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その後

その後、東京の光明寺に戻り、お坊さん生活を再開しております。
光明寺では神谷町オープンテラスなどやっておりますので、どうぞみなさま、お気軽にお参りくださいませ。

ところでブログとしては、彼岸寺の英語版「KNOM」にて、"Everything but nirvana"というブログを書き始めました。
英語で日本のお坊さんの日常を伝えていこうという内容です。
10月に入って公開したのですが、なるべく頻繁に更新していこうと頑張っております。

どうぞみなさま、よろしくお願いいたします。

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帰国

帰国
ISBを卒業して、もうすぐ2ヶ月ほどになる。にもかかわらず、引越の荷物はまだ届かない。震災の混乱でいつもより余計に時間がかかっているらしい。

卒業後、2週間ほどイタリア(と少しだけパリ)を旅行した。トランジットで寄ったドバイでは砂漠の中の高層ビル群を見たが、なんだか無味乾燥で、街の魅力が感じられなかった。その点、イタリアはよかった。ローマなどは街全体が遺跡のようで、歴史と文化が圧倒的だった。初めて訪れたパリは、予想していたよりも断然おもしろく、都市としての奥深さに感嘆した。でも、1年間もインドに住んでいたので、文化に対する「驚き」という点では、それほどでもなかった。きっと日本から行くのとはまた違った印象をヨーロッパに抱いたのに違いない。交通費節約のためにパリから日本へはロシアのアエロフロートに乗ったが、噂に聞く以上の揺れで、着陸の瞬間まで翼が地面に着く角度まで大きく左右に揺れており、死ぬかと思った。

久しぶりの日本、ぽかぽか陽気の中、電車で眠りこけるお年寄りたち、ランドセルを背負って下校する子供たち、などを眺めているとほのぼのとした気分になり、日本に帰ってきたんだなぁという実感が沸いたが、ふとその平和な日常に覆い被さる目に見えない放射線の脅威のことを思うと、空恐ろしさも感じた。メディアなどに目を遣っても、「がんばろう」ばかりで、ビジョンが見えない。でも、人のせいにしてはいけない。日本人として、自分の持ち分の中で、ビジョンを持って一歩一歩積み重ねていくところからはじめたい。

今は留学前と同じく、光明寺の執事という仕事に戻っている。1年間、マネジメントを徹底的に勉強したおかげで、そちら方面のスキルと知識はそれなりに身に付いたと思う。それを踏まえて今思うことは、何はなくとも、まず基本が大事、ということだ。帰国後、お会いする人から「何かまた新しいことを始めるんですか?」と聞かれるが、今はまず基本に立ち返って、お寺としてお坊さんとしてもっとも大事な部分を一から取り組み直していきたい。マネジメントうんぬんよりもまず、仏教のお坊さんとして自分の思考や行動や生活を整えること。そして、人の心を大切にすること。恥ずかしながら昔はぜんぜんやらなかった境内の掃除なども、自分の心がすっきりとするように、そしてお参りに来てくださる方が気持ちよく過ごせるようにと、一生懸命やるようにしている。MBAのおかげで、何が本当に大事なことか、が良く見えるようになったように思う。

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これまで応援してくださった皆さん、どうもありがとうございました。みなさんからの応援のおかげで、無事にMBAを取得すること、そしてインドという異文化の中で貴重な人生経験を積ませていただくことができました。この成果をこれからは日本のお寺・仏教・社会のために活かしてさらに精進して参りたいと思います。また今後とも、応援よろしくお願いします。

(※このブログは、今回の記事をもちまして、いったん終了とさせていただきます)

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卒業

卒業 最終学期、終了。1年間のインド修行がついに終わった。
明日は卒業式、そして明後日にはインドを発つことになる。

最終試験が終わってから卒業式まで少しはゆっくりできるかと思ったら、
引越やらビザやらの手続きで忙しくなってしまい、
こまごまとした作業に終われているうちに卒業式直前になってしまった。

ISBが交渉した4社の引越業者からMaxwellという会社を選んだのだが、
インドとは思えないくらいちゃんとした会社で、来る時間も正確だし、
日本への引越に関しても知識がちゃんとあるし、梱包も丁寧でしっかりしていて、
わざわざここで書きたくなるくらいよい業者だった。
ハイデラバードからの引越なら、ぜひここもひとつの選択肢にどうぞ。

友だちや先生、会いたい人にはなるべく会うように頑張っているものの、何しろ日にちがない。
昼・夜・昼・夜と食事の予定が入っているが、それでもぜんぜん足りない感じだ。

会うインド人皆から、
「今、日本は大変だから、まだインドに留まったほうがいいんじゃないか」と言われる。
田舎の家が空いているから、しばらくそこに住んだらいいとか言ってくれる人もいる。
まさかインドから日本に帰るときに
「水道の水は飲まないようにしてね」
「生野菜はなるべく避けてね」
などのアドバイスをインド人からもらうことになるとは思ってもみなかった。

地震後の日本、今の時期に帰国するのは心配もある。
水道や大気の放射能汚染とか、小さな子どもがいるので特に心配だ。

インドから日本の現在の「雰囲気」を把握するのは難しい。
ネットでの情報を見ていれば日本語が読めさえすれば日本で出回っている状況が分かるし、
そこで分からないようなことは日本にいる日本人でさえ分からないということだ。
ただ、それでも、町の雰囲気とか、そういう微妙なものは日本に帰ってみないと分からない。
でも「雰囲気」が実際の安全を決めるわけじゃないので、
雰囲気に惑わされにくい海外から事態を見ていたほうが
客観的に状況を把握できるような気もするのだが。

インドでひとつ学んだことといえば、
自分の身と家族の安全は最後の最後、自分で守るしかない、ということだ。
見るからに信用できない政府のおかげで、
世界はとんでもなくいい加減な人たちによって回されているんだということを、
インド人は皆知っている。
日本の場合はそういう人たちが見た目はみんな
ちゃんとしてそうに見えるから質が悪いと言えるかもしれない。


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しかし気づけば自分もMBAか。
とにかくまずは無事に卒業できてよかった。
学校が始まるまでは、お寺で働いた経験しかないのにビジネススクールの
勉強についていけるかやや心配もあったが、
始まってみればぜんぜんそんなことは問題なかった。
MBAの前後で何が変わったかと言えば、
経営に関する問題解決において、もちろん個々の問題に即して
解決方法はそれぞれ異なるので「解決方法を知ってます」とは言えないのだが、
今は「どのあたりに問題のコアがあって、解決方法を考えるにあたっては
この辺りのポイントを注意してみるといいですよ」ということは言えるようになったと思う。
これは小さいようで、けっこう大きな違いだ。

ビジネススクールといっても経営は非営利組織にだって必要なものだし、
どんなに小さな組織においても目的達成のためには欠かすことができない。
この一年間、常に「お寺」を念頭に置きながら
2時間×10コマ×4講義×8学期=640時間の講義に参加したわけだ。
加えてその倍くらいの時間を課題や試験の勉強に費やしてきた。
すでに頭の中には、お寺でこれからやりたい具体的なアクションプランがいくつか描かれている。

あとは実践、実戦あるのみ。
お坊さんとして人の心を支えるあらゆる仕事を、
MBAホルダーとして最大限効率よく効果的に持続可能なかたちで実現すべく、
日本に帰ってまた頑張りたいと思います。
みなさま、今後ともご指導のほどよろしくお願いします。
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松本紹圭 (まつもと しょうけい)
>>プロフィールを読む 1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。一般社団法人お寺の未来理事。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。Indian School of BusinessでMBA取得。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。2013年、世界経済フォーラム(ダボス会議)のYoung Global Leaderに選出される。著書多数。近著に『お寺の教科書-未来の住職塾が開く、これからのお寺の100年-』(徳間書店)。