2009年4月13日

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なぜ阿修羅像は造られたのか?

 今回展示される仏像の多くは1717年に焼失した西金堂(さいこんどう)に安置されていました。西金堂諸仏の作者は、長らくわからなかったのですが、昭和八年に福山敏男氏の研究によって、正倉院文書のなかの西金堂造営経緯を詳しく記した「造仏所作物帳(ぞうぶっしょさもつちょう)」が見いだされ、阿修羅をはじめとする八部衆や十大弟子といった乾漆像の作者は百済から渡来した仏師・将軍万福(しょうぐんまんぷく)であったことがわかりました。
(写真:阿修羅像 提供:興福寺)

 西金堂は、平城京遷都と興福寺造営の中心人物だった藤原不比等(ふじわらのふひと)の娘で、後に聖武天皇の妃になった光明皇后(こうみょうこうごう)の発願によって造営されました。亡き母の一周忌の供養のためで、734年に完成しています。1180年の平重衡による「南都焼討ち」で八部衆や十大弟子以外の仏像のほとんどは焼失してしまいましたが、それ以前の興福寺の様子を伝える「興福寺曼荼羅」には、本尊の釈迦牟尼仏を中心に数十体もの仏像が安置されていた西金堂内陣が描かれています。

 創建当時に造立された八部衆や十大弟子像などは脱活乾漆造(だっかつかんしつづくり)と呼ばれる技法で、粘土で造形した上に麻布を貼り漆で塗り固め、後に内部の土を取り除き、彩色を施しています。当時漆は米の10倍以上の値段がするとても貴重なもので、西金堂造営経費の1/5を漆が占めるほどでした。奈良の東大寺の三月堂にも乾漆像が伝えられていますが、これだけの群像を成せたのも、皇后という立場であったこと、そして亡き母への供養という強い思いによるものでしょう。

阿修羅の表情に隠された秘密

Ashura_016.jpg 西金堂の造像は、『金光明最勝王経』(こんこうみょうさいしょうおうきょう)の「夢見懺悔品」(ゆめみさんげぼん)に描かれた場面をもとに群像で再現されていました。経文によれば、お釈迦様の弟子の妙幢菩薩(みょうどうぼさつ)が説法を聴いたその晩に見た夢に、光り輝く金鼓(こんく)が出現し、その回りにたくさんの仏や群衆が集まり、罪障を消滅させる力を持つその金鼓の響きに耳を傾けたというものです。その時の表情が八部衆や十大弟子の造形に表されています。展覧会のイヤホンガイドでは金鼓の音を聞いていただくことができます。
(写真:阿修羅像 提供:興福寺)

 阿修羅は、もともゾロアスター教の主神・アフラ・マズダーが起源で、後にヒンズー教に取り込まれ、悪神の「ア・スラ」となったのです。そこでは武器を携えた闘いの神として、壁画や石に刻まれることが多いのです。興福寺の阿修羅像は、戦闘神の姿ではなく、憂いや悲しみを感じさせる表情をしています。金鼓の響きに耳を澄ませたことで、争いを止めると同時に、内に秘めた懺悔の気持を表わしているように思います。

 阿修羅像の展示スペースへの入口にはスロープが設けられ、仏像と同じ目線から眺めることができるようになっています。阿修羅は153センチとそれほど大きくないので、特に初めて対面される方には、意外に思われるかもしれませんね。阿修羅像を遠くから見ると顰めた眉が強調されて悲しい表情に映りますが、近づくにつれだんだんとそれが消えていきます。ぜひとも体感していただきたいと思います。

時代を超え人々を癒す阿修羅展の魅力

迦楼羅像00-00234.jpg 戦後まだ間もない昭和27年2月にはじめて東京で開催された三越百貨店の「春日 興福寺展」にも阿修羅像をはじめ、その他の寺宝が出陳されました。わずか18日間の開催であったにも関わらず50万人が訪れたことを当時の新聞が伝えています。

 戦後の復興が急がれる中、阿修羅像のその姿が、長い戦争で疲弊した人々の心に大きな安らぎを与えたのでしょうね。今回の「国宝 阿修羅展」では1300年もの間たび重なる受難を乗り越え守り伝えられてきた乾漆像の多彩な表情に思いをはせて、天平の人々の祈りを感じていただきたいと思います。
(写真:迦楼羅像 提供:興福寺)

イベント情報

阿修羅展【公式サイト
【会期】2009年3月31日(火)-6月7日(日)
休館日:月曜日 ただし5月4日(月・祝)は開館、5月7日(木)休館
【開館時間】午前9時30分~午後5時
 (ただし金曜日は午後8時、土曜・日曜・祝・休日は午後6時まで開館。入館は閉館の30分前まで)
【会場】東京国立博物館 平成館(上野公園)
【主催】東京国立博物館、法相宗大本山興福寺、朝日新聞社、テレビ朝日
【後援】文化庁、平城遷都1300年記念事業協会
【特別協賛】JAバンク
【協賛】竹中工務店 三菱商事 TOPPAN
【特別協力】SONY
【協力】ニッセイ同和損害保険、朝日放送、文化放送、朝日学生新聞社
【料金】順に、当日、前売、団体。
一 般 :1500円 1300円 1200円
大学生 :1200円 1000円 900円
高校生 : 900円 700円 600円
中学生以下無料。団体は20名以上。
障害者とその介護者1名は無料。入館の際に、障害者手帳などをご提示ください。
前売券は、2009年1月17日( 土)からローソンチケット〔Lコード: 34500〕、チケットぴあ〔Pコード: 986-285〕、イープラス、CNプレイガイドなど主要プレイガイドで発売予定。

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コメント (1)

白虎:

この「阿修羅像」は、学生の頃に教科書で見て一目惚れし、何度も模写した想い出があり、私が仏教に興味を持つ切っ掛けになった像です。
当時たくさんの悩み事を抱えていた私には、阿修羅の憂いの表情が、弱った心に寄り添ってくれているように見えたのです。
地方在住なので残念ながら阿修羅展を観に行く事は出来ませんが、いつの日か「阿修羅像」に逢いに行きたいと思っています。

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