2008年5月13日

【更新履歴】
4/2:本記事公開
5/13:日本テーラワーダ仏教教会、真言宗豊山派、飛騨高山車座会議などの声明を追加

 中国のチベットへの弾圧に対する日本仏教界の声明文をまとめてみました。

 ウェブに掲載されているもののみですが、伝統仏教教団八宗からは日蓮宗、浄土宗、浄土真宗本願寺派、曹洞宗から声明が出されています。また昨年ダライラマ法王を招いて講演行った全日仏がいち早く声明を出しています。

 こういった事態に対しては伝統教団よりも新宗教団体のほうが対応が早いのではないかと思い調べてみましたが、驚いたことに一つも声明を出しているところはありませんでした(島田裕巳『日本の10大新宗教』掲載の団体について)。

 仏教団体の声明文をいくつか見ましたが、とくに印象に残ったのが日光修験道が出されたものです。中国政府の非道な行為に対する毅然としたメッセージです。全文を引用させていただきましたので、ご覧下さい。

 詳細は以下の通り。

■伝統仏教教団(発表順)
3/17 全日仏:『チベット情勢についての声明(全文)』
「ラサ市はチベット仏教の聖地です。今回、そのラサ市をはじめ中国各地において僧侶・市民と治安部隊の衝突により多くの死傷者が出ている深刻な事態に対し、私たち日本の仏教徒は深く憂慮しています。関係者に対しては、暴力に訴えることなく、対話による問題解決の可能性を模索するよう強く求めます。 なお、私たち日本の仏教徒は今後ともチベット情勢の推移を注視してまいります」

3/18 浄土真宗本願寺派:『チベット情勢についての声明(全文)』
「私たちは、宗祖親鸞聖人の「世のなか安穏なれ」との願いのもと、いのちの尊さにめざめ、それぞれのちがいを尊重し、ともにかがやくことのできる「御同朋の社会」をめざしています。
  暴力や武力による行動ではなく、あくまでもお互いの立場を尊重し合いながら、平和的な対話などによって、これらの深刻な事態の速やかな終結を望みます 」

3/24 浄土宗:「チベットに平和を(全文)」
「非暴力を標榜する浄土宗は、いかなる理由があろうとも武力をもって間題の解決をはかることを否定します。私たちは、チベットの人々の苦しみに深い思いをはせております」

3/24 曹洞宗:『チベット情勢についての声明(全文)』
「チベット仏教の聖地といわれるラサにてのこのような事態は、同じ仏教徒といたしましても誠に悲しいことであります。仏陀のお示しになった崇高な教義を基に、お互いの絆を深め、武力や暴力ではなく平和的な対話による早期問題解決を望みます」

3/24 浄土真宗大谷派:全日仏の声明を掲載

3/28 日蓮宗:『中国チベット自治区の情勢について(全文)』
「いのちの尊さを重んじ、お互いがお互いに対して敬いの心を持って、平和的な話し合いを通じて、今般の事態が早急に解決されることを切望するものであります」

4月初旬 法華宗本門流:「チベットの苦難に我等の声を」【NEW!】
「高僧の生まれ変わり「活仏制度」に中国政府の許可制度が導入された事もチベット人を刺激していると思われます。
曽て清朝の乾隆帝はチベット仏教を保護した歴史がありますが1950年の政権は政教のトップに君臨するダライ・ラマ師の封建社会からチベット人を解放するという名目で解放軍を送っています。チベット人は仏教を国教としてダライ・ラマ師を尊崇するが故に解放軍とは認識せず侵略軍と見なしていたと考えられます。既に大きな認識の差が生じていたというべきでしょう。すなわちチベットの伝統や文化遺産、仏教が長きに亘り危機にあるためにチベット人が行動を起こしていると思われます。…中略…法華宗は菩薩行の実践として恒久の平和を求め続けます。」

4/22 全日仏:「チベット情勢について ー日本の仏教徒の願いー」【NEW!】
→詳細は「全日仏、チベット問題の平和的解決を求め要請書を中国政府や日本政府に提出」(時事〜仏教2.0的ニュースコラム)を参照。

4/23 真言宗豊山派:「チベット仏教徒の安全を憂慮する」【NEW!】
「中国はわが国の隣国であり、現在は共産主義体制ではあるが、わが国は友好国としてつき合いをしているのである。くり返すが、私たちは同じ仏教徒として、チベット仏教徒の安否には重大な関心を持っている。対話と理解によってなんとかして法王の要望が中国政府に届いて欲しいと願うばかりである。…中略…しかし、もしチベット人たちの人権が不当におさえられているとするならば、いかに隣の友好国であっても、私たち仏教徒は黙ってはいられない。平和的手段をもって強く抗議せざるを得ない。中国政府当局は開かれた態度を示して欲しいものである。」

5/1 浄土真宗大谷派:(全日仏の要請書を掲載)

5/13 天台宗、時宗、臨済宗:声明なし

■その他団体
3/20 日光修験道:『チベット弾圧に対する憤りと抗議』

私たち日光修験道は、中華人民共和国の暴虐行為、殺人行為、民族と文化の抹殺行為、宗教破壊行為等に対して、甚深なる憤りをおぼえ、ここに強く抗議するものである。

中国政府は、この度のチベット弾圧事件で、その歴史的傲慢さを露呈した。自ら共和国建国前に受けた中国人民の苦しみを忘れてしまっている。現中国政府が他民族を虐待することは、まさに独裁、拝金、覇権主義国家であることを示している。その主張と行為は、厚顔無恥以外の何ものでもない。

このような思考の指導者集団である中国共産党政府に、次の四か条をもって、断固抗議し、懺悔の機会を与えるものである。

1.直ちに理性をもって、自制的行為を執るべきである。
2.外国のジャーナリズムによる公正な報道を受け入れるべきである。
3.強制的に連行、捕縛した全ての人々を、すみやかに解放すべきである。
4.直ちに侵略を認め、チベット人民に謝罪し、速やかにその独立を認めるべきである。

人民と天命、因果は常に権力が恐れるべきものである。中国政府は恥を知り、その愚昧な政策を改めよ。

2008年3月20日
日光修験道  法頭正大先達 伊矢野慈峰

4/14 日本テーラワーダ仏教教会:「チベット問題について 歩み寄りと和解を願う声明」【NEW!】
「しかし、チベットの平和と自由を訴えることは、決して「反中国」活動になってはならないと思います。チベットの苦しみにほんとうに共感するのであれば、中国の人々を含めた、人類全体の幸福を願う、慈しみに徹した行動をするように気をつけなければいけないでしょう。 …中略…私たち仏教徒のみならず、チベットに心を寄せるすべての人々が、慈しみの心を絶やすことなく、「一切衆生の幸福」という広い視野で考え、話し、行動していくことです。すなわちダライラマ法王が説かれるように、非暴力という「中道」を実践し続けることです。それが問題解決への唯一の道であると、私たちも確信しています。それがブッダの説かれた道だからです。

4/24 飛騨高山車座会議:「飛騨高山仏弟子非暴力平和宣言」【NEW!】
「1 私達仏教徒はお釈迦様の仏弟子として、いかなる場合でも、平和を祈り、非暴力を貫き、他に対し慈悲の心を持って接することを誓います。 私達は同じ仏教徒として、五十年に及ぶチベットでの問題に酷く心を痛めています。

2 私達はお釈迦様の教えを守る中で、宗教や民族の問題は相互の理解に基づいた対話によってのみ、解決することと信じています。私達は、中国政府代表と亡命政府代表のダライラマが互いに敬う気持ちを持って、真摯に対話を重ねることによって、両民族に生じている隔たりが必ずや融和的に、また平和裏に解決することを深く信じています。」

■仏教系新宗教団体
5/9 創価学会「名誉会長 中国の胡錦濤主席と再会」【NEW!】
「席上、名誉会長は「暖かい春の旅」となった訪日を歓迎し、胡主席が提唱する「調和世界」のビジョンの実現へ向け、さらなる青年交流の重要性を強調。平和の祭典として北京五輪の大成功を祈る心を伝えた。胡主席は「日中国交正常化提言(68年)」など両国友好に注がれた名誉会長の勇気と遠見を高く評価。中日両国が相互理解を深め、平和的な発展の道を進みゆくことが、アジアと世界の安定のために不可欠であることが確認された。」

5/13 立正佼成会霊友会真如苑阿含宗:声明なし

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この一覧は、次のエントリーを参照しています: 【5/13更新】日本仏教界の声を聞く - 各宗派のチベット弾圧抗議声明まとめ読み:

» 当世日本の僧侶にとっては難行:チベット弾圧への抗議 送信元 VIPULA-GARBHODAYAMAHASUKHADEVAKULA
 前回の記事の中で、チベット弾圧事件に対して日本の仏教界から明確な抗議が出にくいのは何故かということに関する考察に触れた話をしましたが、先の週末、関西のT... [詳しくはこちら]

コメント (6)

nerumama:

はじめまして。nerumamaと申します。
チベット弾圧に関することを調べていてここにたどり着きました。
私自身は不信心もの(ご先祖様を大事にはしますが)ですが、
報道でうかがい知る範囲での中国の国家としての品性のなさ、
チベットへのあまりにひどい締め付け というより虐待に
きちんと調べてみたくなり、ここを知りました。
今日5日の関西テレビで取り上げられた天台宗僧の方による演説の動画です。
前・後編に分かれています。
http://jp.youtube.com/watch?v=ajvO9tYVm18&feature=user
http://jp.youtube.com/watch?v=3ErBB1D8b_I
生放送のTV番組への出演、大変な決断だと思います。
すでにご存知かもしれませんが、もしご覧になっていなかったら、どうぞご覧下さい。

山口峰隆:

すこしづづではありますが、
仏教徒の声があがっていることに喜びを感じました。

4月5日11時ごろ、関西テレビの「ぶったま!」という番組でそれは紹介された「今週のNEWS20面相」コーナーで、天台宗の別格本山である書寫山圓教寺(しょしゃざんえんぎょうじ)の大樹執事長が生出演、自らの言葉で声明を出されました。

 全文、テレビからの口述筆記です。

 「いま私たち日本の仏教者の真価が問われています。チベットでの中国の武力行動によって、宗教の自由が失われる事に、心から悲しみと止むに止まれぬ抗議を表明せずにはいられません。私たちはあくまでも宗教者、仏教者として僧侶をはじめとするチベット人の苦しみをもはや黙って見過ごす事ができません。チベット仏教の宗教的伝統をチベット人の自由な意思で守ると言う事が大切な基本です。皆さんは日本の全国のお坊さんがどうしているのかとお思いでしょう。日本の各宗派、教団は日中国交回復の後、中国各地でご縁のある寺院の復興に力を注いできました。私も中国の寺院の復興に携わりました。しかし、中国の寺院との交流は全て北京(政府)を通さずにはできません。ほとんど自由が無かった。これからもそうだと全国のほとんどの僧侶は知っています。そして日本の仏教教団がダライ・ラマ法皇と交流する事を北京(政府)は不快に思う事も知られています。あくまでも、宗教の自由の問題こそ重大であると私は考えています。しかし、チベットの事件以来、3週間以上が過ぎてなお、日本の仏教会に目立った動きは見られません。中国仏教会が大切な友人であるなら、どうして何も言わない。しないで良いのでしょうか?ダライ・ラマ法皇を中心に仏教国としての歴史を重ねてきたチベットが今、亡くなろうとしています。私たちは宗教者、仏教者として草の根から声をあげていかなければなりません。しかし、私の所属する宗派が中国の仏教会関係者から抗議を受けて、私はお叱りを受ける可能性が高いし、このように申し上げるのは私たちと行動を共にしましょうという事ではないのです。それぞれのご住職、壇信徒の皆さんがこれをきっかけに自ら考えていただきたいのです。オリンピックに合わせて中国の交流のある寺院に参拝予定の僧侶もいらっしゃるでしょう。この情勢の中、中国でどんなお話をされるのでしょう。もしも宗教者として毅然とした態度で臨めないのならば私たちはこれから、信者さん檀家さんにどのような事を説いて行けるのでしょう。私たちにとってこれが宗教者、仏教者であるための最後の機会かも知れません。書寫山圓教寺執事長大樹玄承 平成20年4月5日」

 まさに勇猛の菩提心。これはすごい勇気だと思います。
 

はじめまして。殆ど出回ってない情報のようなのでお知らせ致します。

http://www.shinshukyo.com/webup/back08/backframe03.21.htmに、〝僧侶やキリスト者、
中国大使館へ要請書〟という項目があり、日本山妙法寺の呼びかけで、カトリック、プロテスタント、浄土真宗の各宗教者有志が大使館に向かいアピールと祈念を行い、「中国政府のチベット武力行使の即時中止を求める緊急要請書」が読み上げられ、代表者4人が要請書を大使館から支持されたポストに投函したということを伝えてます。

要請書の内容は、日蓮宗の僧侶の方(上記のグループとは無関係)がブログで紹介していらっしゃるのを見つけることが出来ました。

中国政府のチベット武力行使の即時中止を求める緊急要請書

南無妙法蓮華経
中国政府は、チベットの僧侶・市民への武力行使をただちに中止してください。中国政府は武力の行使を自制し、流血の拡大を避けるべきです。そして、何よりもダライ・ラマ14世との対話の道を閉ざしてはなりません。ダライ・ラマ14世との対話の進展は、中国の名誉回復と北京五輪の成功に必ず役に立つはずです。日本政府も、チベット情勢への懸念を表明し、武力によらない対話による解決を呼びかけるべきです。私達は同じ仏教徒として、チベットの人々の安心立命を祈ります。チベットの人々の苦しみは、私たちの苦しみです。チベットに平和を!チベットに自由を!チベットに、平和と自由と高度な自治がもたらせられますように、心から祈ります。合掌 中華人民共和国国家主席・胡錦涛様 2008年3月19日 仏教僧伽 日本山妙法寺

 バーのマスターとして仏縁を広めておられる浄土真宗の僧職、釈源光さんが阿佐ヶ谷でのイベントで百名程の聴衆を前に、このように声明を発表されました。

               抗  議  文

中国政府首脳殿


「中野・坊主バー」は、この度のラサに始まった貴国内各地でのチベット人民への武力制圧・僧侶らへの宗教弾圧・一般市民への迫害行為等、数々の非人道的行為並びに連日にわたる人権無視の強行措置に対して、断固抗議致します。

貴国が、幾ら最大限のメディア統制と自国に不利な情報の隠蔽工作を内外に徹底させたにせよ、真実はいずれ必ず世界に知れ渡るでしょう。
日本のメディアも国民も、また私どもを含むこの国の宗教者・仏教者も、今回の貴国の暴挙を深く憂慮しながら注視しています。

かつてお釈迦様は「差別なく全ての衆生に等しく<仏性>がある」とお説きになりました。
それ以来仏教は、かけがえのない諸個人の<いのち>を、何よりも大切にする宗教です。

今日の国際社会において、如何なる理由があろうとも、信仰を武力で制圧することは断じて許されません。 チベット仏教の伝統や「信教の自由」を奪うことは、誰にも出来ません。

私どもは、間近に迫った<平和の祭典>北京オリンピックを成功させて欲しいと願うものであるが故に、少なくとも開催国である貴国政府は、チベット民衆へのこれまでの歴史的な差別待遇と不当な介入を直ちに中止し、対等な話合いによる平和的な政治解決を目指すべきであると考えます。

また、ウィグル民衆への同様な横暴も、直ちに中止するよう、この場を借りて要望いたします。

生きとし生けるものに幸あれ。
南無阿弥陀仏。合掌。

2008年4月8日(潅仏会)
真宗大谷派瑞興寺僧侶
中野坊主バー・マスター:釈 源光

                  要  望  書


真宗大谷派(東本願寺)宗務総長 熊谷 宗惠殿
全日本仏教会 会長殿
国内仏教者 各位 


この度の中国政府による、国内チベット人やウィグル人への人権弾圧、及び武力による仏教徒制圧等に関し、お釈迦様の「差別なくこの世の全ての衆生の<仏性>を尊ぶ」教えに仕える坊主の端くれとしての私は、いたずらにじっと指を咥えて静観することが出来なくなりました。

しかしながら、一僧侶だけではいかにも力になりません。

そこで、日本で有数の門信徒数を誇るわが浄土真宗大谷派の全組織を挙げて、断固たる抗議声明を、かの国の政府宛てに直接表明していただきたく、ここに要望するものであります。
ちなみに、すでに本願寺派は、早々と宗務総長名義で声明文を公けにしています。

また、私ども一宗派を超えて、この国の全仏教徒各人が、自らの所属する仏教教団の各代表責任者に対して、一致団結して決然たる抗議の記者会見を、一刻も早く国際社会に向けて開催し、共同声明を公表していただけるよう、切に要望いたします。

今日のボーダレスな情報化社会、危機的な地球環境下におきまして、仏教者のみならず全宗教者が、互いに共存・協力しあって人類の平和と幸福に対して積極的に助言や警告を発していかなくば、何のための教え、誰のための宗教なのでありましょうか?

いまこそ日本大乗仏教の出番です。私たち宗教者は、世界に見られています。

どうか、中国国内の仏教の今後の健全な発展のためにも、チベット仏教の貴重な伝統を守るためにも、ウィグル民衆の自由と人権のためにも、かの国の政府首脳宛てに、勇気ある発言と、毅然とした公開抗議文を、世界に向けて一刻も早く提出していただきたく、ここに要請いたします。

南無阿弥陀仏。合掌。

2008年4月8日(潅仏会)
真宗大谷派瑞興寺僧侶
中野坊主バーマスター: 釈 源光

はじめまして。私の情報収集能力が小さいせいか、新聞報道ではチベット問題に対する仏教界からの反応がほとんど伝わって来ないので、一体どうしたのか、と訝っていたところこのサイトを知り、仏教界もきちんと抗議しているのだと納得がいきました。オリンピック後のチベットが心配でなりません。

>ん窯の五郎様
マスコミでもなんとか仏教界のメッセージが見られるようになりましたね。対話が始まったとはいえ、引き続き経緯を見守る必要があります。今後もこちらのサイトをご覧下さい。

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yuzuki
ICU卒、青山学院大学院修了のキリスト教系真言宗僧侶。