2004年10月24日

::::::::寺入り娘より::::::::

結婚して、これまで他人だった人と、今度は家族としてともに暮らすということ。もちろん苦労に感じることもありますが、わたしはとても興味深いことだと思っています。よく、「相手の箸の上げ下ろしまで気になってしまう」なんていうことを耳にしますが、なるほど、ほんの些細な習慣の違いが、毎日の暮らしの中には無数に存在しています。たとえば、彼は朝晩とも歯磨きは洗面所でしますが、わたしは夜はお風呂で歯磨きします。

たとえば、彼はお風呂から上がるときに浴槽から壁、天井にいたるまでカラ拭きしてから上がりますが、わたしは冷水をかけるだけ。たとえば、彼は真新しいタオルやシーツを、封を開けたまますぐに使いますが、わたしは必ず一度洗濯してから使います。どちらでもいいことなのですが、お互いに良かれと思って続けてきた習慣なので、違う文化が入ってくると戸惑ってしまうものです。

先日、こんなことがありました。
夜、何か少し深刻な話をしていたとき、ふと見ると彼が目を閉じています。遅い時間でしたから眠いのも仕方ないと思いつつも、「寝ないでよ」と言ってみると、彼はパッチリと目を開けて、「寝てないよ、考えてたんだよ」と言うのです。

彼は何か大事なことを考えたり、集中したいときには目を閉じるそうです。できるだけ他の情報が入ってこないように、目を閉じ、テレビやオーディオも消して、完全に自分の世界に入って考えたいそうです。そうしないと、余計なことが頭に浮かんできて考えがまとまらないし、思いついたことにもいまいち自信がもてないとか。そういえば、披露宴で祝辞を頂戴している最中も彼はときどき目を閉じていて、隣で見ていたわたしは、ヤダこの人、高砂で寝てるわ、なんて思っていました。

わたしは誰かと話しているときも、一人で考え込むときにも、目を閉じることはありません。そのとき目に映るもの、耳に聞こえるもの、いろいろなものの影響を受けながら湧いてきたものが、そのときの自分の考えだと思うからです。そもそも、目を閉じて考え事をする習慣がないので、目を閉じると、「わたしは今、目を閉じている」ことに気が散って考えなんてまとまらないのです。なので同じことを話題にしていても、話し始めたときと終わるときでは意見が違ってしまうこともあり、結局、「まぁ、今のところはわたしはこう思うのよ」なんていう曖昧に会話を終えてしまうことも少なくありません。

ふと、昔読んだ「地図の読めない女・話しを聞かない男」の一例を思い出しました。男性が歯磨きをするときは、鏡の前に仁王立ちし、片手を腰に当てて歯を磨くことだけに集中する。女性は、歯磨きする手を上下に動かしながら、空いている手でテーブルを拭き、目ではテレビを追っている。

結局は、男性と女性の差なのかしら、なんて思いつつ、それだけでは説明のつかないことも日常にはごろごろ転がっています。だからと言ってムッとするわけでもなく、お互いに譲ったり譲られたりしながら、なんとなく新鮮な気持ちで暮らしていける、そんな他愛もないことが幸せに感じられる今日この頃です。


::::::::寺継ぎ坊主より::::::::

これを読んでいる方は独身の方が多いと思うのですが、独身の方は是非結婚をしてみることをお勧めします。結婚をしてみると毎日がとても面白いです。なんといっても自分が今まで当たり前のようにしてきた「日常」に待ったがかかるのですから。
他人と一緒に日常を過ごすということは、如何に驚きが多いことか。今日はそのひとつを紹介します。

ある日、私が彼女とちょっと込み入った話をしていました。適当に答えることでもなかったのでわたしはちゃんと考えをまとめようとしました。すると、「寝ないで考えて!」と彼女に言われてしまいました。
「何だよ。一生懸命考えているんだろ」などとそのときは言いましたが、なるほどこれはよく考えると面白い。

私は、ものを考えるときは昔から目を瞑るのが癖なのです。目を閉じて、静かなところでじっくりと考える。目を開けているとやれテレビの映像が気になったり、あそこが汚れている、ここを片付けなきゃと、関係のないことを考えてしまいます。じっくりと物事を考えるときには耳栓をして目を閉じることが当たり前でした。ところが彼女は考えるということは五感をすべて使って考える。目を開け、相手の表情を良く見て、その変化までも考えに入れる。こう言うのです。

わたしの中で考えるということは、自分の中でイメージを完結させること。というきわめて個人的なことなのですが、彼女の中では、考えるという個人的なことでさえコミュニケーションだと思っていることの差。普段当たり前のように行っていることでさえ、こんなにも違うもの。日々の生活がまさに異文化交流です。

自分の中の常識にもう一度疑問を投げかけるということにおいても、結婚というものはいいのかもしれません。
あなたは目をあけて考えますか?目を閉じて考えますか?

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寺とは縁もゆかりもなかった女の子がお坊さんと恋をして、お寺に嫁ぐ。このケース、実は最近けっこう多いんです。このコーナーでは実際にお寺に嫁いだ寺嫁(てらよめ)の視点から、恋愛・結婚・出産・子育てなど、お寺での生活について現在進行形で体験レポートしていきます。
みちこ
ふつうのOLから思いがけず浅草のお寺に嫁ぐ。子どもと旦那(お坊さん)の世話に追われながらお寺を切り盛りする忙しい日々。