2006年9月 9日
百鬼巡礼 第五夜 [怪異考]
【鎌鼬】:鋭くよく斬れる鎌のような爪を持った鼬で空中に浮遊していて姿を見せず、時々人を襲う。襲われた人は皮膚にえん月形に割れた傷口ができるといわれ、現在でもこれに襲われる人もいる。
(笹間良彦著『未確認生物事典』より)
◆ 化け物の気配、なしとも申し難い事
常識を逸脱した現象・事象は人々の好奇心にのって伝播します。大小様々な内容が真偽等問わずに広がり形を変えていく様を後から追従していくのは楽しいものです。そこで伝播の効率と対象の内容の関係性には興味がいくところで、研究なさってる方もいらっしゃるでしょうが、個人的な趣向でいくと「真偽にこだわるのもナンセンスなトンデモ話」と「もしや?と思わせられる些細な変異(怪異)」に惹かれ、覚えていて人に話したくなる傾向にある気がします。前者でいうならば、僕の友人がベッドで寝ていると何物かの気配が彼のベッドを壁側にひっくり返そうと持ち上げたという体験を聞きました。ベッドが突然ナナメになったものだから体が壁際に転がり、壁とベッドが作る谷にはまっていたそうな。彼は一人暮らしなので、それは幽霊のしわざだと話していたけれど、ああそれは幽霊のせいに違いないと同意するしかない状況に笑いが止まらなかったのを覚えています。ベッドをひっくり返す何物か…、妖怪に枕返しというのがありますが、ベッド返しという新手でしょうか。
さて後者は最近のものですが、鎌鼬(かまいたち)に遭遇したという女性からの報告です。駅から家の道のりを帰るたそがれ時、ふと気付くと足がスパッと一文字に切れていたそうです。しかも不思議な事にストッキングは無傷で足だけ傷ついているのです。そして大きな傷になっているのに血が出ていない…。よくある鎌鼬の伝承の中で、鎌鼬は3匹でやってきて1匹目が人を倒し(転ばせ)2匹目が下半身に傷をつけるが3匹が薬をつけていくので血は出ないというのがあります。このケースでいくと転ばされはしなかったものの2匹目と3匹目の役割と現象は合致しています。1匹目の鎌鼬くんは失敗してしまったのでしょうか?何故か3匹目が治癒していくというのも面白い。前者のベッド返しにも言えますが、こういった愛嬌が非常に妖怪じみていると思うのです。ちなみに鎌鼬の件については対策を求められたので「古暦を燃やした黒灰を粉にして白湯飲むと傷の治りがはやい」と助言しました。まさか『日本未確認生物事典』が日常生活に役立つとは思わなんだ。備えあれば憂いなし、と実感しつつこの本の帯の推薦文を見ると「わけの分からない"存在"というのはいないのではなく い る のです。ただ、気がつかないだけです。案外皆さんの回りにも"未確認生物"がまじっているかもしれません。是非用心のために一冊御手元に置いて下さい。 水木しげる」…フハッ!大先生!恐れ入りました!
(文・遠藤卓也)


