2009年10月14日
日蓮聖人坐像 院興策(初公開)
今回初公開となった「日蓮聖人坐像 院興作」

10月10日(土)より、京都国立博物館(京都・東山七条)にて、日蓮上人の「立正安国論」奏進750年記念『日蓮と法華の名宝--華ひらく京都町衆文化--』展が始まった。展覧会では、日蓮上人直筆の「立正安国論 写本(国宝)」を軸に、京都の日蓮・法華宗16本山を中心とする諸寺伝来の宝物が展示されている。

日蓮上人の孫弟子にあたる日像上人による京都布教以降、日蓮・法華宗は公家文化にならぶ町衆文化の形成に大きな役割を果たしてきた。室町時代には、町衆の半数以上が法華宗に帰依したことから「題目の巷」とも呼ばれ、狩野元信、長谷川等伯、本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳、尾形乾山など、日本近世美術を築いた京都の芸術家たちもまたみな法華宗の信者だったという。その隆盛ぶりは、夏の風物詩である五山送り火にある「妙法」の二文字からもうかがい知ることができる。

『日蓮と法華の名宝--華ひらく京都町衆文化--』展
1260年に北条時頼に奏上された『立正安国論』では、1268年の元寇を予言したとされる。「立正安国論 日蓮直筆写本(国宝)」
今回の展示は、法華宗以前の天台密教の時代の法華信仰から取り上げ、日蓮上人の足跡、そして京都の町と法華信仰との関わり、そして京都の芸術家たちと法華信仰の関わりを追いかけるかたちで構成された。これだけの規模の日蓮・法華関連の展覧会は、2003年に東京で行われた『大日蓮展』以来だが、とりわけ京都を中心に企画されているため『大日蓮展』と重なる展示内容は4分の1ほどしかない。新たに発見された資料12点、初公開は少なくとも37点以上あり、国宝4点、重要文化財55点と貴重な品々が一堂に展示されている。

これらの展示品の一つひとつの向こうには、非常にドラマチックな法華宗と京都の歴史が秘められている。度重なる流罪を受けて、京都への帰還・布教がかなわなかった日蓮上人の思い。悲願かなってようやく京都布教を始めることができた孫弟子にあたる日像上人の足跡。為政者への進言を行って焼けた鍋を被せられる拷問を受け「鍋かぶり上人」と呼ばれた日親上人のエピソードなどは苛烈としか言い得ない。また、比叡山との対立から起きた天文・法華の乱(1536)は法華宗の本山を壊滅させ、信者の町衆をも巻き込んで京都の町を焼き尽くす事態を引き起こした。

日親徳行図
「鍋かぶり上人」と呼ばれるきっかけとなった出来事を描いた「日親徳行図」

また、法華信仰は、当時最高の芸術家たちの精神にも大きな影響を与えた。「不受不施義」を厳しく説いた当時の法華宗は、信者間の関係が非常に緊密であったことから、技術の伝達や協力関係などもあったのではないかと見られているという。仏画や焼き物そのものから法華信仰との関わりを見出すことは難しいが、少なくとも琳派を形成した俵屋宗達、尾形光琳ら芸術家間の関係性のベースに法華信仰があったことは間違いない。そうした視点で作品を見直すと、また新たな魅力が見えてくるようにも思われるのだ。

会場では、まるまるしたお顔にきりっとした表情を浮かべた日蓮上人はじめ、数々のお上人さまや仏さまたちがずらりと並んでみなさんのお越しをお待ちである。室町や江戸時代の京都へ、あるいは日蓮聖人の歩いた道のりをたどり直す旅を見つけに、東山七条まで足を運んでみてはいかがだろうか。

関連リンク

イベント情報



名称京都国立博物館『日蓮と法華の名宝ー華ひらく京都町衆文化ー』【公式サイト
日時2009年10月10日(土)〜11月23日(月・祝)
休館日:月曜日(祝日の場合開館し翌日休)
会場京都国立博物館(京都府京都市東山区茶屋町527)
料金一般1300円、大学・高校生900円、中学・小学生400円
主催京都国立博物館、日蓮聖人門下連合会、日本経済新聞社、京都新聞社
後援文化庁、京都府、京都市、京都府教育委員会、京都市教育委員会、(財)全日本仏教会
協賛日本写真印刷株式会社
関連シンポジウム京都国立博物館 2009年国際シンポジウム『法華の人と文化--その行動と思想ー』

『法華経』は、日蓮がもっとも重視し「南無妙法蓮華経」の題目信仰がよく知られているが、日蓮以前はるか昔から『法華経』は信仰を集めており、とりわけ最澄による『法華経』を中心とした天台宗の広まりとともに、平安時代以降は身分を問わずに親しまれた。日蓮もまた、比叡山の修行を経て独自の思想に到達し、後に生きる人々に影響を与えて新たな波紋を歴史上に刻んでいった。このシンポジウムでは、『法華経』というひとつの経典が、さまざまな人物の思想と行動の原動力となり、文化を形成し歴史をつむいでいったことに注目。国内外の研究者3名が、日蓮とその前後にわたる法華の人と文化をそれぞれの観点から語り、日蓮の法華信仰の歴史的意義に迫る。

開催概要
テーマ:『法華の人と文化--その行動と思想ー』
日時:11月14日(土)午後1時〜5時
会場:京都市勧業館 みやこめっせ
聴講料:無料

プログラム
第一部 研究発表:
「法華経の教えを繰り広げた歌人たち」
ジャン-ノエル・アレキサンドル・ロベール氏(フランス国立高等研究院 宗教学部(日本仏教学)教授)

「常在の霊山一会に入って --中世法華思想における一つのテーマ--」
ジャクリーン・I・ストーン氏(プリンストン大学 宗教学部教授)

「日蓮にみる法華信仰の系譜」
中尾 堯氏(立正大学名誉教授)

第二部 パネル・ディスカッション:
ジャン-ノエル・アレキサンドル・ロベール氏
ジャクリーン・I・ストーン氏
中尾 堯氏
大原 嘉豊(京都国立博物館研究員)
【司会】 赤尾 栄慶(京都国立博物館学芸部副部長)

申込方法
往復はがきに住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記の上、お申し込みください。定員になり次第締め切ります。

宛先
〒605-0931 京都市東山区茶屋町527 京都国立博物館「国際シンポジウム」係

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.higan.net/apps/mt-tb.cgi/3375

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)


Powered by Feed Wind

※特に記載のない場合は、写真はすべて関係者の了解に基づき筆者が撮影したものです。