
紀元前約400年にお釈迦様が亡くなられて、はや二千年。すでに世は末法(まっぽう)の時代と言われております。仏教が正しく伝わる正法(しょうぼう)の千年、教えが形骸化する像法(ぞうぼう)の千年、に続く教えだけが残りだれも悟りを得ることができない一万年が末法の時代と言われています。
そんな末法の時代を経てお釈迦様の次に悟りを得られるとされているのが、弥勒菩薩です。ところが現在兜率天(とそつてん)にて修行中の阿弥陀さんが修行を終えて仏になられるのは、なんと五十六億七千万年後。弥勒菩薩さんが仏になるまでには、まだまだ気の遠くなるほどの時間が残っているのです。
さて、そんな弥勒菩薩が下生(この世に現れること)するまで仏法を後世に伝えようとする想いをテーマにした展覧会「特別展 未来への贈りもの - 中国泰山石経と浄土教美術 - 」が九州国立博物館で開催されており、公式サイトではなんと弥勒さんの下生までのカウントダウンが公開されています。
2007年5月15日(火)現在で、178809026799805400秒あまり。九州国立博物館に伺ったところ、このカウントダウンは日本で末法が始まったとされる1052年(永承7年)から正法+像法の二千年を引いた948年からスタートしているとのこと。
次の仏が現れるのは、末法思想では一万二千年ですが、弥勒信仰では五十六億七千万年後。ちょっとした間違いではすまされないほどの差がありますが、このおおらかさが仏教の「らしさ」。それとも終末預言は外れるものということなのでしょうか…?
■特別展「未来への贈りもの- 中国泰山石経と浄土教美術 -」
□内容:
インドで興った仏教は、中国で漢訳されることにより、中国を中心とした東アジア文化圏で大きなひろがりをみせていきました。そのひろがりにより、漢訳された経典とともに、様々な仏教思想や歴史観も周辺諸国に受け入れられていきました。その中のひとつに、釈迦の入滅後、その教えは正法(しょうほう)・像法(ぞうほう)・末法(まっぽう)と時代が下るにつれて廃(すた)れていくという仏教独自の歴史観があります。いわゆる末法思想です。
もともとは仏教修行者に危機意識を喚起するものでしたが、人々を取り巻く災害や疫病の流行、社会的な混乱などを背景として、それは単なる知識ではなく現実問題として人々の危機感と結びついていきました。末法思想が伝えられた6世紀の中国では、岩肌に経典を刻むことにより仏の教えを不朽のものにしようとしました。それから五百年後の日本では、西暦1052年を末法第1年として、末法の人々を救うとされた浄土教がひろがりをみせ、法華経の護持が唱えられました。そして、はるか遠い未来へ経典を伝えようと、法華経をはじめとした写経を土中に埋納する経塚(きょうづか)が全国的に営まれました。
末法の世の中にあって、経典を後世の人々へ伝えようとする想いは、国と時代、方法の違いはあっても同じです。未来に何を伝え残すべきか、今から約千五百年前の中国と約千年前の日本において出した答えは、正しい仏の教えでした。
現代を生きる私たちが未来に残すべきものとは何なのか、彼らが遺してくれた「未来への贈りもの」を享受し、そのことを考えてみませんか。
九州国立博物館・特別展「未来への贈りもの- 中国泰山石経と浄土教美術 -」より
□とき:2007年4月10日(火)〜6月10日(日)
□ところ:九州国立博物館 特別展示室 福岡県太宰府市石坂4-7-2
□観覧料:一般1300円、高大生1000円、中小生600円。
□お問い合わせ:九州国立博物館