インドでの子育て

インドでの子育て

ちょっと硬い記事が続いてしまったので、インドでの子育てについて少し書いてみよう。

インドに行くとお腹を壊したり病気になったりするというのはよく言われることだし、私たち夫婦も過去に何度かのインド旅行の最中に下痢をしたり病気にかかったりした経験もある。
インターネットで調べてみると、「インドは世界的に最後のポリオ汚染地域」とか「インドは感染症の宝庫です。この亜大陸にはこの世に存在する感染症のほとんど全てが存在すると言っても過言ではありません」とか書かれているので、余計に不安だ。

とは言っても学校の施設はインドとは思えないほど整っているし、心配すればきりがない。「インドに1歳児(当時)を連れて住むのって、実際のところどうなんだろう」と不安な面もあったが、できる限りの予防接種を済ませて、とにかく来てみた。

住んでみれば、それほどのことはなかった。もうインドで1年ほどになるが、2歳になったガンガーは至って元気にすくすくと育っている。たまに風邪をひくことはあるが、大きな病気や怪我はひとつもしていない。目に見えるのは、こちらへ来たばかりの頃に集中砲火を浴びてしまった虫さされの痕が足に少し残っていることくらいだ。

食べ物もについても、あまりおかしなものは食べないようにある程度は気をつけているものの、ふつうに外食もするし、フルーツジュースや生野菜を口にすることもある。でも具合が悪くなるようなことはない。

いつも困るのは、毎回期末休みの旅行の度に、私の具合が悪くなることだ。インド人に聞くと、インド人でも旅行すると「水の違い」で具合が悪くなるということなので、無理もない。都市では排気ガスもなかなかつらい。先日のジャイプールの旅行では、おそらく旧市街近くのラッシー屋で飲んだ(食べた、と言ったほうがいいくらい濃厚だった)ラッシーがいけなかったのだろう、夫婦共に腹痛と嘔吐に見舞われた。しかし、少量とはいえ同じラッシーを食べたガンガーはいつもと変わらず至って元気だ。そういえば旅行に行っても体調を崩すのは決まって大人だけ。ガンガーの2年の人生のうち、すでに半分をインドで過ごしているわけなので、もはや免疫システムがインド人化しているのだろうか。そういう意味では子どもは日本で大事大事に育てるよりも、インドでもまれたほうが強い子になるかもしれない。


子育てといえば、ガンガーは週に一度のジンボリーがお気に入りだ。週に1度、お母さんに連れられて遊具のある施設で1時間のプログラムで遊ぶのだが、滑り台に登ったりシャボン玉を追いかけたり音楽に合わせてダンスをしたりと、子どもなりに楽しんでいる。

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アメリカのプログラムを英語でそのままインドでやっているのだが、来ている子どもの両親はグーグルとか大手企業に勤務しているようなアッパークラスのインド人が多い。アメリカっぽくやや大げさな先生の身振り手振りなどには、みんなそれほど協力的ではない様子だったりする。

そもそもアメリカのプログラムをインドにそのまま当てはめようとすることにも、少し無理がある。例えば、プレイジムを大型バスに見立てて遊ぶとき、先生が「ほら、このバスはずいぶん汚れているね。みんなでタオルを持って、ごしごしクリーンアップしよう!」と子どもに呼びかけても、「どうしてうちの子が車の掃除なんかしなくちゃいけないの、そんなのはドライバーのする仕事でしょう」という感じで、親たちはあまり子どもに掃除のまねをさせたくないようだった。

他にも、先生が赤と緑の布を交互に見せて「これは信号だよ。赤は、止まれ。緑は、走れ。それ行け!」とかやっているのだが、信号が緑でも赤でも関係なく交差点に車が突っ込むハイデラバードの交通事情からすると、あまり説得力がない。

まぁ、いろいろ大変なこともありますが、それなりにインドで子育てはやってやれないこともない、です。


松本紹圭 (まつもと しょうけい)
>>プロフィールを読む 1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。一般社団法人お寺の未来理事。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。Indian School of BusinessでMBA取得。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。2013年、世界経済フォーラム(ダボス会議)のYoung Global Leaderに選出される。著書多数。近著に『お寺の教科書-未来の住職塾が開く、これからのお寺の100年-』(徳間書店)。