現在、藤澤さんは「自殺対策に取り組む僧侶の会」を設立し、自らその代表を務めている。それは、こ自らが自殺対策の旗頭となり、広く多くの人に会の存在を知ってもらうことで、本当につらいことがあったときにはこの人を頼ればいいという安心を多くの人に持ってほしいと思ったからだ。そのために、自分の顔と名前をはっきりと出していくことが必要だと考えた。
自殺対策に取り組む僧侶の会
この会では、自死に関する相談を手紙で受け付け、僧侶が一つ一つ丁寧に返信する『自死の問い・お坊さんとの往復書簡』を行っている。メールという手軽で便利な連絡方法が主流な現代において、あえて手紙を書き、ゆっくりと返事を待つこと自体が大事だと藤澤さんは語る。ボタンを押せばすぐに届くメールと違い、手紙というのは届けた相手から返事が返ってくるまでの間、相談者がいったん思いとどまってゆっくりと考える時間を持つことができる。さらに、手紙はワープロではなく必ず一通一通手書きで返事を書く。電話相談では顔の見えない相手と対話するしかないが、手書きの返事には人の手のぬくもりが添えられ、さらに心の通った支えにもなり得る。手紙を書く、返事を待つという今では時代に取り残されたような行為だが、それが生きていく楽しみの一つになってくれればと藤澤さんは願っている。
安心して悩むことのできる社会
藤澤さんは、「安心して悩むことのできる社会」をつくっていきたいと語る。さらに、「現代は実に様々な問題が取りざたされているが、そのどれもが社会に閉塞感があるために起こっているのではないか」と考える。自殺者数の大きさは、その表れの一つに過ぎない。「自死問題はたしかに重大な問題だが、『大変だから』『重い問題だから』と逃げないでほしい、まず関心を持ってほしい」のだと、強く訴えた。
「自殺対策をするにあたって、特別な資格はいらない。ただ強いやる気があればそれでいい。まず関心を持って、できることから少しずつでもこの問題にかかわっていくことが大切。そんな気持ちを持った人がいれば僕はできるだけ協力をしたい」」と力強く語った。今後、藤澤さんの思いに共感し、共に活動を進めようという僧侶の輪が広がっていくことを願ってやまない。
*文中で「自死」という表現を使用しておりますが、これは「自殺」という表現が強く、遺族の中では耳にしたときにつらく心に突き刺さるという声が上がってきております。そういったご遺族の気持ちを察して「自死」という表現を用いております。
藤澤 克己(ふじさわ・かつみ)
浄土真宗本願寺派安楽寺(東京都港区)副住職
1961年、神奈川県出身、早稲田大学第一文学部卒業。浄土真宗本願寺派東京教区自死問題専門委員。ITエンジニアとして20年間サラリーマンを勤めた後、NPO法人自殺対策支援センターライフリンクの活動に従事。また、NPO法人国際ビフレンダーズ東京自殺防止センターの電話相談員としても、自殺したいほど辛いという相談者の気持ちに寄り添う活動を行っている。
自殺対策に取り組む僧侶の会
NPO法人国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター
NPO法人自殺対策支援センターライフリンク
→「特集【ヒト】-藤澤克己さん(自殺対策に取り組む僧侶の会代表) 上」を読む。