2008年7月 9日
fujisawa.jpg安心して悩むことができる社会づくり」を目指すと力強く語る藤澤さん 

 ここ10年近く、ある季節になるとこんな記事を目にします。

 「年間自殺者が○年連続3万人超」。

 3万人という数字はピンとこないかもしれませんが、東京マラソンの参加人数がおよそ3万人だということを考えると、イメージがしやすいのではないでしょうか。

 これほど多くの人が自死(自殺)せざるを得ない現実を目の当たりにして、僧侶として何かできないかと思い活動をしているのが、「自殺対策に取り組む僧侶の会」です。この会では自死に関する相談を手紙で受け付け、僧侶が一つ一つ丁寧に返信する『自死の問い・お坊さんとの往復書簡』を通して自死対策を行っています。会の代表を務める藤澤克己さんにお話をうかがってきました。

人の生き死にに向き合う

 東京・港区のお寺に育った藤澤さんは大学を卒業後、IT企業に就職。時代の最先端をゆくサラリーマンとして、第一線で活躍していた。当時を振り返り、「これほどやりがいのある仕事は他にない」というほどの手ごたえを常に感じていたという。

  しかし一方で、藤澤さんは仕事に追われる忙しい日々を送りながらも、いつかは実家である寺の代替わりを引き受けようと心に決め、そのための準備を並行して 始めていた。やがて、本格的に僧侶活動に打ち込むために、機を見計らって会社を退社。華々しく活躍した舞台を去り、一僧侶として生きることを決めた。

  自殺対策には、サラリーマン時代から少しずつ関わってきた。あるときふと目にした「年間自殺者数が5年連続で3万人を超える。自殺者数の減少が見られず」 というニュース。既にお寺を継ぐことを現実的に考えていた藤澤さんは、ことのき「人の生き死にこそ僧侶として相対すべき問題」と強く感じたという。悩みを 抱える人々に僧侶として向かい合うことで、彼らを救うことができるのではないかと感じたことが、自死問題について関わりはじめるきっかけとなった。


 まず、自死念慮者や自死遺族のための電話相談員になるべく研修に入った。自殺対策支援のNPOにも参加した。サラリーマンとして広く一般社会で働いてきた経験やスキルが、活動の場を移しても同じように活かせる気がした。

助けを必要としている人のため

 電話相談員として、実際に自死を考える人 と接する中で気づかされたことがある。自死に追い詰められようとしている人が、その悩み、苦しい思いを誰かに打ち明けたいと思ったとき、どこを頼って話を しにいけばいいかわからず、さらに悩み、孤独を抱えてしまっているということだった。さらに、自分のように支援活動をしようという想いを持つ人たちが集 まって作り出す場が、彼らにとってどれほど大きなよりどころになっているかということにも、改めて気づかされた。


 それまでは、僧 侶であるからこそ、悩みを持った人を救いたいと考えてきた藤澤さんだが、自死念慮者の深い嘆きを聞くたびに、僧侶としての自分のやりがいを追求するためで はなく、実際に助けを必要としている人のためにこそ活動をしていきたいという思いを強く持つようになった。

「特集【ヒト】-藤澤克己さん(自殺対策に取り組む僧侶の会代表) 下」を読む


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