私たち夫婦が以前からお世話になっている中伊豆の窯元があります。「羅漢窯」(仏教で「羅漢」とは高僧のことを指す)という名前にひかれ訪れたその場所は、ご主人が焼いたお皿に奥様が料理をし、盛り付けるといった風変りなギャラリーサロンでした。
初めて羅漢窯に行った時、軽く食事をいただいたのですが、今でもその感動は忘れられません。古い家屋を改造したギャラリーでお茶をいただきながら羅漢窯のご夫婦とご挨拶をかねていろいろと話を弾ませているとふと「外を見に行きませんか?」と声がかかりました。目の前に広がる田んぼを見ながら庭を歩くと庭先にはオードブルがちょこんと置いてあり、なんだかそのシチュエーションにぐっときました。
その感動が落ち着く前に、今度はオードブルを食べ終わった頃に先ほどのギャラリーに戻ると、テーブルいっぱいにちりばめられた第2のオードブルが目に入ります。カメラに収めきれないほど目一杯におかれた御馳走にどこから手をつけていいのか分からず呆然とするほどです。
その後の料理も心をつかんで離さないものばかり。決して豪勢な食材が目白押しという料理ではないですが、一日に一席しか受け付けない、その一席に全力を投入するその心意気に本当のおもてなしを感じました。
今、私が手掛けている暗闇ごはんは、この羅漢窯の経験を一つの原体験として作り上げています。大人数を相手にできるものではないのですが、背丈に合った、できる限りのおもてなしをしたい。そして、僕が羅漢窯で味わった感動の少しでも人に伝えていければと思っています。