おかげさまで、少し前に一才の誕生日を迎えた我が家の赤ちゃん。ほんの数日前、ものすごいことをやってのけてくれました。
西東京にある支坊で、彼が夕方のお勤めを終えようとしていたときのことです。お経も終わりに近づき、「南無阿弥陀仏」の繰り返しにさしかったとき、なんと赤ちゃんが、「なんまんだぶ、なんまんだぶ」と言い出したんです。いや、正確には「なんまんまん、まんまんもう」くらいの発音だったかもしれません。けれど、明らかに彼の「南無阿弥陀仏」を真似しているんです。しかも、両手を合わせてスリスリしているではありませんか!
これには、ギョッとしたというより、一瞬、ゾクッとしてしまいました。うちの赤ちゃん、実はまだ言葉をしゃべることができません。「ママ」も「バイバイ」も「ブーブー」も言えないのです。それが、初めてしゃべった言葉が「南無阿弥陀仏」とは、我が子ながら、何か恐ろしいものを見たような気持ちになってしまったんです。
大器の片鱗を見せた赤ちゃんに、彼は大喜びでしたが、わたしとしては複雑な気持ちです。仏教者にとって、ある意味、自分自身より家族より大切な仏教。まだ「ママ」とさえ言わない赤ちゃんをして、念仏を唱えさせるとは、なんとも恐るべし仏教です。
いや、あれはきっと「南無阿弥陀仏」ではない。意味なくなんとなく発した音を、ご本尊の前という特別な環境が、まるで「南無阿弥陀仏」と聞いたように錯覚させたのでしょう。そうだ、きっとそうに違いありません。
わたしは、赤ちゃんが初めて「ママ、抱っこ」と、かわいらしい声で話してくれる日を、気長に待つことにします。