
江戸は人口百万人を超えるという、当時世界最大の都市でした。将軍様のお膝元ですから、江戸が政治都市であるのはもちろんですが、百万人の生活を養うための膨大な生活物資が、毎日集まって来ます。江戸は、巨大な経済都市でもありました。
江戸の旺盛な経済活動を象徴するものが3つあります。日本橋の魚市場、日本橋の芝居町、浅草寺裏手の遊廓吉原です。どれも、一日に千両のお金が落ちると言われた場所でした。朝に魚市場で千両、昼に芝居町で千両、夜に吉原で千両のお金が落ちたというのです。千両と言うと、現代の数億円にあたりますから、江戸というマーケットの巨大さがよく分かる数字と言えます。
この巨大マーケットに目を付けた人々により、江戸では様々なビジネスが生まれていました。そうしたなか、お寺も江戸市場で経営基盤の強化をはかります。江戸を地盤とするお寺だけでなく、地方のお寺も江戸に出て来て秘仏を開帳し、利益を挙げようと試みます。
江戸市場には全国のお寺が参入してきて、集客合戦に鎬を削るのですが、この連載では、お寺が様々な手法を駆使して、江戸っ子の心をつかもうとした様子を見ていきます。そこには、現代にも役立つようなアイデアがたくさん詰まっています。江戸のお寺の懐の深さも見えてくるでしょう。
こうしたお寺の活動そのものが、江戸文化をより豊かなものにしていった側面にも、合わせて目を向けていきたいと思います。