
根本さんが大禅寺のご住職になられたのは3年前のこと。今回のインタビューは、お寺でお盆の行事が行われている合間をにさせていただいたのですが、お檀家さんが口々に「いいご住職が来てくださった」と言い合っておられたのがとても印象的でした。後編では、大禅寺へ来られてからのこと、そして自死対策への思いについてお話をうかがっています(インタビュー前編はこちら)。
死にたいという心の動きを知りたい
ハンバーガーショップでいろんな相談があったなかでも、やっぱり自殺だけはなんとか止めたいと思いました。僕自身も、親戚や仲の良かった友人を自殺で亡くした経験があり、放っておくとあっと言う間にいつのまにか死んじゃうという恐怖感があるんです。「なんとかしてあげればよかった。何か言ってあげたかった」という思いに苦しんだ後、そういう悲しみを生む世の中をなんとかしなくてはという思いを強く持つようになったんですね。
また、もともと哲学をやっていますので、人間は悩み続けて死に至るまでどういう過程を経て絶望して、あきらめて楽になりたいと死を考えるのかを徹底的に知りたかったんです。その運動をどう変更すれば、生きられる力になっていくのかにもすごく興味がありました。
誰もが悩みを持っているし、周りに苦しんでいる人がいたり、自分もそういう経験をしたことがあったりします。でも、どうしても自分だけが社会に置いていかれてうまく歯車に入っていけなくて、ダメだダメだって思う人も多いようです。
死にたいと思うほど悩んでいても、周囲にいる親しい人には話せないこともあります。でも、インターネットを通じて匿名で書くことならできるということもあります。悩んで死にたいと思う人、その周囲にいる人をインターネットを通じてつなげていくことで話す場を作り、生きる方へ流れを変えていけたらいいと思っています。
無住の荒れ寺を再建して住職に

ハンバーガーショップでアルバイトをしながら、お盆やお彼岸には師匠の寺に手伝いに行くと「もういい加減、ハンバーガー作るのはやめて寺に入れ。跡継ぎのいない寺や空いている寺はいっぱいあるんだ」と、お見合い写真を見せられるんです(笑)。「いや、もうちょっと社会勉強してもいいですか?」なんて言って1年ほどはアルバイトを続けました。
お見合いの話には、非常に大きなお寺との縁談もあったのですが、逆玉の輿で出世コースを選ぶのは違うだろうと思いました。頭を剃って出家して何を目指したかったかというと"本物の道"を究めることですし、そのためにはまず師匠への恩も返さないといけないんじゃないかと。自殺問題もどんどんやりたかったし、大きいお寺の先頭に立つことは私にとってはあまり魅力的ではなかったんです。
「え? そんないい話を蹴ってどこへ行くの」と思っていたら、ボロボロの寺だったのでみんなもうビックリですよ(笑)。大禅寺は、当時7年間ほど無住でしたし、本堂は柱に割り箸がプスプス入るほどボロボロだったんですよ。でも、ここは私が修行した正眼寺と師匠の寺である梅龍寺のちょうど中間地点にあり、これもご縁なのかなと思いました。
再建にあたっては、檀家さんの有志と力を合わせ一軒一軒を回って説得しました。「残したいのか、もういいと思っているのか、ここではっきり決めましょう。そうでないと、自分もここでどれだけ力を入れていいのかわからない」と言ったら、みんな「残したい」と言ってくれて。「それなら今まで生きて稼いできたお金の一部を後につなぐために分けてもらえないか」とお願いして。なんとか寄付金も集まって、晋山式と落慶式をするところまでいきました。
式には、お稚児さんが約340人も集まりましたし、その家族や檀家や縁者を含め全部で1500人から2000人くらいが参加してくれました。見た人によると、一種異様な空気だったそうです。私の後にお稚児さんがずらーっと並んで、ご詠歌を歌いながら歩いていて。神秘的な、不思議な光景だったと。初めてこの村と地域がひとつになれた日だったんです。
今まで、いろんな争いもあったけれども、一つになってお寺ができたと大喜びした瞬間ですね。その後も、お寺の掃除をするときなどには、仲が悪い人も喧嘩している人も「いちおうお寺さんのことだから」と集まってくれます。汗だくになった後に、仲のいい人もそうでない人もみんなでお茶飲んでゲラゲラ笑っているのを見ると、ほんといいなぁと思いますね。
自死対策の相談はしんどくないですよ
自死対策関連の相談者の方も、多いときは毎週のようにお寺にも訪ねてこられますが、基本的にインターネットで対応するようにしています。直接のメール、SNS経由のメッセージ、それにブログ経由でもメールも来ますし、緊急性のある人には携帯のアドレスも教えていますので、携帯にもメールが来ます。電話も毎日最低2~3件はありますね。
今のところは、私は相談していた方が亡くなられたという経験はないです。連絡が来なくなって長く経っている方はいますが、もし亡くなったら私とメールのやり取りをしていますので、私のところへ警察が来ると思うんですよ。最後に近い時期に話していた人のことは、警察はいちおう疑いますから。
よく「しんどくないですか?」と言われますが、私はあまり苦にはならないですね。ただ、空手をやっていないと生命力が落ちてくるので、道場には週二回は通っています。それはある意味、リストカットする人たちとあまり変わらないと思うんですね。リストカットすると、脳が危険だという信号を出しますので一瞬生命を取り戻して元気になるんです。武道も同じで、下手をしたら死ぬかもしれないぎりぎりでぶつかり合って、アドレナリンとかが出て爽快に元気になるんですよ(笑)。
お坊さんにもっと自死対策をしてほしい
自死対策をしても何のメリットもないし、ヘンなことを言って人を死なせてしまったらどうしようと心配されて、活動しない方もいらっしゃいますけれども、誰だって身近にしんどい思いをしている人はいるわけですし、ちょっと様子がおかしいと思ったら話を聴いてあげるべきだと思います。
特にお坊さんは、気持ちを吐き出せるいい対象です。後ろに仏さまがいると思うと、何か全部この人に話しちゃってもいいんじゃないか、みたいな。位置的には非常にいいと思うんですね。お坊さんによっては、苦痛に感じる人もいるかもしれませんが、出家しているのであれば一人一人の苦しみに向き合う気概は持って欲しいですよね。
実際に、死の現場で枕経をあげて話をするわけですよ。特に交通事故で亡くなった若い子供がいるところなんて凄まじいですよ。わんわん泣いている人がいるなかで、気持ちを吐き出させてどうしようもない苦しみを軽減していくということを現場でやっているわけですから、ためらうことはないと思うんです。
私も最初はわからないことばかりでしたので、精神疾患を経験した人や、自殺未遂をした人の話を聞かせてもらって「ああ、なるほど」と思うことばかりでした。そういう経験のある人に話を聞いてみることから始めてもいいと思います。みんな、特にお坊さんにやってほしいなと思っているんですよ、自死対策を。自死対策というと大げさですが、それを通じて世の中の苦しみや人々の苦悩に立ち向かっていってほしいと思うんですね。
面倒くさくて嫌なことかもしれませんが、それを言ってはお坊さんである意味がないんじゃないかなと。和尚さんって、いろんな家に行っていろんな人と接していますから、幸せになれるんじゃないかなという方向を一緒に探してあげるという気持ちでいって欲しいと思います。一緒に自死対策活動したい僧侶は歓迎しますので御連絡ください。ぜひ仲間になってもらいたいです。
坊主めくりアンケート
1)好きな音楽(ミュージシャン)を教えてください。
「パープルレイン」Prince
2)好きな映画があれば教えてください。
「炎のランナー」ラストに走るシーン
3)影響を受けたと思われる本、好きな本があれば教えてください。
「ツァラツゥストラはかく語りき」ニーチェ
4)好きなスポーツはありますか? またスポーツされることはありますか?
スノーボード
5)好きな料理・食べ物はなんですか?
ひきわり納豆
6)趣味・特技があれば教えてください。
カラテ・坐禅
7)苦手だなぁと思われることはなんですか?
整理整頓
8)旅行してみたい場所、国があれば教えてください。
インドと未開の地
9)子供のころの夢、なりたかった職業があれば教えてください。
宇宙へ出る仕事
10)尊敬している人がいれば教えてください。
故・小阪修平氏、故・大山倍達氏
11)学生時代のクラブ・サークル活動では何をされていましたか?
バスケット部
12)アルバイトされたことはありますか? あればその内容も教えてください。
飲食店、船舶関連、環境調査、運送業、築地市場......等々、20数種のバイトをしました。一番楽しかったのは19歳夏休みのとき、沖縄離島にて空手留学とマリンスタッフをやってた時です。
13)(お坊さんなのに)どうしてもやめられないことがあればこっそり教えてください。
タバコ
14)休みの日はありますか? もしあれば、休みの日はどんな風に過ごされていますか?
基本的にはありません。空いた時間に温泉へ行くことがあります。
15)1ヶ月以上の長いお休みが取れたら何をしたいですか?
海外旅行
16)座右の銘にしている言葉があれば教えてください。
常にゆらしていないと棚からぼた餅は落ちてこない。
17)前世では何をしていたと思われますか? また生まれ変わったら何になりたいですか?
前世は少林寺で武道、生まれ変わったらボーカリスト。
18)他のお坊さんに聞いてみたい質問があれば教えてください
お坊さんやってて、一番良かったことは何ですか?
19)前のお坊さんからの質問です。「剃髪に使用する剃刀とシェービングクリームの銘柄を教えてください」
剃刀は地元の貝印で、シェービングクリームは使いません。
プロフィール
根本紹徹さん/ねもとじょうてつ
1972年1月21日、東京生まれ。大学で西洋哲学を学ぶうちに、故・小阪修平氏の『哲学的研究会』に参加。数年の社会人経験ののち、26歳で出家。府中の臨済宗系単立寺、梅龍寺を経て、正眼僧堂で4年間修行する。僧堂を出たのち、自殺を考える人たちを引き止めるためにインターネット上に交流の場を開き、コミュニティ運営やオフ会の開催に取り組む。2005年、大禅寺の第15世住職として再建に着手し、2007年、晋山式・落慶式を行い第15世住職に就任。現在は、大禅寺の住職として務めるとともに、インターネットおよび超宗派で僧侶たちとともに自死対策活動に取り組む。
大禅寺
神宮山 大禅寺。1341年(暦応4年)、鎌倉・建長寺第13世大応国師の法嗣溢正宗大暁禅師塞翁一大和尚により開創される。1690年(元禄3年)、梅龍寺第11世話堂和尚のとき末寺となり、妙心寺派に転派。2005年(平成17年)4月に、第15世根本紹徹和尚が再建した。ご本尊は6本の腕を持つ如意輪観世音菩薩。"如意"は如意宝珠、"輪"は法輪を意味し、如意宝珠の三昧にあって意のままに説法し、六道の衆生の苦を抜いて世間・出世間の利益を与えるとされる。心の傷を癒し生きる道を共に探そうとする根本さんにぴったりのご本尊だ。中濃八十八ヶ所霊場の第42番。

岐阜県関市上大野355
TEL: 0575-29-0422
daizenji@live.jp
東海環状自動車道 富加関IC から700メートル
JR高山本線 美濃太田駅下車 車で15分