真言宗で僧侶になる方法
2011年05月23日さて、京都駅前のマックで娑婆とのお別れランチをしてはじまった修行生活。真言宗の修行では阿闍梨になることが修行のひとつの目標です(もちろん資格の取得だけが目的ではありませんが)。今回は、本筋から遠く離れて、真言宗の修行の仕組みについてご紹介したいと思います。
阿闍梨になるためには、四度加行という密教の修行を修め、伝法灌頂と呼ばれる儀式を受ける必要があります。最近阿闍梨として有名なお坊さんといえば、オネエ和尚として知られる水無昭善さんですね。水無さんは、高野山で修行して阿闍梨になられたんだとか。阿闍梨はもともとサンスクリット語で師匠を意味する「アーチャーリャ」を音写した言葉ですが、いま現在はお寺の住職になるために必要な資格となっています。だから、真言宗で一般的に言う"阿闍梨"は、水無さんの言うような「高僧」というよりも、ごく普通のお坊さんと考えていただいたほうが正確です(天台宗ではまた違いますが)。
ともかく、真言宗の阿闍梨になるためには、主に三つの方法があり、各人の事情に合わせて選ぶことができます。ひとつは、各宗派の本山などに設置された修行道場に行く方法。次は、宗派が運営する大学で夏休みなどに修行する、学生加行という方法。そして最後は寺院で師僧のもと加行する方法です。
まずは、修行道場での修行から説明していきましょう。多くの場合、各宗派の本山には僧侶を育成するための修行道場が設けられています。細かいシステムにそれぞれ多少の違いがありますが、高野山や東寺の修行は基本的に一年間。僧侶としての基本的な知識から、密教行者としての様々な儀礼の作法や実践、そして僧侶としての寺院運営に関する実務的なスキルまでひと通り学びます。
わたしが行った東寺伝法学院は四月にはじまる三期制で、一学期(四月?七月末)に僧侶としての基本を学び、二学期(八月末?十二月末)に108日間かけての四度加行、三学期(一月?三月中旬)に伝法灌頂と現場で僧侶としての実践的研修を行います。東寺真言宗僧侶の弟子になっていて、義務教育を修了して健康であれば誰でも入学することができ、実際に入学する人も高校を卒業したばかりの十代の若者もいれば、仕事を辞めて僧侶になることにした中年男性まで幅広い修行僧がいます。男女は分かれて行いますが、僧侶には男性が多いこともあり女性が修行を行えるところはあまり多くないようです。
東寺の場合は、一年間の修行費用は100万円以上。決して安くはありませんが、講義や儀式の費用、寮の部屋代、食費、光熱費なども含みますし、世界遺産の東寺のなかで一年間生活するという貴重な体験には代えがたいものがあるような気もしなくもありません。三つの選択肢の中でも、修行道場はいちど世間から離れて、僧侶としての修行に集中したいという方はこちらがオススメです。一度入ってしまったら、そう簡単には出られませんから。
次に学生加行ですが、こちらは高野山大学をはじめとする真言宗系の大学で行うことができます。夏休みや秋休みを利用して、50日の修行を2回、合計100日行います。加行をするには、得度してお坊さんになってなくてはいけませんが、大学では学生向けに集団得度なども行っていて、友だちと一緒に気軽にお坊さんになったりすることもできるそうです(と、某業界誌の体験談で読んで驚きました)。
最後にお寺で修行する場合ですが、こちらはなんらかの事情で長期間修行に専念することが難しい場合などに、師僧の指導のもと修行を行うものです。こちらはわたしの周りでもあまり例を聞かないので詳しいことはわかりませんが。
ということで、簡単に真言宗の修行についてまとめてみましたが、お坊さんの修行といっても宗派によって仕組みも内容もぜんぜん違っています。彼岸寺の連載『ITビジネスマンの寺業計画書』では、松島靖朗さんが「浄土宗のお坊さんになるには」という浄土宗でお坊さんになるための仕組みについて紹介されていますので、あわせてお読みになってみるとおもしろいですよ。

松下弓月 (まつした ゆづき) >>プロフィールを読む 1980年神奈川県生まれ。真言宗僧侶。福生山宝善院で副住職をしながら虚空山彼岸寺では編集長を務める。国際基督教大学卒、青山学院大学大学院文学研究科英米文学専攻博士前期課程修了(文学修士)。好きなものは、映画、温泉、怪談、自転車。









