すと、どこか名残惜しく感じられるかもしれません。できることならゆっくり丁寧に振り返りつつ、また次の一年を迎えたいものですね。

今年一年、彼岸寺にお参りいただきまして、ありがとうございました。どうぞ皆さま、良いお年をお迎えくださいませ。

南無阿弥陀仏


日下賢裕 (くさか けんゆう)
>>プロフィールを読む 1979年、石川県生まれ。浄土真宗本願寺派の僧侶、布教使。 広島大学人文学部東洋史学科卒業後、本願寺派の教育機関である中央仏教学院、伝道院にて仏教を学ぶ。 現在は故郷の山中温泉にて、本願寺派の若手僧侶が作るサイト「メリシャカ」や「彼岸寺」との関わりを通して、仏教を外に発信するとともに、地元の人たちに愛されるお寺作りに挑戦中。