華麗なドライビングテクニックで都会の喧騒を走り抜ける今のわたしからは想像もできないと思いますが、結婚当時のわたしはペーパードライバーだったんです。それで、その頃ちょうど車の買い替えを考えていた実家の父が、「運転の練習につかいなさい」と、それまで父が乗っていた車をお下がりにくれました。平成3年式の白いセダン。運転上手の父が10年以上乗ってもまるで新車のようにピカピカだったその車は、わたしによってワイルドに磨かれ、結婚から2年もたつ頃にはかなりの貫禄と風格を醸し出し、わたしはとても愛着を感じていました。でも子供が生またあとは、やはり古いタイプのセダンでは何かと不便なうえに故障も重なるようになったので、先般、思い切って車を買い替え、赤い色の新車を購入しました。
車選びって楽しいですよね。わたしは機械のことはよくわかりませんが、デザインや内装なんかを選ぶときは、パンフレットを見るだけでもウキウキしたものです。で、ボディカラーに関しては白以外と決めました。ずっと白い車だったので目先を変えたくて。そして、紺や黒などの暗い色は事故率が高いというので却下。グレーは住職の車とかぶるので却下。そうすると購入を決めた車種では、残るは青と赤のみの展開でした。両方とも好きな色だったのですが、本当は深緑やベージュあたりにしたいなぁと思っていたのでちょっと残念ですが、ないものは仕方ないですよね。メーカーに行ってカラーのサンプルを見せてもらい、新車は赤に決まりました。
そして待ちわびた納車の日。朝食後の家族団らん中、住職が「そういえば、赤い車じゃお葬式に行けないぞ」と、まさかのひと言。えっ、赤い車はどうかなってみんなに相談したときはそんなこと言ってなかったのにー!と愕然としましたが、はて、なんで車が赤いとお葬式に行けないのかしら?
そんなわたしの疑問に、KAKUは「なるほど、そう言われてみるとたしかにそうかもね。お葬式に赤いスーツで行く人はいないよね」と言うんです。じゃぁ何色だったらいいのよ?と食い下がると、「黒かグレーか白、だな」。それを聞いて、わたしはなおさら腑に落ちません。お葬式に白いスーツで行く人だっていないじゃない。車はスーツじゃないんだから、家の車が赤いからってお葬式に行っちゃいけないってことはないでしょ。お坊さんだからって、いつもお葬式に行くことばっかり考えて、そのために車を買うわけじゃないのよ、と・・・。
まぁ、そこでなんだかんだ言ってみてもとき既に遅く、言い合ううちにピンポーンとチャイムが鳴り、当の赤い車がやって来ました。車を見た住職は、「こういう渋い赤なら、ほとんど茶色だから問題ないよ」と言ってくれますが、やっぱりちょっと不安が残ります。
それからほどなくして、通夜・葬儀の仕事が入りました。ちょうど、場所は遠くないけれど電車で行くには不便な斎場で、KAKUとわたしは、おそるおそる赤い新車で行ってみました。行ってみて目の当たりしたのは、斎場を埋め尽くす、黒や紺や白の車。赤や黄色の車なんてありません。参列者でもそうなのに、お経をあげるお坊さんが赤い車は、うーん、やっぱりマズかったかなぁと少し落ち込んでしまったわたしです。
そういえば車種を選んでいるとき、義母から「外車はやめてね。お寺のくせに外車なんて贅沢して、って思われたら良くないから」とも言われたことを思い出しました。実際には、外車がなべて高級ということは限らず、それよりもずっと高い日本車もあれば、中古という選択肢もありますが、やはり外車=贅沢というイメージは無視できないものなのでしょう。あるときには、「大きなロゴのついたブランド品を持ち歩いたらダメよ。」と言われたこともありました。
いずれにしても、贅沢してても見た目でわからなけりゃいいのか!とそのときは多少の反発を感じていました。でも、斎場で見た、地味ーな色の車の群を見たとき、ああ、結局はこれが求められているものなのかとがっかりしたような、なぜか少し悔しいような、でも諦めと同時に心のどこかで安堵感を抱いたのも本当です。
赤い車はけして贅沢の象徴ではありませんが、一般的におめでたい印象のある色。お坊さんが赤い車でお葬式に現れたら、やっぱり皆さんもギョッとしますか?
肝心のお坊さんの袈裟は金ピカなのにね・・・。
コメント (8)
アメリカでは、銀行など金融に携わる会社のロゴの大多数に
「青色」が使われています。
色の印象として、信頼や安心感を持たせる色というのがその理由。
青でなければならない、ということではまったくないのですが、
「らしさを装う」という意味で皆好んで青を使うのでしょう。
お坊さんももちろん赤いフェラーリだって構わないのですが、
「らしさを装う」という意味ではやはり黒の国産セダンなのかもしれませんね。
投稿者: natsuko | 2007年3月18日 07:39
日時: 2007年3月18日 07:39
そんな事無いですよ。
といいたいけれど、やっぱり目立つかも?
だから悪いって事も無いでしょうけれどねっ。
まあ~、買ってしまったんだから「ちょっと派手ね」と思われてもしょうがない、気にしない!気にしない!
日頃の行いが派手でなけばいいのでは?(職業がらしょうないね)
投稿者: ☆machikoちゃん | 2007年3月18日 11:23
日時: 2007年3月18日 11:23
東京なら「赤」でも、OKなんでしょうね。田舎は、無理でしょうね。たぶん。無難なのは、やはり、黒、紺系じゃないでしょうか?檀家の年齢層の感覚ですと、保守的になるでしょうね。
瀬戸内寂静尼が、講演会に、赤のBMWで、みえたときは、個人的には、違和感を感じました。そういう意味で、世間体は、結局は、大事ですよ。仏事自身が、保守的な行事なので。。。ただ、注目を転じて「吉」とする方法もアリですけど。
と、言う自分も、当時は、スポーツカー乗りまくりでしたけど。。坊さんって、車好きが、結構多いですよね。
投稿者: ほり | 2007年3月18日 20:34
日時: 2007年3月18日 20:34
>natsukoさま
コメントどうもありがとう!
そう、「フリをする」とか、「見せかける」というと否定的な響きになるけど、求められているものに応える、その用意があると示すことは、社会の中で信頼を表す大事なファクターなのかも。
ま、理想を言えば、贅沢するお金があるのなら、お坊さんだからこそ、贅沢以外の用途に使いたいものです。
>☆machikoちゃんさま
こんにちは。派手の基準も人それぞれなので、より多くの人に共感される感覚を保つのも難しいところですよね。でもね、ホント、ほとんど茶色みたいな渋~い赤なんですよ・・・。
>ほりさま
寂聴さんみたいな立派な方なら、どんな体裁でもかまわない、というかむしろカッコイイですが、わたしみたいな若輩者は、やはり周りの目を気にすることも大事なんですね。
お坊さんは車好き。そうなんですか?でも、引越しもリフォームも滅多に(絶対に?)できないお寺の人間にとっては、車は家に準じるようなアイテムに思えるのかも。ちょっと納得です。
投稿者: みちこ | 2007年3月18日 21:21
日時: 2007年3月18日 21:21
ははー、車の色ですか、そこまで気にしたことは無かったですね。
外車や高級車、というのはやはり避けることもある湯ですが。
でも、ウチの地域では、お葬式だからと言って、それほどみんな車の色を気にしていることは無いように思います。
洋服はいろいろ着替えが出来ますが、
車の色は簡単には変えられないものですしね。
投稿者: kenyou | 2007年3月18日 22:22
日時: 2007年3月18日 22:22
私も僧侶でございまして、実家では父と一緒に葬儀に出ることがあります。
そんな私の愛車は、赤のスポーツカー(国産/中古20万)です。中古車ディーラーに勤める門徒さんに売ってもらったくるまで、もう4年くらい乗っています。お盆のお参りもそれで回ってますが、何も言われたこと無いですね。ホントに真っ赤なんですけど。
でも言われてみますと、父は白かパールのセダンを乗り継いでいます。
何かの本でしたか、葬儀の時親族は黒塗りのセダンという暗黙のルールがあるようです。故に葬儀時のハイヤーなどは未だに黒ですね。
少し前までは日本人の車選びは、葬儀に参列できる車はどれか…から入っていたようです。故に古くは黒か白のセダンでした。近年、多人数乗車の出来るミニバンが流行したのも、そのあたりに要因があると言われています。
最近ではそんなことも無くなってきている様ですね。
初めて書かさせていただいたのに、長文でこんな取り留めもない内容で申し訳ないです。
投稿者: clelyric | 2007年3月20日 00:31
日時: 2007年3月20日 00:31
こんにちは
遊びに来ましたよ(^_^)
『みちこさん』・・・どこかでお見かけしたような気がしていましたが
彼岸寺の方だったんですね
何度かブログに立ち寄らせて貰った事があって
とても聡明で感受性の豊かな方だなぁ~と思ってました。
さて、車の事ですが
うちは3台所有していますがそのうち2台は寺名義でご門徒の送迎やお参り車として使用しています
この2台はお寺の会計で払ってますのでいわば公用車、だから使用目的にふさわしい車と言うのが要求されるかと・・・そういう基準で選んでいます。
もう1台は個人名義でプライベート仕様です。
うちは法人になってるので、この車は寺(法人)から寺嫁家がいただいているお給料でまかなってますから、まぁそれでどんな車を買おうといいんじゃないかな?って思ってますが・・・・
お寺って金銭の流れが不透明なとこがあったり
お金の使途を含めて公私の区別が実際付きにくいとこがあったりするんで
そういう事情が理解いただけない方のなかには不快に感じる方がいらっしゃるかもしれないですね(^_^;)
投稿者: 寺嫁 | 2007年3月20日 13:07
日時: 2007年3月20日 13:07
>kenyouさん
そう、お葬式だからといって、たちどころに適当な色の車を用意することはできないし、いつでもすぐにお葬式に行けるような車を用意してあるのもなんだかな、って感じです。ちなみに私の地元のお寺の方はベージュのお車でした。遠めに見たら光に反射してゴールドに見えましたけど(笑)。まぁ、ゴールドだったとしても、わたしはたぶん何とも思わないだろうな・・・。
>clelyricさま
はじめまして。コメントありがとうございます。
***日本人の車選びは、葬儀に参列できる車はどれか
へぇぇっ!知りませんでした。汚れが目立たない白やグレー、高級感のある黒、そんな基準なのかなと思っていました。確かに、お葬式のことなど気にしない若い世代には、明るくてかわいい色が人気ですよね。
またいつもで気軽にコメントくださいね。
これからも彼岸寺をよろしくお願いします。
>寺嫁さま
あら、こんにちは!コメントありがとうございます。
車に限らず、公私の区別をすること、その区別を周囲にも理解してもらうことがとても難しいですよね。そもそも区別が必用なのか、許されるのか、ってところも気にはなりますが。
いずれにしても、お坊さんに対するイメージには、現実とのギャップがつきものかもしれません。そのギャップをむしろ親しみに変えてもらえたら、などと思いますが、勝手な言い分ですかねぇ。
投稿者: みちこ | 2007年3月26日 01:08
日時: 2007年3月26日 01:08