インドから願いを込めて

インドから願いを込めて インドでも日本の震災は連日トップニュースで報じられている。
2004年のスマトラ沖地震・大津波ではインドでも万人単位の犠牲者が出たので、
津波の恐ろしさは多くのインド人の記憶にも刻みこまれている。
ISBでも多くの学生から、事務局のスタッフから、学長までが、
日本人の私に心配の声をかけてくれている。

※インドからは祈ることしかできませんが、
被災者の皆さんに心より哀悼の意を表します。
また、ここ彼岸寺ではいつもインターネットを通じて日本の仲間たちと
仕事ができる環境になっているので、事務的な仕事で
私もインドから出来る限りの後方支援を行いたいと思っています。

私が聞いた限りでは、震災当日、東京では帰宅困難者に対して
いくつかのお寺が休む場所を提供して暖をとってもらう活動を行ったそうだ。
うちの光明寺でも近隣で働く数名の方が一晩を過ごしたというし、
築地本願寺など大きなお寺でもかなりの規模で帰宅困難者を受け入れたという。
今回の震災のような非常時に困ったときには誰でも、
通りがかりのお寺に相談するのも、
ひとつの選択肢として思い浮かべていただきたい。

ところで最近にわかに言われるようになった「輪番停電」だが、
英語ではRolling Blackoutsなどと言われており、
インドでは慢性的に電力の足りない都市圏を中心に、
緊急時でなくとも日常的に行われている。
地域によっては一日に10時間とか20時間とか、
電気の来ない時間のほうが長いようなケースもある。
真夏の暑いときなどエアコンによって電力がたくさん消費されるため、
昼間の最も暑い時間帯に輪番停電が行われたりする。
そんなとき、暑すぎて仕事にならないため、仕事をしないインド人も多い。
皆、家で寝たり、木陰で昼寝をしたりして、
電気が復旧する&暑さが和らぐ夕方になるのを待つ。
農家の人は、早朝に働いて、昼は寝て、また、夕方に働く。

とはいえ、IT系の人などはアメリカやヨーロッパのグローバル企業と
仕事をしているわけなので、そういうわけにはいかない。
でも、公共のインフラは信頼できないから、自家発電をする。
うちの学校ISBも、隣りのマイクロソフトも、
敷地内に巨大な発電機を置いて、24時間態勢で自家発電している。
インフラがしっかりしていない国では、何事も自分でまかなわなければならない。
ニュースでHondaが発電機と燃料を大規模に被災地に提供すると聞いた。
組織のしっかりした企業からのまとまった支援は
現地にとってかなり役に立つのではないかと期待している。

私はインドに初めてきたとき、
計画停電が行われていることに驚いたが、
それがまさか東京でも行われることになるとは思いもしなかった。
インドのように慢性的に電力不足であれば、
電力がなくても暮らしが成り立つ仕組みが自然にできあがるが、
日本のようにインフラが完璧に整った国では、
インフラの信頼性を前提として社会が動いている。
電気が来なければ命に関わる人がたくさんいる。
まだ冬の寒さが残る雪国でのエネルギー枯渇はなおさら深刻だ。
まずは一刻も早く、ライフラインとしての
電力が必要な人のところに届くよう願っている。

※改めて、このたびの災害によって命を落とされた方々に
哀悼の意を表しますとともに、被災された方々ならびに
ご遺族を始めとする皆さまに心からお見舞い申し上げます。
そして、現場入りされて災害との戦いに連日奮闘されている
救援活動者の皆さまに、心より応援と感謝の念を送ります。

松本紹圭 (まつもと しょうけい)
>>プロフィールを読む 1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。一般社団法人お寺の未来理事。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。Indian School of BusinessでMBA取得。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。2013年、世界経済フォーラム(ダボス会議)のYoung Global Leaderに選出される。著書多数。近著に『お寺の教科書-未来の住職塾が開く、これからのお寺の100年-』(徳間書店)。