彼岸寺 in フジロック!?

彼岸寺 in フジロック!? 9月に入り、朝晩は随分過ごしやすくなりましたね。
今週は何があったんだっけ、とiPhoneで撮った写真を振り返っているとかき氷の写真が何枚か。実は今も大森のデニーズで宇治金時を食べながら日々是を書いております。だけど最近夜は涼しいもんだから、すっかり体が冷えちゃいました。夏ももう終わりですね。さて、この文章、日々是のつもりで書いたのですが、これは向源日記のほうでもいいやつだな、と思い向源日記としてアップさせていただきます!

[夏の思い出]

今年の夏を振り返って、最大の思い出は初めてフジロックに行ったことです。
僕は向源という仏教フェスを主催しています。いずれはコレをフジロックのような大規模なフェスにしていきたいと思っていました。で、三年目を迎えて色々と現実が見えてきた結果、フジロックになるのは結構難しいなと。だったらフジロックに出てみよう。と思い立ったんです。

フジロックの会場内に1ブースとして机を出そうというのではなく、「虚空山彼岸寺」を大きなテントで建ててしまおう。フェス会場にお寺を建てよう!来場者の皆さんが自由に参加できる朝のお勤めをやって、掃除をして、坐禅をして、朝のお粥をみんなで食べて。日中は"いただきます"をちゃんと言う形で精進料理を提供したり、30分ほどで出来る坐禅体験を山や川で。また、死の体験旅行などの仏教的なワークショップを実施して、日が暮れるのと共に夕座のお勤め。みんなでお経を読んで、素敵な夜を、と見送る。そんなお寺のライフサイクルをフジロックに持ち込んだら、フジロックに新しい楽しみ方が加わるんじゃないか。そして三日間で何万人もの人が仏教に親しみや興味を持ってくれるんじゃないか。もしそれが他のフェスにも波及して、日本のロックフェスには仏教のブースが有るのが当たり前になったら、それは日本の若者たちの夏の思い出に小さいながらも大きな変化を生むことになるんじゃないか。なんだかワクワクしません?

そんな大きな野望を胸に、日帰りで金曜日にフジロック視察に行ってまいりました(土日は法事が入っているのです!)。

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さて、結論から言いますと、僕のフジロックに彼岸寺を建てようプロジェクトは見事に「無し」になりました。

そもそもなんでフジロックになりたかったのか?
現在Web上であらゆるものが無料で提供されるようになりました。お金を使わないで、家から出ないでソレナリに楽しく生活できるようになっています。結果として、若者がお金を使って足を運んでくれる場所は減りました。ライブハウスも、遊園地も、ゲームセンターもカラオケも、ボーリング、スキー、海、どこも閑散としています。
そんななか、唯一場所も来場者も増えているのが、コミケとロックフェス、そして最近はニコニコ超会議です。これらに共通するのは単なる音楽イベント、同人誌即売会で終わらず、そこに個々人のライフスタイルが密接に組合わさり、更にその場を体験することで普段味わえない価値観の転換がある点です。
価値観を揺さぶるような体験に若者はお金を払って(=価値を感じて)アクションを起こしてくれます。そんな風に、参加者の価値観をゆさぶる仏教的な深い体験を提供することを目指してきたのが"向源"でした。

仏教体験の多くに共通することは「今」に集中して生きる。という点だと思っています。坐禅も、天台ではただ坐ること、呼吸することに集中し、過去や未来にとらわれず"今をしっかり生きること"を説きます。死の体験旅行でも、今の自分がどれだけの縁に恵まれて生きているのかを気づかせてくれます。過去の失敗や未来の不安、他人の成功に振り回されず、気付いていないだけで十分に恵まれている自分と周りとの縁に感謝して精一杯生きることを教えてくれます。変えられない過去、先回りできない未来、羨むだけの他人の成功。そんなしょうもないことにとらわれないで「今を生きよう」と言っています。
で、フジロックに行ったらそこにはすでに感覚的に「今を楽しむ」ことの全てが詰まっていました。暑くなったらビールを飲んで、太陽と青空と山の緑の中で仲間と音楽を聴き、汗を流す、飯を食う。雨が降ったらカッパを着て、体に当たる雨粒の感触や雨音を楽しみながら山を歩いたり、景色を楽しんだり、音楽を感じる。24時間、変わりやすい天気の中、頭を空っぽにして感覚だけで。Yeahと言われたらYeahと答え、手拍子を打ち、歓声を、叫び声を上げる。飛び跳ねる。
そんな世界で今更「仕事や家事に追われていたり、考えてもしょうがないことでくよくよしていませんか?食事を雑にとってしまっていませんか?」とか言われてもクソめんどくさいです。それに山の中を歩き通しでクタクタです。坐禅を組んで息を整えて、姿勢を整えて、心を整えて15分じっとしてるなんて余力ありません。出来るだけ横になりたいし足を放り出して座りたいです。

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フジロックに仏教はどうやったら参加する意味を作れるだろう。そんなことを終始考えてみましたが、考えれば考えるほどこの大自然と素晴らしい音楽の中で、仏教はめんどくさかった。
僕がやっている仏教体験による癒しや価値観を揺さぶるという行為は、日常の苦しみが隣り合わせに有る場所でこそ意味があるんだなという発見がありました。苗場のこの大自然の中では無く。銀座のど真ん中で、お台場で、品川にこんな静かなお寺が、東京からすぐの鎌倉にこんな素敵なお庭が。毎日の延長線上にある意外性と非日常の中でこそ効果があるんだ。それは向源でお世話になった華道家の先生の言葉とも通じるものが有りました。

「華道は屋内でやらないと負ける。
庭園や大自然の中では、そこに生えている木や山、花、枯葉のほうが絶対に力がある。」

ということで、彼岸寺inフジロックと言ってみたのですが友光の中では仏教体験(ワークショップ)コンプレックスは都市型イベントなんだなぁと思い知りました。といっても、比叡山の山歩きだったり、山の音を感じながらの坐禅も本当に素晴らしいです。修行中の山の中での体験のほうが魂を揺さぶられました。ただそのときは周りの刺激をそぎ落として行った中での良さだったので、刺激に溢れたフェス会場でってのはやっぱ厳しいなあとも感じています。

さてでは、彼岸寺が提供する都市型仏教フェスをやるとしたら何が出来るだろう。フェスまで行かなくても、定期的に開催していくようなイベントは何かできないだろうかといろいろと考えているところです。ただフジロックは本当に最高の現場で、FlyingLotusのライブで三回泣きました。来年も絶対行こうと思うし、いずれはお客さんとしてじゃなく何かを提供する側として参加できたら最高だなぁと思っています。

次回の向源だよりでは、ひとつのケースとして、都市型なイベントのお知らせができると思います。ご期待ください。

今日の1曲。
Major Lazer - Get Free ft. Amber of the Dirty Projectors
The夏の思い出ってかんじの曲。



友光雅臣 (ともみつ がしん)
>>プロフィールを読む 1983年生。大正大学卒。2008年天台宗比叡山での修行を終え、東京・常行寺の僧侶になる。2011年より音楽を軸とした仏教総合イベント『向源』2012年に対話イベント『お寺で対話する夜』神職と僧侶の勉強会『神仏和合』を開催。