::::::::寺入り娘より::::::::
わたしは地方出身者なのでお盆といえば8月ですが、東京では7月がメインなんですね。数日前からお義母さまに「キリコドウロウ」なるものを出しておくようにいわれていたので、お昼ご飯を食べたあと、彼と一緒にお盆の飾りつけを始めました。
それは、完成図(手書き!)の書かれた専用のダンボールに入っていました。どちらのお寺でもそうなのでしょうか、お寺の道具を触るときには必ず軍手をはめています。わたしも軍手をもらって組み立てをお手伝いしました。隣でお義父さまから組み立て順序を教わっている彼の様子を、見よう見真似でつくってみます。素材が紙と軽い木材なので、よくよく注意して触れないと壊してしまいそう。
完成したキリコ燈楼(この期に及んでキリコの意味がわかりません・・・)を、やはり丁寧に持ち上げて設置します。赤と紫、黒、白でカラフルだし、形もひらひらの飾りがたくさんついてとても華やか。本堂なんかを見ても思うのですが、お寺の道具って朱や金がふんだんに使われて、とても豪華ですよね。「お寺」というと、質素で暗いイメージだったので、初めてお寺のお手伝いをしたときは、とても意外に思ったものでした。
さて、この次にこの作業をするのは一年後。それまで手順を覚えていられる自信がまったくなかったので、ダンボールに書かれた完成図に、さらに組みたて順序を書き入れておきました。物の名前や儀式の手順なんかをしっかりと覚えておくことも、寺に嫁ぐ者の大切な役目なのだわと感じさせられた出来事でした。
::::::::寺継ぎ坊主より::::::::
そろそろお盆も近づいてきたので、うちのお寺でもお盆のちょうちんを出してお盆を迎える準備をしました。
お盆に飾るちょうちんのことを浄土真宗では切子灯篭(キリコドウロウ)と呼びますが、この形、なんだか面白い形なんです。日本の伝統的なものって、曲線美を前面に出したものが多いと思うのですが、これはずいぶん幾何学的というかなんとも面白い形だと思っていたので、住職に聞いてみました。すると
「あぁ、あれは逆さ吊りの人の姿をあらわしているんだよ」
なんて言われたから思わず絶句してしまったんですが、そういえばお盆はもともと
お釈迦様の弟子の目連が神通力(超能力)で亡き母の姿を見たところ、母親は、なんと餓鬼道(餓えに苦しむ世界)に落ちて苦しんでいたそうな。そこでお釈迦様に何とかして救いたいと尋ねると、「七月十五日に、過去七世の亡き先祖や父母たちのために、御馳走を作り、僧侶たちに与え、その飲食をもって、供養するように」と教えてくれました。教えの通りにすると、目連の母親は餓鬼道の苦をのがれ、無事成仏することができた。
という説話からはじまっていることを思い出し、あぁ、今目の前にあるのはお釈迦様のお弟子のお母さんが逆さ吊りになっている姿なんだ、なんて考えてちょっと奇妙な感覚に襲われました。お盆のたびに逆さ吊りを飾っていたなんて、ちょっとシュールですね。
どうでしょう?お盆で親戚が集まってお酒なんかを飲んでいるときにこんな話をしたら、きっと盛り上がるんではないでしょうか?