帰国

帰国
ISBを卒業して、もうすぐ2ヶ月ほどになる。にもかかわらず、引越の荷物はまだ届かない。震災の混乱でいつもより余計に時間がかかっているらしい。

卒業後、2週間ほどイタリア(と少しだけパリ)を旅行した。トランジットで寄ったドバイでは砂漠の中の高層ビル群を見たが、なんだか無味乾燥で、街の魅力が感じられなかった。その点、イタリアはよかった。ローマなどは街全体が遺跡のようで、歴史と文化が圧倒的だった。初めて訪れたパリは、予想していたよりも断然おもしろく、都市としての奥深さに感嘆した。でも、1年間もインドに住んでいたので、文化に対する「驚き」という点では、それほどでもなかった。きっと日本から行くのとはまた違った印象をヨーロッパに抱いたのに違いない。交通費節約のためにパリから日本へはロシアのアエロフロートに乗ったが、噂に聞く以上の揺れで、着陸の瞬間まで翼が地面に着く角度まで大きく左右に揺れており、死ぬかと思った。

久しぶりの日本、ぽかぽか陽気の中、電車で眠りこけるお年寄りたち、ランドセルを背負って下校する子供たち、などを眺めているとほのぼのとした気分になり、日本に帰ってきたんだなぁという実感が沸いたが、ふとその平和な日常に覆い被さる目に見えない放射線の脅威のことを思うと、空恐ろしさも感じた。メディアなどに目を遣っても、「がんばろう」ばかりで、ビジョンが見えない。でも、人のせいにしてはいけない。日本人として、自分の持ち分の中で、ビジョンを持って一歩一歩積み重ねていくところからはじめたい。

今は留学前と同じく、光明寺の執事という仕事に戻っている。1年間、マネジメントを徹底的に勉強したおかげで、そちら方面のスキルと知識はそれなりに身に付いたと思う。それを踏まえて今思うことは、何はなくとも、まず基本が大事、ということだ。帰国後、お会いする人から「何かまた新しいことを始めるんですか?」と聞かれるが、今はまず基本に立ち返って、お寺としてお坊さんとしてもっとも大事な部分を一から取り組み直していきたい。マネジメントうんぬんよりもまず、仏教のお坊さんとして自分の思考や行動や生活を整えること。そして、人の心を大切にすること。恥ずかしながら昔はぜんぜんやらなかった境内の掃除なども、自分の心がすっきりとするように、そしてお参りに来てくださる方が気持ちよく過ごせるようにと、一生懸命やるようにしている。MBAのおかげで、何が本当に大事なことか、が良く見えるようになったように思う。

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これまで応援してくださった皆さん、どうもありがとうございました。みなさんからの応援のおかげで、無事にMBAを取得すること、そしてインドという異文化の中で貴重な人生経験を積ませていただくことができました。この成果をこれからは日本のお寺・仏教・社会のために活かしてさらに精進して参りたいと思います。また今後とも、応援よろしくお願いします。

(※このブログは、今回の記事をもちまして、いったん終了とさせていただきます)


松本紹圭 (まつもと しょうけい)
>>プロフィールを読む 1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。一般社団法人お寺の未来理事。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。Indian School of BusinessでMBA取得。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。2013年、世界経済フォーラム(ダボス会議)のYoung Global Leaderに選出される。著書多数。近著に『お寺の教科書-未来の住職塾が開く、これからのお寺の100年-』(徳間書店)。