避難所だったお寺の復興イベント『極楽パンチ』の巻/極楽寺 麻田弘潤さん(1/3)

避難所だったお寺の復興イベント『極楽パンチ』の巻/極楽寺 麻田弘潤さん(1/3)

2004年10月23日、新潟県中越地方を震源とするM6.8の直下型地震が発生しました。長岡市(川口町)では震度7を観測、大きな被害をもたらしました。麻田弘潤さんのお寺、極楽寺のある小千谷市も震度6強の揺れで、道路は液状化現象を起こし、多くの建物が倒壊。ご住職は、地域の被災者の方々に本堂を避難所として提供したそうです。

「あまりいい思い出のないような場所に、今みんなこうやって集まって笑顔で音楽を聴いてくれているのはほんとにありがたいです」。かつて避難所だった本堂では、いま、『極楽パンチ』というファンキーな名前のイベントが行われています。『極楽パンチ』は、中越地震の復興イベントとして、「復興後の暮らしを考える」ことをテーマとしてスタート。このイベントを7年に渡って続けてきた麻田さんのの思い、そしてお坊さんとしての生きざまをインタビューで聴かせていただきました。

「この義援金で復興イベントを」という人が現れて


極楽寺は、小千谷市の寺町のなかにあるお寺。震災後は、同じく寺町にある他のお寺の幼稚園が地域の避難所になっていましたが、耐震強度に問題があることがわかると、麻田さんのお父さん(ご住職)は「こっちに来たらいいじゃないか」と被災者たちに本堂を開放します。極楽寺本堂は、ちょうどその年の春に落慶したばかりで無事だったのです(写真:極楽寺麻田さん撮影)。

極楽パンチ エコマーケットのようす
――極楽寺は、避難所だったこともあり、その後も慰問コンサートの受け入れておられたそうですね。
そうなんです。こちらが企画するのではなく、お話をいただいてやっていたんですね。そしたら、2005年の夏に小千谷市内の方が「九州の友人から復興イベントをしてほしいと義援金を受け取ったから一緒にやろう」とうちに来られたんです。「1か月後に山を借りきって野外フェスをやりたい」と。

――1か月で山ひとつ借りて野外フェス!? ちょっと急な話ですね。
「何をしたらいいんですか?」と聞いたら、お寺を宿泊所にしてほしいと言われました。うちにはボランティアの人がしょっちゅう泊まりに来ていたので「いいですよ」と。そしたら、やはり企画に無理があったようで話がぽしゃってしまったんですね。「山ひとつなんてムチャを言わないで、お寺のスペースでなら何かできるかもしれないですよ」と言って、2006年の6月に『極楽パンチ』をはじめたんです。

最初の年は、三浦明利さんと岩手のシンガーソングライター松本哲也さんが来てくださいました。手作りイベントもいいところで、キャンドルも全部自分たちで作ったんですよ。ライブの途中にくすぶっていたらしく、ミュージシャンの方に「ドキドキしました」って言われて(笑)。

――『極楽パンチ』っていうタイトル、すごくいいですね。
僕は「極楽寺」っていう名前はベタすぎてあまり好きじゃなかったんですけど、『極楽パンチ』を一緒にはじめた人たちに「こんなに楽しそうな名前はないよ」って言われて。飲みながら「極楽寺ってパンチある名前だね」みたいな話から「ああ、それでいいんじゃない?」みたいな感じで決まりました。

今は、極楽寺っていう名前でよかったなと思っています。覚えやすいし、何でも頭につけられますし、楽しいイメージを持ってくれる。単純な先祖でよかったです(笑)。

――毎年いろんなアーティストが来られています。特に、タブラ奏者のU-zhaanさんは今年で5回目だったとか。

最初はシタール奏者のヨシダダイキチさんがU-zhaanを連れてきてくれたんですけど、僕はてっきり「ウ・ザハーンっていうインド人が来る」と思いこんでいて。顔が見たいと思って検索したら「ゆざわひろのり」って出てきたんです。でも、写真はアフロで目が隠れていたし「日本人じゃないかもしれない」と最後まで思っていたんですけどね。

――ウ・ザハーンって(笑)。来年もU-zhaanさんを呼ぶ予定ですか?
U-zhaanは、僕が全然音楽系に詳しくないことをわかってくれているので。『極楽パンチ』を始めたころは、「PAどうしますか?」って聞かれて「PAってなんですか?」って返事したくらいだったんです(笑)。U-zhaanが初めて来たときも、タブラにPAが必要だとは知りませんでした。


仏教の考え方って循環型だと思う

極楽パンチ キャンドルナイトライブで使われるキャンドル
『極楽パンチ』は、新潟各地のお店や手作りの品が並ぶ『エコマーケット』と『キャンドルナイトライブ』で構成されています。回を重ねるごとに「おもしろいイベント」として知られるようになり、『エコマーケット』への参加店舗も集まってくる人たちの数が増えて、すっかり小千谷の恒例イベントになりました。

――『エコマーケット』には本当にいろんな人が出店していますね。
はじめた頃は、いろんなイベントを回って「こんなことをやるんですけど、どうですか?」とチラシを持っていって。足で稼いで面白そうな人たちを集めました。最初はヒッピーぽい人が多くて。彼らは「誰かが一生懸命やってるからちょっと行ってみよう」みたいな感じがあって、すごく助けてもらいました。

――キャンドルは、お寺で燃え残ったキャンドルを再利用されていますね。『極楽パンチ』のテーマを「エコ」にされているのはどうしてですか?
小千谷のゴミ処理場も被災したのでゴミ処理が出来ず、山本山という山がゴミの山になってしまったんです。自分たちがどれだけゴミを出して生活しているのかを目の当たりにして、ライフスタイルを見直したほうがいいのではないかと思ったんです。せっかく復興していくならゴミの出ないことをしようよ、と。

最初は、メディアが言うように節約してエコなことをやってみていたけれど、今はちょっと違う感じですよね。節約というよりも、循環型社会に向かっていくようなことをしたいなと考えています。

――今年から「フリーマーケット」を「エコマーケット」という名前にされたのは?

フリーマーケットのイベントとして有名になっちゃったので、そこを変えたくて今年からは『エコマーケット』にしました。「楽しければいいじゃないか」という話もあったのですが、震災をきっかけに取り組みはじめたテーマを達成したわけでもないからちょっとずつ煮詰めていこうかと。3年前には「エコをもっと前面に出していこう」とリユースカップを作りました。最近は、リユースカップを持って『メリシャカライブ』など他のイベントにも参加しています。

――『キャンドルナイトライブ』の終わりに、「何か月もかけて作るキャンドルよりも、指一本でそれ以上の光量を得る便利なスイッチの裏側には、ものすごい負担がかかっているんじゃないか」とお話をされていましたね。
お寺のライブイベントを、法話を聴いていただく機会にされているところもあると思うのですが、うちの場合はイベント自体で伝えているというか。仏教のことを知っていただかなくてもそういう生活にチェンジしていけばいいのかなと。

循環型っていう考え方は、完全に仏教だと思うんです。ひとつの完結だと「我」があるけれど、無我や非我であればつながりがないと成立しません。それが伝わっていればいいかな。一日通して説教するみたいな(笑)。僕のアプローチはそんな感じなのでです。

――昼はTシャツでしたが、最後は法衣を着てお話されていました。

結局、法衣を着ないと誰だかわからないっていう話になるので。着替えていたら「出た、恒例のコスプレ」「出た出た」ってお客さんに言われて。

――コスプレって(笑)。『キャンドルナイトライブ』では、キャンドルとバルーンの組み合わせもすてきでした。
キャンドルとすごく合うんですよ。Daisy balloonは、海外でも高評価を受けている人たちで。だんなさんの河田孝志さんがアートディレクションをして、細貝里枝がバルーンアートにするというユニットなんです。実は、細貝は僕のいとこなので、機会があればお願いしようと思っていて。今回こういうかたちで実現しました。

――本堂の外陣だけでなく、内陣(ご本尊を安置している空間)までを使う、思いきったデコレーションをされているなあと思いました。

ふつうは内陣までいじらせないですよね。実は、あのバルーンとキャンドルによるデコレーションには、みんなが阿弥陀さまに平等に救われていくという感じを出す内陣の作り方があるんじゃないかなという実験的なところもあるんです(次回へ続く)。


プロフィール

麻田弘潤/あさだこうじゅん
1976年新潟県小千谷市生まれ。2000年龍谷大学短期大学部卒業。浄土真宗本願寺派僧侶。父・住職が取り組む被差別部落問題に関心を寄せ、自らも研究を行う。2006年、中越地震で被災したことをきっかけに、エコをテーマとした復興イベント『極楽パンチ』をスタート。今年で7回を開催し、循環型社会への移行に向けたメッセージを発しつづけている。東日本大震災以降は原発問題に関心を寄せ、2012年4月『東電・柏崎刈羽原発差止め原告団/市民の会』共同代表に就任。特技は消しゴムハンコ。イベント等で消しゴムハンコワークショップも開催中。

浄土真宗本願寺派青木山極楽寺
1511年創建。大正15年、先々代住職が洋裁学校を併設した洋館づくりの本堂を落慶。女性にも教育の機会を開くとともに、小千谷初の幼稚園の場を提供、講堂でダンスパーティーを開く等、早くから地域に開かれたお寺として活動していた。また同時に境内の墓地を全てなくして、本堂の地下に納骨堂をつくり、「みんなが一緒に仲良く入る」スタイルをいち早く実現した。2004年、建物の老朽化のため、本堂を再建。納骨堂は独立した建物にし、いつでも誰でもお参り出来る環境になっている。
住所: 新潟県小千谷市平成2-5-7
極楽パンチブログ http://blog.gokuraku-punch.com/


■関連リンク
境内に60店舗! 老若男女でにぎわうエコマーケット『極楽パンチ2012』レポート(前編)
七尾旅人×U-zhaanにちょっぴりインタビュー!『極楽パンチ2012』レポート(後編)



杉本恭子 (すぎもと きょうこ)
>>プロフィールを読む 大阪生まれ東京経由京都在住のライター。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒業。お寺取材を経験するうちに「お坊さん」に興味を持ちインタビューを始める。