卒業

卒業 最終学期、終了。1年間のインド修行がついに終わった。
明日は卒業式、そして明後日にはインドを発つことになる。

最終試験が終わってから卒業式まで少しはゆっくりできるかと思ったら、
引越やらビザやらの手続きで忙しくなってしまい、
こまごまとした作業に終われているうちに卒業式直前になってしまった。

ISBが交渉した4社の引越業者からMaxwellという会社を選んだのだが、
インドとは思えないくらいちゃんとした会社で、来る時間も正確だし、
日本への引越に関しても知識がちゃんとあるし、梱包も丁寧でしっかりしていて、
わざわざここで書きたくなるくらいよい業者だった。
ハイデラバードからの引越なら、ぜひここもひとつの選択肢にどうぞ。

友だちや先生、会いたい人にはなるべく会うように頑張っているものの、何しろ日にちがない。
昼・夜・昼・夜と食事の予定が入っているが、それでもぜんぜん足りない感じだ。

会うインド人皆から、
「今、日本は大変だから、まだインドに留まったほうがいいんじゃないか」と言われる。
田舎の家が空いているから、しばらくそこに住んだらいいとか言ってくれる人もいる。
まさかインドから日本に帰るときに
「水道の水は飲まないようにしてね」
「生野菜はなるべく避けてね」
などのアドバイスをインド人からもらうことになるとは思ってもみなかった。

地震後の日本、今の時期に帰国するのは心配もある。
水道や大気の放射能汚染とか、小さな子どもがいるので特に心配だ。

インドから日本の現在の「雰囲気」を把握するのは難しい。
ネットでの情報を見ていれば日本語が読めさえすれば日本で出回っている状況が分かるし、
そこで分からないようなことは日本にいる日本人でさえ分からないということだ。
ただ、それでも、町の雰囲気とか、そういう微妙なものは日本に帰ってみないと分からない。
でも「雰囲気」が実際の安全を決めるわけじゃないので、
雰囲気に惑わされにくい海外から事態を見ていたほうが
客観的に状況を把握できるような気もするのだが。

インドでひとつ学んだことといえば、
自分の身と家族の安全は最後の最後、自分で守るしかない、ということだ。
見るからに信用できない政府のおかげで、
世界はとんでもなくいい加減な人たちによって回されているんだということを、
インド人は皆知っている。
日本の場合はそういう人たちが見た目はみんな
ちゃんとしてそうに見えるから質が悪いと言えるかもしれない。


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しかし気づけば自分もMBAか。
とにかくまずは無事に卒業できてよかった。
学校が始まるまでは、お寺で働いた経験しかないのにビジネススクールの
勉強についていけるかやや心配もあったが、
始まってみればぜんぜんそんなことは問題なかった。
MBAの前後で何が変わったかと言えば、
経営に関する問題解決において、もちろん個々の問題に即して
解決方法はそれぞれ異なるので「解決方法を知ってます」とは言えないのだが、
今は「どのあたりに問題のコアがあって、解決方法を考えるにあたっては
この辺りのポイントを注意してみるといいですよ」ということは言えるようになったと思う。
これは小さいようで、けっこう大きな違いだ。

ビジネススクールといっても経営は非営利組織にだって必要なものだし、
どんなに小さな組織においても目的達成のためには欠かすことができない。
この一年間、常に「お寺」を念頭に置きながら
2時間×10コマ×4講義×8学期=640時間の講義に参加したわけだ。
加えてその倍くらいの時間を課題や試験の勉強に費やしてきた。
すでに頭の中には、お寺でこれからやりたい具体的なアクションプランがいくつか描かれている。

あとは実践、実戦あるのみ。
お坊さんとして人の心を支えるあらゆる仕事を、
MBAホルダーとして最大限効率よく効果的に持続可能なかたちで実現すべく、
日本に帰ってまた頑張りたいと思います。
みなさま、今後ともご指導のほどよろしくお願いします。

松本紹圭 (まつもと しょうけい)
>>プロフィールを読む 1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。一般社団法人お寺の未来理事。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。Indian School of BusinessでMBA取得。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。2013年、世界経済フォーラム(ダボス会議)のYoung Global Leaderに選出される。著書多数。近著に『お寺の教科書-未来の住職塾が開く、これからのお寺の100年-』(徳間書店)。