いよいよ東京国立博物館ではじまった「興福寺創建1300年記念 国宝 阿修羅展」。東京での開催は戦後間もない昭和27年以来、半世紀ぶりとあって昨年の開催発表から大きな注目を集めていた。その後もみうらじゅんが会長を務める阿修羅ファンクラブに1万3千人を超える会員が入会するなど、開催前から大変な盛り上がりを見せていた。
3月31日の展覧会初日には阿修羅像を一目拝もうと10863人もの観覧者が訪れ、東京国立博物館の初日入館者数の新記録を更新した。その後も連日1万人を超える人が訪れるなど、阿修羅像の魅力が多くの人々を惹きつけている。
1300年という時代を超えて多くの人を魅了し続けてきた阿修羅像をはじめとする、数多くの寺宝を守り伝えてこられた法相宗大本山・興福寺。今回は興福寺で執事を務められる多川良俊さんに、展覧会の見所や阿修羅像の秘密、興福寺の歴史までお話しを伺った。
(写真:阿修羅像 提供:興福寺)
天平の息づかいを直に、ガラスケースなしの展示

興福寺には、国宝に指定されている仏像彫刻の13.4%が伝えられていますが、その中でも特に有名なのが阿修羅像です。今回は阿修羅像を含め、中でも最も古い天平時代(※てんぴょうじだい:7世紀終わり頃から8世紀中頃)の仏像の14躯(く)すべてが出陳されます。(写真:興福寺執事 多川良俊さん)
これほど多く天平の仏像が一度に公開されること自体滅多にありません。今回はさらに仏像を直にご覧いただけるように陳列ケースには入れず、特に阿修羅像は円形の台座に載せられていて、360度ぐるっと拝観できるように展示されています。
釈迦如来像頭部に秘められた悲しい歴史
阿修羅像など天平時代の仏像がもともと安置されていた西金堂(さいこんどう)は、734年に造営されてから1717年までの間に4回も焼失し、その後は再建されないまま現在に至っています。西金堂の被災の度に阿修羅たちは奇跡的に救い出されたのです。阿修羅像などの乾漆像は、体内が空洞になっています。そのため1体あたり15キロ前後と軽かったので、救い出すことができたのでしょうね。
(写真:西金堂本尊・釈迦如来像頭部 提供:興福寺)
鎌倉時代に仏師・運慶によって像立された再興仏(さいこうぶつ)の本尊・釈迦如来像は、木造で重量だったため1717年の火災では残念なことに全体を運び出すことができませんでした。断腸の思いで頭部や腕のみを削ぎ取って火中から運び出したのでしょう。辛うじて残された頭部と両腕や光背(こうはい)に飾られていた化仏(けぶつ)・飛天(ひてん)だけを、今回展示することができました。
西金堂以外にも、伽藍の中核である中金堂は7回も焼失しています。興福寺1300年の歴史は、まさに被災と再建の繰り返しでした。その中でも最大の被災は、平安時代末の平重衡(たいらのしげひら)による南都焼き討ちで、伽藍のすべての堂塔が焼失してしまいました。
明治の廃仏毀釈でも興福寺は甚大な弾圧を被りました。明治政府の財源確保のための上地令が発布され、これまで寺域であった約12万坪のほとんどが官没され、奈良県庁や国立博物館、奈良公園に姿を変えたのです。大垣はすべて取り払われて、僧侶たちはすべて還俗し、無住となった興福寺はまさに瓦解の様相を呈しました。「神仏習合」にもとづいて、春日社の神官となった僧侶もおりました。
(写真:石碑のみが残る西金堂の跡地)
明治14年に興福寺の寺号復号許可が与えられ復興の兆しが見えますが、明治30年に「古社寺保存法」が制定されるまでは、堂塔や仏像を修復することもできず、まさに受難の時代であったのです。
1300年仏像を守り伝えてきた「想い」
今回の展覧会でも、学芸員の方々や日本通運の美術運搬のスタッフが慎重に輸送方法を検討してくださいました。乾漆像は体内が空洞になっておりとても脆いため輸送用のトラックで何度も走行テストをくり返しどこでどれくらいの振動があるのか細かく計測したそうです。特に阿修羅は長く伸びた手がとても傷つきやすいため、アルミで四角い枠を作ってポイントだけ留めて立てたまま運ぶという特殊な方法で運搬されました。
(写真:八部衆のひとり五部浄 提供:興福寺)
興福寺では、輸送開始前に仏像運搬前に魂を抜く撥遣法要(はっけんほうよう)、展覧会開催前には仏像に魂を込める開眼供養(かいげんくよう)を修めました。
今回展示される仏像はたまたま現在に伝わったのではありません。各時代の計り知れない多くの人々の尽力によって伝え守られてきたのです。単なる仏教美術としてではなく、その精神的な部分も感じていただければ幸甚です。
「【特集:阿修羅展】阿修羅像誕生の秘密に迫る」に続く。
イベント情報
阿修羅展【公式サイト】
【会期】2009年3月31日(火)-6月7日(日)
休館日:月曜日 ただし5月4日(月・祝)は開館、5月7日(木)休館
【開館時間】午前9時30分~午後5時
(ただし金曜日は午後8時、土曜・日曜・祝・休日は午後6時まで開館。入館は閉館の30分前まで)
【会場】東京国立博物館 平成館(上野公園)
【主催】東京国立博物館、法相宗大本山興福寺、朝日新聞社、テレビ朝日
【後援】文化庁、平城遷都1300年記念事業協会
【特別協賛】JAバンク
【協賛】竹中工務店 三菱商事 TOPPAN
【特別協力】SONY
【協力】ニッセイ同和損害保険、朝日放送、文化放送、朝日学生新聞社
【料金】順に、当日、前売、団体。
一 般 :1500円 1300円 1200円
大学生 :1200円 1000円 900円
高校生 : 900円 700円 600円
中学生以下無料。団体は20名以上。
障害者とその介護者1名は無料。入館の際に、障害者手帳などをご提示ください。
前売券は、2009年1月17日( 土)からローソンチケット〔Lコード: 34500〕、チケットぴあ〔Pコード: 986-285〕、イープラス、CNプレイガイドなど主要プレイガイドで発売予定。