お盆も一段落し、しばらく実家のある浜松へ帰っていました。家の中に仏壇のある風景がいつの間にか当たり前になり、そこで微笑んでいる祖母の写真にも、違和感なく話しかけられるようになりました。
ところで、今でこそ仏壇の中身(?)のセットもきちんとしていますが、祖母がなくなったときには、もともと仏壇がなかった我が家、実はお線香もロウソクも用意がなかったんです。
祖母が息を引き取ったことをお寺に連絡すると、お坊さんが枕経をあげにきてくれました。そして、「お線香とロウソク、ある?」と母に問いかけました。すると、「あります、あります」と母が持ってきたのは、なんとアロマキャンドルとお香。「これって、海外旅行のお土産でもらうような、匂いのするやつだよね?」と、眉をひそめるお坊さんです。「これじゃぁダメですか?だってロウソクでしょう?」と、無邪気な母に、「とりあえず今はこれしかないから、仕方ないけど・・・」と、しぶしぶアロマキャンドルを前にお経をあげるお坊さん。お香の煙とアロマキャンドルの香りで、介護用のベッドに横たわる祖母の周りは、次第になんともいえない、良いような悪いような匂いに包まれていきます。
今となっては笑い話ですが、たしかに、仏壇のない家には、仏様用のロウソクなんてないですよね。あるとすれば、やはりアロマキャンドルか、せいぜい誕生日のケーキに立たせるカラフルなロウソクくらい?
余談ですが、結婚してオール電化のマンションに引っ越した友人夫妻はタバコを吸いません。あるとき、友人が、アロマキャンドルに火をともそうかと思ったら、家には火をつける道具が何もないことに気がついたそうです。それからというもの、どこかお店に入るたびにマッチをもらってくるようにしていると聞きました。
ロウソクにお線香。以前はどこの家庭でも、あって当たり前だったものが、今ではそれを置かない家も少なくありません。
祖母の枕経に駆けつけてくれたお坊さんの、「ロウソクの用意もないの?」というひと言が、今も印象的に残っています。わたし自身、寺の人間である今では、ロウソクもお線香も、仏壇も、あって当然のものです。でも、それが世の中のスタンダードだとは、けして思わないようにしないといけないな、と思い起こさせてくれるエピソードです。